テスラのイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ。この3人の共通点は、「世界が注目する天才的なイノベーター」「10兆円以上の資産を持つ大富豪」などが挙げられるが、もうひとつある。それは、「猛烈な読書家」であることだ。
あらゆる業界秩序を破壊するイノベーターたちのユニークな発想はどこから来るのか。例えばイーロン・マスクは、「火星に行く宇宙ロケットを開発する理由」を問われた際、「人類の数千年にわたる歴史において、文明が発展した時期もあれば後退した時期もあった。再び同じことが起きないとも限らないため、危機に備えて地球以外に人類が住める場所を確保する必要がある」と答えたという。
マスクがこのような型破りな発想に至ったのは、彼が猛烈な読書家で、SFやファンタジー、歴史関連の書籍が大好きであることと無関係ではない。マスクの愛読書であるアイザック・アシモフの『ファウンデーション――銀河帝国興亡史』シリーズは、1万2000年続いた銀河帝国が衰退した後の宇宙を描いた壮大な作品だ。こうした読書経験は、火星を目指すマスクの思考の根底にあるのではないだろうか。
ベゾスとゲイツも読書家だ。幼少期から図書館に足しげく通っていたベゾスは、大人になって圧倒的な品揃えを誇る「インターネット書店」を開いた。また「読書オタク」として知られるゲイツは、年に2回ほど別荘に1週間こもって本を読みあさる「シンク・ウィーク(Think Week)」を1990年代前半から続けている。
彼らの読書範囲は広く、歴史から科学、SF、経済学、経営学、自己啓発まで多岐にわたる。さらに古典から最近の本まで網羅し、教養を常にアップデートしているのである。
要約では3人の読書リスト100冊の中から、特に人生哲学に影響を与えたものを抜粋して紹介する。
「歴史の本を読むことに魅了されている」。イーロン・マスクはこう語っており、特にローマ帝国に興味を持っている。
そんなマスクの愛読書のひとつが、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』である。本書の第一巻の発売は1776年で、約250年近く前に執筆された歴史古典だ。大変古い本ではあるが、退屈な年代記のようなものとは違い、歴代のローマ皇帝の成功や失敗、勇気、悩みに迫った非常に魅力的な内容だ。
長い歴史の中で、ローマ帝国には内戦・外国との戦争・疫病・飢饉・奴隷の反乱といった、あらゆる困難が襲いかかってきた。そのたびに当時の皇帝たちが難局に立ち向かい乗り越えることで、ローマ帝国は命脈を保っていったといえる。
本書はマスクだけでなく、ナチスドイツに追い詰められた英国を救った名宰相ウィンストン・チャーチルや、インドの初代首相であるジャワハルラル・ネルーなど、多くの指導者たちを魅了してきた。こうした偉人たちが『ローマ帝国衰亡史』を好んできた理由は、過去のリーダーたちの成功と失敗について学べる点にある。
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