筆者は、これまでの経験やコーチングの仕事を通して、職場や友人との人間関係におけるストレスの原因は「価値観の扱い方」にあると気づいた。人は誰しも「大切にしたい価値観」を持っており、その価値観はみな違うのが自然だと認識しておけば、自分の価値観とは違う人への違和感や苦手意識を軽減できるだろう。そのためには、まず自分の価値観を理解しておくことが第一歩だ。
相手への負の感情を整理して、人の気持ちを理解するための道具として、「自分視点(自分を中心とした視点)」「相手視点(相手から物事を見たときの視点)」「俯瞰視点(状況全体を見渡す視点)」の3つを紹介したい。苦手に感じる相手に対しては、このうち「相手視点」と「俯瞰視点」を意識して視野を広げるとよい。例えば厳しい上司に対しては、職場だけでなくプライベートでの上司を想像してみよう。「お子さんにはどんな顔で笑うのだろう」とイメージすると、相手への感情が少し変化するはずだ。複数の視点を柔軟に切り替えられるようになると、人間関係がスムーズになる。
さらに、「自分視点」に「相手の良い点を探そう」という意識を取り入れることで、共感や好感を持ちやすくなり、相手への苦手意識を薄めることができる。
脳は検索エンジンのように、自分が意識したものを探し出す性質を持っている。苦手な人だと思うとイヤな点ばかりが目につくのだ。そこで、「イヤだと思う点」を思いつく限り挙げて頭をスッキリさせた後に、「良い点は何か?」「どうしたら解決するだろうか?」という問いを自分に投げかけてみてほしい。すると、脳の検索エンジンが良い点と解決策を探す方向に働き始めるのだ。
苦手な人の長所を見つけやすくするには、相手の苦手なところを「反対から見てみる(長所に言い換えてみる)」のが効果的だ。例えば「飽きっぽい」→「好奇心旺盛」、「優柔不断」→「人に気遣いをする」などと意識的に言い回しを変えることで、嫌いな特徴が良い特徴に見えてくる。ある一点について反対から言い換えができると、その人の印象全体が変わり好意を持てるようになるのだ。この言い換え(リフレーミング)の能力は、意識して何度も繰り返し行うことで身につけられる。
人の気持ちを理解しようと考えることは、「就職の面接や取引先とのミーティングなどの正念場でベストな自分を出せる」という副効用を得ることができる。
人が緊張するときは、「失敗したくない、よく思われたい」という思いが強く、「自分に意識が向かいすぎている」ときである。本番でも自然体でいられるようにするには、相手に意識を向けることが大切だ。
相手に意識を向けやすくするには、3つの方法がある。
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