3年で「経理のプロ」になる実践PDCA

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3年で「経理のプロ」になる実践PDCA
出版社
日本実業出版社

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出版日
2014年10月20日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書は、税理士であり経理業務に関するコンサルティングを行っている著者二人が、経理社員が「経理のプロ」となるためのスキルアップ方法を体系的にわかりやすく記した一冊である。ここでいう「経理のプロ」とは、経営者や他部門から信頼され必要とされる経理社員を指す。企業の経理業務は、事務処理のコンピュータ化やアウトソーシングの普及などの流れにあり、経理事務員(特に女性)の数は2000年以降減少の一途を辿っているという。経理事務員が直面する「失業」という厳しい現状を打破するためには、事務処理のみでなく「経理のプロ」としての資質を高め企業状況を分析し提案する力が必要だ、という想いが、著者らが筆を執るきっかけとなった。

本書では、3年後に「経理のプロ」となることを前提に、PDCAサイクル(Plan/Do/Check/Action)を用いたスキルアップ法を紹介している。経理に必要とされる4つの能力開発を目標とし、具体的な業務をPDCAサイクルに当てはめ、各能力ごとに章分けして説明がなされている。例えば、第2章「効率仕事力アップのPDCA」では、業務時間配分の組み替え、月次決算報告早期化のための工程見直し、エクセルの活用方法、といった、経理担当者が普段行っている業務を、P、D、C、Aに振り分けつつ、段階的に進めることで効率的な仕事をする能力を身につけられるように解説されている。

すぐに実践できる具体的なアドバイスが盛り込まれ、エクセル活用法も図表とともに説明してあるので、本書を使うことで業務を大きく改善させることも可能であろう。経理社員必読の一冊だ。

著者

児玉 尚彦(こだま たかひこ)
税理士。(株)経理がよくなる代表。埼玉大学経済学部卒。企業の税務会計顧問の他、経理業務の効率化、財務体質の改善、経理社員の育成などを中心に活動。講師を務める「経理財務セミナー」には9000社以上が受講。著書『35歳までに身につけておくべきプロの経理力』『「少人数で儲かる経理」はこうつくる』(以上、日本実業出版社)、『会社のお金はどこへ消えた?』(ダイヤモンド社)、『新版ココまでできる経理の合理化』(日本能率協会マネジメントセンター)他。
『経理合理化プロジェクト®』http://www.keiri4970.com/

上野 一也(うえの かずや)
税理士・中小企業診断士。(株)経理がよくなる/児玉上野税務会計事務所共同代表。1976年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、ヤマハ(株)へ入社。情報システム部門に7年間勤務し、社内システムの設計・運用に携わる。その後、2007年に会計事務所へ転職し、会計業務に従事しながら税理士資格を取得。経理事務を改善するためのシステム化支援、改善後の財務分析や資料づくりなどを指導し、多くの経理社員のキャリアアップに貢献。経理社員向けの財務研修やエクセル研修も多数実施しており、実務に直結する内容は「具体的でわかりやすい」と高い評価を得ている。経理関連の雑誌に記事多数執筆。

本書の要点

  • 要点
    1
    経理社員には事務処理だけでなく「経理のプロ」として提案力を身につけていくことが求められている。
  • 要点
    2
    「経理のプロ」として企業活動を支援するとき、求められる能力が、効率仕事力、計数管理力、財務提案力、経営貢献力である。それぞれの能力が、企業全体のPDCAと密接に関わり、それらを支えている。
  • 要点
    3
    キャリアプランを考え、時間を確保して勉強及び勉強の実践に充てる。そして定期的に進捗状況を確認し軌道修正する。この継続がスキルアップにつながる。

要約

経理PDCAでキャリアアップする

会社が経理に期待している4つのこと
Palto/iStock/Thinkstock

経理事務員の人数は、2000年以降約100万人も減少している。その理由は、事務処理のコンピュータ化、経理業務のアウトソーシング、事務職の派遣・パート社員への転換が考えられる。景気が回復しても経理社員の数は減少傾向と予測される中、いかに会社に貢献する社員となるかが経理として生き残るカギとなる。

職を失った経理事務員の多くは、単純なルーティン作業に従事していた傾向が見られる。会社から評価を得るためには、事務処理に時間をかけるのではなく、会社が期待する経理本来の仕事をすることだ。

会社が経理に求めるのは、①生産性向上、②数字から見える異常検知と原因分析、③利益向上のための財務提案、④経営者の意思決定支援を実施することである。この4点は、それぞれ、効率仕事力、計数管理力、財務提案力、経営貢献力のスキルであるとも言い換えられる。

スキルを身につけるためには、基本的な「型」となる経理PDCAを意識し実行することが重要だ。PDCAとはP(Plan)、D(Do)、C(Check)、A(Action)という、事業活動を段階的に進める方法を指し、これを実行することでスキルアップが習慣化する。

効率仕事力アップのPDCA~生産性の高い経理になる~

事務処理時間を短くする
Szepy/iStock/Thinkstock

まずは効率仕事力アップのPDCAを紹介しよう。仕事のスピードアップと作業時間の短縮を目標とする。次に事務作業工程の見直しと効率的なやり方を導入し、実行後の検証、さらに改善点を修正する。各作業についてPDCAサイクルを当てはめることで、着実に効率化を図っていきたい。

より具体的に見ていこう。具体的目標は「月次決算の早期化と事務処理時間の短縮」である(P)。例えば月次決算を毎月5日までに報告する目標を掲げる場合、毎月5日に速報値、7日に確報値を出すスタイルで始めれば無理なく導入できる。決算の概算が少しでも早く出ていたほうが、経営者はすばやく対策を練れるので、スピードアップには大きな意味がある。また、エクセルの活用や帳票の統廃合で事務処理時間短縮を目標にする。

次に、目標実現のための行動を行う(D)。月次決算前倒しのために、待ち時間の解消、経費計上の省力化、チェック方法の見直しを行う。さらに、エクセルで、ミスの起こりにくい仕組みを導入して作業効率化を高める。

実行内容の検証のためには、例えば1カ月の事務作業時間を集計し、実行前と後でグラフにして比較すると分かりやすい(C)。

最後の改善段階では、作業のマニュアル化やエクセルツール共有など、作業の引継ぎを可能にするのがポイントだ(A)。画面イメージやイラストを中心に、動画マニュアルなども作成して、わかりやすくなるように工夫するといい。

【必読ポイント!】 計数管理力アップのPDCA~比率と変化で会社の状況をつかむ

3つの見方を理解して「会計の専門家」になる

普段の業務を効率的に回せるようになれば、少しずつ時間に余裕が出てくる。その時間を、会社の活動の分析や経営状態のチェックに充てていこう。

そうした計数管理力アップのために、収益構造分析、キャッシュフロー分析、財務分析の達成を目標に掲げる。これらをマスターするには、損益分岐点、キャッシュフロー計算書、財務指標の3つの見方の理解が必要となる(P)。

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要約公開日 2015.02.03
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