「確率思考」で市場を制する最強の投資術

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「確率思考」で市場を制する最強の投資術
出版社
出版日
2024年09月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本人は投資に向いていない民族だといわれることがある。しかし、本書の冒頭でエミン・ユルマズ氏は、特定の民族に投資の向き不向きがあると思えない、と否定する。日本人の問題は「数字のあるゲーム」をあまりやらなくなったことなのだ。かつては遊びの定番だったトランプゲームには、お金や投資との距離を近づける役割があったという。なかでもポーカーは、カードゲームの形をした投資ゲームともいえるほど、投資との親和性が高い。ウォーレン・バフェットをはじめとする欧米の著名投資家は、ほぼ全員腕の良いポーカープレイヤーだそうだ。

ポーカーから投資についての気づきを多く得てきたというエミン氏は、日本を代表するポーカープロである木原直哉氏と出会い、ポーカーのプロは投資のプロでもあるという確信を深めたという。そうして生まれたのが、二人の対話をまとめた本書だ。

個別株投資とポーカーという一見異なる世界を結びつけ、その共通点に注目しながら、確率思考で投資を制する方法を具体例とともに考えていく。ポーカーで大金を賭ける判断に慣れている木原氏は、本格的に株式投資を始めてからまだ3年ほどだというのに、すでにベテランの風格を漂わせている。その投資に対する姿勢に触れていくと、株式投資とポーカーは似ているという主張にも納得できる。

エミン氏によれば、株式投資をする上で日本に生まれたことは、大変な幸運だそうだ。あとはルールを知って正しくプレーするだけ。そのために必要なマインドを本書は教えてくれる。

ライター画像
池田明季哉

著者

エミン・ユルマズ(Emin Yurumazu)
エコノミスト、グローバルストラテジスト。
レディーバードキャピタル代表。
1980年生まれ、トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。2024年レディーバードキャピタルを設立。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信を積極的に行っている。ポーカーネームは、JACK。
著書に『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『エブリシング・バブル終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025』(プレジデント社)など多数。

木原直哉(きはら なおや)
プロポーカープレーヤー。
1981年、北海道名寄市出身。2001年に東京大学理科一類に入学。在学中は将棋部に所属し、バックギャモンやポーカーなどの頭脳ゲームに熱中していく。10年かけて東京大学理学部地球惑星物理学科を卒業し、翌2012年 WSOP $5000 Pot-Limit Omaha 6-Handed で優勝し、日本人初のブレスレットホルダーに。ポーカーの戦略やメンタル面についての教育活動や国内大会での解説など日本国内外でのポーカーの普及に努めている。
著書に『東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考』(KADOKAWA)、『運と実力の間』(飛鳥新社)、『たった一度の人生は好きなことだけやればいい! 東大卒ポーカー世界チャンプ 成功の教え』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    個別株式投資とポーカーには多くの共通点がある。どちらもスキルと運の両方が必要で、リスク管理がものをいう。運がめぐってきたときにそれを活かせるかは、スキル次第だ。
  • 要点
    2
    エミン氏は、市場成長の可能性や個別の企業のシェアを見極め、銘柄を選ぶ「ストーリー投資」を推奨している。木原氏が実践する投資法も、この一種である。
  • 要点
    3
    インフレによって、日本株と経済は長期的に成長する可能性が高い。今後は投資をしていないことが大きなリスクになる。

要約

投資とポーカーの共通点

ポーカーが強い人は投資も強い

日本を代表するポーカープレイヤーである木原氏が本格的に株式投資を始めたのは3年ほど前。2023年にはポーカーでの稼ぎを上回る利益を得たという。きっかけは株主優待狙いで保有していた東京ドーム株が買収劇に遭い、その影響で30万円ほど儲かったことだ。そこから積極的に利益を狙うようになり、300万円からスタートし、レバレッジをかける信用取引を活用して、1000万円ほどを投資するようになった。

損失のダメージも大きい信用取引は、経験の浅い個人投資家にはあまり勧めないというエミン氏のコメントに対して、木原氏は「怖いという感覚は全然なかった」と語る。ポーカーでは、ひとつの勝負に200万円相当のチップを賭けて全額溶かしてしまうことも日常茶飯事だが、株では投資が突然ゼロになることは滅多にない。

この話を受けてエミン氏は、ポーカーと投資は共通点が多く、「ポーカーがうまい人は株式投資でも上達が早い」と指摘する。ポーカープロには株式投資の成功者や、運用の世界から転身してきた人がいるという。

株もポーカーもスキルと運
Veronika Ryabova/gettyimages

ポーカーは「カードを使ったベットゲーム、つまり『投資のゲーム』」だ。木原氏によれば、ポーカーは強い人が必ず勝つとは限らない。将棋で初心者がプロに勝つことはあり得ないが、ポーカーなら運に恵まれた初心者がトッププロに勝つことも十分可能だ。

エミン氏は、特別な知識を持たない人が大儲けすることもある点で、株も同じだと語る。ただし、どちらにも共通して言えるのは、運100%ではないということだ。もしそうなら、ポーカーで生計を立てる人や、専業投資家は存在しえない。瞬間的な儲けではなく、幸運を活用して利益を最大化していく長期的な成果は、スキルに依存する。運が悪いときにいかに損失を抑えてリカバリーできるかも、スキルにかかっている。

また、リスクを取らなければ勝てないことも、株式投資とポーカーの共通点だ。勝ったときに得る利益は、勝負のゆくえがわからない段階での、原資を失うリスクと背中合わせとなる。ハイリスク・ハイリターンである以上、リスク管理が肝要だ。

プレーすればするほど負ける

「ポーカーはマイナスサムのゲーム」だ。参加者の99%が負けて、プレーするほどチップを減らすことになる。素人がポーカーで負けがこんでしまう最大の原因は、「ゲームに参加しすぎること」なのだ。これが株なら、タダで勝負を休むこともできる。1992年〜2006年の取引データに基づく調査では、デイトレーダー45万人のうち利益を出しているのはわずか4000人だったという。

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要約公開日 2024.12.14
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