世界のビジネスエリートを唸らせる

教養としての書道

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教養としての書道
出版社
自由国民社

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出版日
2023年12月07日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

要約者は、小中学生のときに書道教室に通っていたが、そこから15年以上筆には触れていない。あのときは、とにかくキレイな字を書いて、次の昇段試験に合格するための技術習得が目的で通っていた。現在でも、著しく読みづらい字を書くわけではないし、書道の経験があってよかったと思っている。

本書では、小中学生のときに習ったような、筆の運び方や道具の使い方などが紹介されており、実際に書を書いていた頃を思い出して懐かしい気持ちになった。しかし、そのような指南がメインの箇所はほんの一部にすぎない。タイトルに「教養としての書道」とあるように、書道とはどういうものかにはじまり、書道が私たちの生活とどう関わっているのか、書の周囲に広がる世界についてなど、書道にまつわる幅広い内容がカバーされている。新しい知識を得られるだけでなく、実際に筆を持たなくても、身近に存在する「書道」を探して出合えるようになれるはずだ。

書道は精神性と結びついているため、書を書く時間は心を落ち着かせ、ゆっくりと自分に向き合う時間となる。大人になった今は、特にその点が魅力的だ。腰の重い要約者でも、「書道いいな」と知的好奇心が刺激され、久しぶりに筆を持つ自分を想像したくらいである。

本書に「書を書いたら、あなたはもう書家だ」という言葉があった。技術や経験は関係ない。書道に興味がある人はもちろん、新たな世界をのぞいてみたい人や趣味を探している人にもお勧めの一冊だ。

著者

前田鎌利(まえだ かまり)
書家/プレゼンテーションクリエイター
一般社団法人 継未 代表理事
株式会社 固 代表取締役
一般社団法人 プレゼンテーション協会 代表理事
情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
サイバー大学 客員講師
私設図書館つぐみ 館長
めがねのまちさばえ PR大使

1973年福井県鯖江市出身。5歳より書に携わり、東京学芸大学 教育学部 書道科を卒業。独立書家として歩み、現在全国にて700名が登録する書道塾 継未-TUGUMI- を展開。
Softbank「志高く」、JAXA「こうのとり」、Jリーグ「絶対突破」、TOYOTA「挑戦」、サイバーエージェント「会社を、楽しもう」、重要文化財旧小坂邸襖書「花鳥風月」、国宝 彦根城、羽田空港ラウンジ常設展示「心」「動」「静」「力」など多数の作品を手がける一方、ニューヨーク、中国、韓国、シンガポール、タイ、イギリス、イタリア、スイス、フランス、ベルギーなど国内外でのライブパフォーマンスや個展の開催を精力的に行っている。
また阪神・淡路の震災の際に、携帯電話が全く普及しておらず、災害大国の日本において大切な方と繋がる手段を普及させるべく、教員になる道を断念して通信業界(ジェイフォン、ボーダフォン、ソフトバンク)に17年にわたり従事しながら書の活動を並行して行ってきた。
2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され年間第1位を獲得。孫社長のプレゼンテーション資料の企画・作成・演出などを手がける。
また、ソフトバンクグループ会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師としても活躍。
独立後に全国でプレゼンテーション・スクールを展開し、セブンイレブン、マクドナルド、ソフトバンク、ベネッセをはじめ年間200か所を超える企業・団体などで講演、研修、コンサルティングなどを行う。著書は『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』(いずれもダイヤモンド社)などビジネス書はこれまでに14 冊出版され、累計45万部を超える。また書籍は中国語、韓国語、台湾語、タイ語に翻訳され海外での講演も多数実施している。
2022年より、福井県鯖江市のPR大使に任命され、2023年から鯖江市にサテライトオフィスを展開。二拠点生活を送りながら日々作品制作を行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    文字としての書道が初めて日本に伝わったのは、漢の光武帝から贈られた「漢委奴国王」の金印である。その後、墨・和紙の技術が伝えられ、仏教信仰の高まりと相まって、写経が流行した。
  • 要点
    2
    書道における大切な4つの道具、「文房四宝」は、「筆・墨・紙・硯」を指す。
  • 要点
    3
    書道の漢字の書体には「楷書」「行書」「草書」「隷書」「篆書」の5つがある。一番新しい書体が、現在よく使われている「楷書」であるが、それ以外の書体も日常生活で目にすることができる。

要約

【必読ポイント!】 「書道」の基本教養

書道が中国から伝わったのはお経から

「書は文字を書いている」――そのことに間違いはないが、文字を分解すると一本一本の線になる。たとえば円が書かれた書、すなわち「円相」は、書き始めと書き終わりが一見わかりづらい、つながりのある円である。それによって、「欠けることのない無限性や禅宗の悟りや心理、宇宙全体など」を表現しているという。

文字として書道が日本に紹介されるのは、「漢委奴国王」の金印が最初である。そして、聖徳太子による法隆寺建立などで仏教の信仰があつくなっていた飛鳥時代の610年に、墨・和紙の作成技術が伝えられた。それらを用いた写経は、仏教の教えを広めるために行われるようになり、奈良時代には聖武天皇により大流行となった。

聖武天皇は、国家事業として「写経所」を設立し、専門の写経生を雇った。この写経生たちはかなりの高給取りで、憧れの職業であったが、実際には朝から晩まで写経し続ける、相当な重労働だったはずだ。

そこから平安時代には、「個人的な祈願成就や信仰」として写経が行われるようになっていった。

書道に必要な道具
hichako/gettyimages

書道には「文房四宝」というものがある。

まず、文房具という言葉にも含まれる「文房」とは書斎のことを表し、そこに置いてある道具なので文房具と呼ぶ。その中でも宝物として扱われてきたのが、書道の「文房四宝」、すなわち「筆・墨・紙・硯」の4つであり、まとめて「筆墨紙硯(ひつぼくしけん)」と言う。中国の宋の時代には、文房四宝は実用品というより、観賞用として大事にされていたそうだ。特に硯は、使用しても半永久的に消耗しないため骨董品としての価値を持っていた。

ちなみに文房具が置かれていた書斎は、「学問を修め、優れた文章を書く才覚のある人」である文人のものであった。当時の文人は、高貴な身分に儒学からくる徳と、素養を兼ね備えた人物を指していた。

現代の書を一般的にたしなむ人々にとっては、文房四宝はむしろ「実用性を重視した道具」としての性格が強く、文人だけのものでもない。それでも、「筆墨紙硯を大切に扱うという気構え」はとても大切なことだ。

「永」の字で基本技法をマスター
自由国民社提供

線とその構成でできている書道の練習を漢数字の「一」から始める教室は多いが、そればかりでは飽きてしまう。筆使いの基礎を学ぶために古来、書道の勉強で行われてきたのが「永字八法」だ。これは、書道に必要とされる基本技法八種類が、「永」という漢字には全て含まれていることに由来する。以下、書き順に沿って説明しよう。

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要約公開日 2024.03.09
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