吾輩は猫である

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評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

ときどき、猫が人間の言葉を理解していると感じることがある。彼らはそのかわいい目でわたしたちの内心を見透かし、時には見下しているようにさえ見える。猫に思わず「ねえ、いま何を考えているの?」「本当は喋れるんでしょう?」と問いかけた経験があるのは、要約者だけではあるまい。

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」という書き出しで知られる『吾輩は猫である』は、まさにそんな猫好きたちの心をくすぐるストーリーだ。主人公の「吾輩」は、ひょんなことから教師の家に住み着いた元・捨て猫である。本書では吾輩の視点から、人間たちの暮らしぶりが皮肉たっぷりに描写される。

吾輩は冷ややかな目で人間たちを観察し、時にはその情けなさに呆れる様子を見せる。非常に知的で、一介の猫とは思えないほど教養があることにも驚かされる。だが、すべての猫が吾輩のような知性を持っていないと、どうして言い切れるだろう?

要約者は本書を手に取り、つい吹き出してしまうような、ユーモア溢れるシーンが多くあることに驚いた。特に気に入ったのは、吾輩が「人間って猫の言葉を理解できるほど恵まれた動物ではないから……」とコミュニケーションを諦めているシーンだ。「猫さま、われわれ人間の努力が及ばず本当にすみません」とひれ伏したくなる。

「吾輩」の主人のモデルは夏目漱石自身で、「吾輩」のモデルは漱石の家に紛れ込んだ黒猫だそうだ。そう知って読むと、ますます味わい深く、またじわじわ笑えてくる作品である。猫派の方にぜひ読んでもらいたい。

著者

夏目漱石(なつめ そうせき)
1867(慶応3)年、江戸生まれ。帝国大学英文科卒。愛媛県松山中学校教師、第五高等学校教授を経て、1900年英国留学。帰国後、第一高等学校や東京帝国大学で教鞭をとる。1905年に『吾輩は猫である』、翌年には『坊っちゃん』『草枕』など話題作を次々に発表。1907年、文筆活動に専念するため、教職を辞し朝日新聞社に入社。『三四郎』『それから』『門』『行人』『こころ』『道草』等、日本文学史に残る数々の傑作を著す。『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し50歳で永眠。

本書の要点

  • 要点
    1
    「吾輩」は教師の家に住み着いた元・捨て猫だ。教師である主人の暮らしぶりを観察して「教師というものは実に楽なものだ」「こんなに寝ていて勤まるものなら猫にでも出来ぬ事はない」と感じている。
  • 要点
    2
    吾輩は好奇心から餅をかじったが、どうしても噛み切れずに困ってしまう。なんとかしようと、しっぽをぐるぐる振ったり、耳をぱたぱたしたり、顔を前足で引っかきまわしたりしているところを家の者に目撃され、げらげら笑われた。
  • 要点
    3
    吾輩は人間の飲み残したビールを飲み、酔っぱらった挙句、水甕に落ちて死んでしまう。

要約

【必読ポイント!】 人間というものとの出会い

初めて見た人間の顔

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

どこで生まれたかわからない。薄暗いじめじめした所でニャーニャー鳴いていた事だけ覚えている。吾輩はここで初めて人間というものを見た。あとで知ったのだが、それは書生という、人間の中で一番凶悪な種族だったそうだ。

初めて見る人間の顔は妙だった。毛が生えておらずつるつるしていて、まるで薬缶のようである。いろいろな猫に会ってきたが、こんな奴は初めてだ。

しばらくはこの書生の手に座っていたが、やがてすごい速度で動き始めた。目が回り、胸が悪くなる。これはダメだと思っていると、どさりと音がして目から火が出た。そこから先は記憶がない。吾輩は笹原の中へ捨てられたのだった。

住み家と主人
oksy001/gettyimages

笹原を抜け出して歩いていくと人間臭い所へ出たので、「ここへ入ったらどうにかなるだろう」と思い、竹垣の崩れた穴からとある屋敷にもぐり込んだ。もし竹垣が破れていなかったなら野垂れ死んでいたかもしれない。

屋敷に忍び込んで最初に会ったのがおさんだ。おさんは吾輩を見るや否や首筋をつかんで表へ放り出した。放り出された吾輩は再び台所に這い上がり、またおさんに投げ出される。これを4、5回ほど繰り返しただろう。おさんのことをつくづく嫌いになったが、この前サンマを盗んで仕返ししてやったら、胸がスーッとした。

そうこうしていると、この家の主人が「なんだ、騒々しいな」などと言いながら出てきた。下女は吾輩をぶら下げて「この宿なしの小猫がいくら出しても出してもお台所へ上がって来て困ります」という。主人は鼻の下の黒い毛をねじりながら吾輩の顔を眺めていたが、やがて「それならうちへ置いてやれ」と言った。吾輩はこうしてこの家に住むようになったのである。

猫でもできる仕事

主人の職業は教師だそうで、学校から帰ると書斎からほとんど出てこない。家の者は大変な勉強家だと思っているし、当人もそのように見せているが、実際は違う。吾輩は時々こっそり彼の書斎を覗いてみるが、よく昼寝をしているし、読みかけの本に涎をたらしていることもある。

猫から見ると、教師は実に楽な職業だ。人間に生まれたら教師になるに限る。こんなに寝てばかりの者に勤まるなら猫にだってできるだろう。

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要約公開日 2024.04.28
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