近年、若い世代を中心に「子供は贅沢品」「結婚は嗜好品」と言われるようになった。これらの言葉の裏には「日々の生活に精一杯で、結婚・出産する余裕がない」「結婚の優先順位は低い」という思いが見え隠れする。
だが、2021年に実施した国の第三機関による調査によると、18〜34歳の男女の8割以上が「いずれ結婚するつもり」と回答している。
日本の未婚率は上がり続けている。1990年時点では4.3%であった女性の生涯未婚率は、2020年には17.8%に上昇。わずか30年で4倍にもなり、女性のおよそ6人に1人が「一生に一度も結婚しない」という結果が出た。男性はさらに多く、4人に1人以上が生涯未婚者となっている。
生涯未婚率の上昇理由として、社会学的によく言われるのは「バブル崩壊と経済不況」「女性の社会進出」である。そしてもう1つ、「見合い結婚と恋愛結婚の逆転」を挙げる識者もいる。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、’60年代半ばから後半を境に、それまで主流だった見合い結婚を恋愛結婚が追い越している。その後も恋愛結婚は上昇し続け、いまでは結婚カップルの8〜9割を占めるようになった。
つまり「いずれ結婚する」ためには、異性への“モテ”に左右される「恋愛」という通過儀礼を経なければならないのだ。
「結婚しない(できない)」若者が増えてきたのは、’90年代半ば以降である。未婚率を引き上げた起点は団塊ジュニア世代('71〜’76年生まれ)、通称「貧乏クジ世代」だ。彼らは厳しい受験戦争を強いられた挙句、バブル経済が崩壊して「就職氷河期」に当たってしまう。
バブル崩壊と経済不況は、所得と雇用の「格差」を生んだ。’99年の労働者派遣法の改正により、その後は男性の非正規雇用も急増。その割合は近年まで15%前後で推移している。
正規と非正規の月収額の中央値は、2022年時点で正規が約31万円、非正規が約21万円と月10万円の開きがあり、年額にすると120万円にもなる。男性は非正規や低所得の人ほど「結婚しない(できない)」とされるが、実際、非正規の未婚率は7割、正規の未婚率は2割程度。近年はこうした格差が女性にも及んでいる。
また、女性の社会進出も未婚率上昇理由の一端だ。’90年代後半に「男女雇用機会均等法」が改正され、職場における男女平等が本格化し始めた。その結果「経済力を身につければ、焦って結婚しなくてもいい」空気が醸成され、結婚の先送りに繋がった。
では、令和の若者「Z世代」はどうだろうか。2021年の調査では、18〜34歳の未婚の男女の「恋人ナシ」率は、男性で7割強、女性で6割強であった。バブル期の同調査では男女ともに4割前後であったことを考えると、恋人のいない若者の割合が上がっていることがわかる。
いまの若者が恋愛に踏み込めない理由はいくつかあるが、その1つが「超情報化社会」である。SNSやスマホの普及により、「リアルの恋愛はコスパが悪い」と考える若者が増えてきた。恋愛経験の有無にかかわらず、ネット(SNS)で得た恋愛情報や体験談を日々目にしているため、分かった気になる「既視感」を強めてもいる。
3,400冊以上の要約が楽しめる