あなたの時間と元気を取り戻す

減酒セラピー

未読
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減酒セラピー
著者
未読
減酒セラピー
著者
出版社
出版日
2024年02月26日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

お酒が好きな人にとって、気心の知れた人とのお酒の席や、家でくつろぎながらお酒を楽しむ時間は、人生の幸せなひとときだといえるだろう。適量のお酒はプラスの作用をもたらすと、要約者自身も感じたことがある。しかし、過度の飲酒は、自身の健康や生活を脅かし、人間関係の破綻、さらには身を滅ぼすことにもなりかねない。アルコール依存症への対処法としては、「断酒」が選ばれることが多いようだ。

一方、本書は「減酒セラピー」を選択肢に挙げる。日々摂取するアルコール量を減らし、体調、生活や人生をより良いものにすることを目指す。お酒を飲み続けながらより良い生活を目指すというのが、お酒好きには嬉しいところだ。

本書では、減酒のコツや方法、そして著者が開設した「アルコール低減外来」に足を運ぶ患者さんたちのカウセリング例も紹介されている。実際の患者さんの例に触れることで、「減酒」というものをより具体的に想像することができる。

「減酒」にはたくさんの選択肢がある。一定期間で減らしたアルコール量をキープする場合、「さらにもう少し減らしてみよう」と試みる場合、そして、減酒を進め最終的には「断酒」を目指す場合など、自分なりのゴールを設定できるのも、「減酒」の良いところだといえる。

「ずっと楽しく飲み続けるために」、お酒好きにこそ読んでもらいたい一冊である。

著者

吉本尚(よしもと・ひさし)
1979年生まれ。北海道出身。筑波大学医学医療系准教授。筑波大学健幸ライフスタイル開発研究センター、センター長。博士(医学)。
無医村での診療を志して着任した山間部の総合診療クリニックでの患者さんたちとの出会いをきっかけに、飲酒と健康についての研究に取り組むようになる。
2019年1月には、北茨城市民病院附属家庭医療センターに総合診療科で日本初となるアルコール低減外来を開設。その後、筑波大学附属病院でもアルコール低減外来を開設し、患者さん個々の飲酒状況などに応じて飲酒量を減らすアドバイスを行っている。
2024年、日本が国として初めて作成した飲酒の目安、厚生労働省「飲酒ガイドライン」の作成検討会委員。NHK『ごごナマ』『今日の健康』『健康チャンネル』『クローズアップ現代』、日本テレビ『スッキリ』『news every.』等に出演。メディアを通じて広く情報発信を行っている。今回が初の著書となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    以前はアルコール依存症になると、「断酒」一択だと考えられていたが、アルコール摂取量を減らす「減酒」という選択肢が存在する。治療法は、カウンセリングや減酒薬によるものなど、より取り組みやすい治療法が存在している。
  • 要点
    2
    2024年に、「国民の飲酒に役立つ目安」として初のガイドライン(「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」)が作成された。ガイドライン内では飲酒量の把握が重要項目の1つとして挙げられており、その際の目安は「純アルコール量」というものだ。減酒にはこの「純アルコール量」への意識が重要である。

要約

ずっとお酒を楽しみ続けるための減酒

「アルコール低減外来」とは?
Edwin Tan/gettyimages

著者は、筑波大学と北茨城市民病院附属家庭医療センターでアルコール低減外来を開設し、診療に当たる医師である。アルコール低減外来とは、アルコールの摂り過ぎによる諸問題に患者と共に取り組む「飲酒に関する相談窓口」だ。

医学部卒業後、著者は山間部にあるクリニックで働いていた。そこにアルコール依存症に近い患者さんが来たときには、アルコール問題を専門に扱う精神科や心療内科を紹介し、二度とお酒は飲めないと伝えざるをえなかった。そうすると、ほとんどの人は嫌がり、せっかく面談の時間をとっても、ほとんどが専門機関に「行くか」「行かないか」の問答に費やされてしまう。著者は次第に、説得に時間を割くよりも、飲酒習慣を見直す会話を重ねるほうがアルコール問題の治療につながるのではと考えるようになった。こうしてできたのが、依存症になる手前の、ちょっと飲みすぎている人たちも気軽に訪れることのできる窓口だ。

著者の外来に訪れる、明らかに問題を抱えている人の平均酒量は、ビール500mlを毎日6、7本。これらを約2時間で飲んでしまうようだ。お酒に対する依存度が高い人ほど、自分の飲み過ぎを否定する。それは、依存症を受け入れると、お酒をやめるように言われ、大好きなお酒を二度と飲めなくなると思うからだ。

だから著者は「お酒をやめるか減らすか、どっちにします?」と問いかけるようにしている。すると、多くの人がしぶしぶ「減らすほうで」とつぶやく。そのひと言が治療への第一歩となる。

以前は、依存症になると、二度とお酒を飲めなくなるのが当たり前だったが、現在はそうではない。カウンセリングによる減酒、減酒薬による治療など、より取り組みやすい治療法が登場している。

【必読ポイント!】 お酒にまつわるあれこれ

「少し飲んだ方が長生き」のウソ

近年、お酒にまつわる「空気」が変化してきている。日本では、職場の飲み会に無理して出席するよりもプライベートを優先する人が増えてきている。お酒を飲むことを強要するアルハラ(アルコールハラスメント)という言葉も社会に浸透しつつある。また、世界的な「空気」の変化としては、「実は少量でも飲酒自体が有害なのではないか?」と考える人が増えてきたことが挙げられる。生活者の実感からも、研究者や医師の知見からも、飲酒の害が課題として浮かび上がってきているのだ。

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要約公開日 2024.07.12
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