アドラーに学ぶ部下育成の心理学

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アドラーに学ぶ部下育成の心理学
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アドラーに学ぶ部下育成の心理学
著者
出版社
出版日
2014年08月12日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「ほめない、叱らない、教えない」で部下を育てる方法があると聞いて、どんな印象を持つだろうか。人材育成の基本と考えられてきた三原則をことごとく覆して、代わりに一体どんな方法を使うのか、と不思議に感じるかもしれない。

本書の考え方の基調となるアドラー心理学は、これまで、主に子育てや学校教育の分野で活用され、企業の人材育成には適さないと考えられてきた。なぜなら、企業組織においては「短期的な結果を出すこと」が必須だからだ。

だが、著者は言う。「目先の業績と中長期的な人材育成の両立は十分に可能」、「『ほめない、叱らない、教えない』教育法は、企業の人材育成においても効果を上げることができる」と。

オーストリアの精神科医、アルフレッド・アドラーによって提唱されたアドラー心理学は、「自己啓発の源流」とも呼ばれ、その考え方は、コーチングなどにも応用されている。日本でも、最近関連書籍が相次いで出版されベストセラーになっているので、聞き覚えのある方も多いだろう。

本書では、組織人事コンサルタントとしての著者の豊富な経験に基づき、実際のビジネスの場面を想定したケーススタディが豊富に紹介されている。アドラー心理学に初めて接する読者でも、具体的なイメージを持ちやすいだろう。

「ほめる、叱る、教える」従来型の人材育成に限界を感じている管理職の方はもちろん、後輩の成長をサポートしたい若手ビジネスマンにも、ぜひ一読してほしい良著である。

ライター画像
髙橋三保子

著者

小倉 広
株式会社小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。日経BIZアカデミー、日経ビジネス課長塾、SMBCコンサルティング講師。
大学卒業後、リクルート入社。その後、ソースネクスト常務などを経て現職。大企業の中間管理職、ベンチャー企業役員、自ら興した会社の社長と、様々な立場で組織を牽引してきた。
コンサルタントとしての20年の経験を基に、対立を合意に導く「コンセンサスビルディング」の技術を確立し、普及に力を注ぐ。また。悩める30代のビジネスパーソンを救うメンターとしても知られる。
『任せる技術』『やりきる技術』(日本経済新聞出版社)、『自分でやった方が早い病』(星海社新書)など著書多数。2014年2月に上梓した『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

本書の要点

  • 要点
    1
    ほめることは、上から目線でコントロールすることと同義である。そうではなく、「横から目線」で主観や感想を伝えよう。それが、アドラー心理学で「勇気づけ」と呼ばれる方法だ。
  • 要点
    2
    叱ることは勇気をくじいてしまう。勇気づけながら部下を指導するには、「主観伝達」と「質問」で自発的な思考を促す、何か事例を「誘い水」として挙げ、部下の意見を引き出す、という方法がある。
  • 要点
    3
    教えすぎると、部下は自分の考えを持たなくなる。教えずに部下を育てるコツは「支援応需」、つまり、手伝ってほしいという要請があって初めて手を貸すということにある。

要約

ほめてはいけない

「横から目線」の「勇気づけ」

部下が難易度の高い目標を達成したとする。上司もしくは先輩として、あなたはその部下にどんな言葉をかけるだろうか。

①「よくやった!」とほめる

②「すごいなあ」と感心する

③「チームのためにありがとう」と感謝する

一般的には①の「ほめる」が正解と考えられている。しかし、アドラー心理学ではほめることを否定する。ほめることは「上から目線」の行動であり、「相手の自律心を阻害し、依存型の人間を作る」と考えるからだ。

アドラー心理学では②や③を、①の「ほめる」と明確に区別して、「横から目線」の「勇気づけ」と呼ぶ。

上から目線のコントロールは即刻やめよう
Sergey Nivens/iStock/Thinkstock

自分の会社の社長に「社長、なかなかよく頑張っていますね」などと言うビジネスパーソンはいない。立場が下の者が、上の者をほめることはない。つまり、ほめるということは上下関係をすり込むことにつながっている。「あなたはよく頑張っているね」という言葉の裏側には、「私が上、あなたは下」というメッセージが含まれているのだ。

野菜が大嫌いな子どもがハンバーガーだけを食べ続けていたとしよう。あなたがその子の親ならば、叱ることはあっても、ほめることはないだろう。では、野菜嫌いの子どもがサラダをもりもり食べていたらどうか。きっと、あなたは子どもをほめるだろう。これは、親が子どもを自分が思う通りにコントロールしようとしていることの、ひとつの例だ。いくら、野菜を食べることが健康によくても、子どもは大人のコントロールを嫌がる。親でさえ子どもをコントロールできないのだから、上司が赤の他人である部下をコントロールできないのは当然だ。

成果が上がればほめ、上がらなければ無視する、もしくは叱るといった態度をとる上司は、部下からの信頼を失ってしまう。このようなコントロールは即刻やめよう。上司は部下を常に勇気づけなければならない。

相手が自分の力で課題を解決できるよう支援する
Kesu01/iStock/Thinkstock

ほめていけないならば、どうすれば勇気づけになるのか。先の野菜が嫌いな子どもの例でいえば、子どもが野菜を食べているのを見た時、親がかけるべきなのは、以下のような言葉だ。「ずいぶん、もりもり食べているね」「おいしそうだね」「私もサラダが食べたくなった」。上から目線で子どもを評価せず、代わりに、横から目線で主観や感想を伝えることが、「勇気づけ」である。

勇気づけとは、「相手が自分の力で課題を解決できるように支援すること」だ。上記の事例は上司と部下の関係にもそのまま適用することができる。業績を上げた部下に対して「偉いぞ! よくやった!」とほめるのではなく、「生き生きと仕事をしているね」「チームを助けてくれてありがとう」のように、横から目線で主観や感想、感謝を伝えるのだ。

叱ってはいけない

常識をくつがえす「叱らない」人材育成

部下が、目標を60%しか達成できなかったとしよう。部下の日ごろの行動には、残念ながらあまり頑張りが見えなかった。そんなとき、上司や先輩として、あなたはどんなふうに声をかけるだろうか。

①「60%じゃだめだ。やり方を変えなくてはならないぞ」と叱る

②叱るとモチベーションが下がるので、あきらめて黙っておく

③「成果は出なかったけれど、あのやり方は良かったね」とプロセスに注目する

④「60%はできたね」とできたところに注目する

アドラー心理学の「勇気づけ」にあたる声かけは、

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要約公開日 2015.02.24
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