健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
著者
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
著者
出版社
出版日
2023年09月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

毎日元気に働いていた人が、突然倒れて帰らぬ人となる――。時折このようなニュースを耳にするが、要約者はどこか他人事のように感じていた。しかし本書を読んで、それは誰の身にも起きる可能性があると実感させられた。

著者はかつて、兵庫県尼崎市役所で市の職員の健康管理を担当していた。当時、職員は約4500人いたが、毎年多くの職員が亡くなっていた。60歳以下の現役世代であるにもかかわらず、その数は多い年で20人近く。著者はその事実に驚愕したという。

死因は、心筋梗塞や脳卒中などの「生活習慣病」が多かった。しかし彼らの健康診断データは、特に悪いというほどでもない。そこで著者は過去のデータをつなぎ合わせて検証したところ、ある傾向が明らかになった。それは、30~40代から肥満が続き、40歳を越した頃から血圧や中性脂肪など複数の数値が上がり始めていたことだ。

その数値は、正常値から少しはみ出した程度であった。それでもその状態が長く続いた上に何らかの要因が重なると、突然、脳や心臓の血管が破綻してしまうのだという。

おそらく読者の中には「健康診断で数値の良くない項目があった」という人もいるだろう。そのときは気になっても、体に支障がなければいつも通りの生活を送ってしまう。要約者もその1人である。

だが本書を読んで「このままではまずい」と本気で思い始めている。本書には「なんとかせねば」と思わせるのに十分なエビデンスと、丁寧かつ適切な改善指南が載っている。自分や家族のためにも、多くの現役世代に読んでいただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

野口緑(のぐち みどり)
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
1986年、兵庫県尼崎市役所入庁。2000年から総務局職員部係長として、メタボに着目した独自の保健指導で実績を上げ、「スーパー保健師」として注目される。環境市民局課長、市民協働局部長、企画財政局部長を歴任し2020年退職。2013年から大阪大学大学院招へい准教授、現在は大阪大学の特任准教授として、生活習慣病予防、保健指導介入の効果や手法の研究を行う。医学博士。

本書の要点

  • 要点
    1
    特定健診(メタボ健診)の結果の項目をバラバラに見るのは「正しい見方」ではない。健康状態と「血管の状態」は比例する。血管が痛むと動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病合併症などを起こす可能性が高くなる。健診では自分の「血管の状態」を知ることが重要だ。
  • 要点
    2
    働き盛りでいきなり倒れる人は、特定の数値が悪いというより、「ちょっと悪い」項目が複数あるケースが多い。
  • 要点
    3
    健診結果が悪くても自覚症状はない。具合が悪くなったときは「すでに重症」なのだ。

要約

【必読ポイント!】「結果の項目」をバラバラに見てはいけない

なぜ「メタボ健診」を受けなければならないのか

「血圧高いわ。最近は悪玉コレステロールも増えてきたし」「血糖値はそれほどでもないけど、中性脂肪がなあ」。

健康診断の受診後、このように「1つ1つの値」を見て一喜一憂していないだろうか。だが本来、診断結果をバラバラに見て終わりにするのは、正しい見方とは言えない。

また40歳を超えると、「特定健診(メタボ健診)」を受ける必要がある。メタボ健診の目的は、心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞など心臓や血管の病気)の重症化や、糖尿病の合併症を防ぐことだ。そのためメタボ健診の結果は項目別に見るのではなく、「血管の状態がどうなっているか」を知ることがポイントとなる。結果を見れば、血管の状態を推測できるからだ。

「人は血管から老化する」という言葉があるが、血管の状態はその人の健康状態を表している。血管が痛むと血管の壁が硬くなったり動脈硬化になったりして、心筋梗塞など危険な病気を引き起こすリスクが格段に高まる。

健診結果から「血管の状態」を推測する方法
P.23 より引用(日経BP 提供)

健康診断の結果から血管の状態を推測するにはどうすればいいか。血管の傷みは、次の5つの段階を踏んで進行していく。健診で異常値が出た項目をチェックするだけで、自分の血管がどのくらい傷んでいるかがわかるのだ。

(1)潜在的に進行する段階:BMI、腹囲、中性脂肪、肝機能(AST、ALT、γ―GTP)

(2)血管が傷み始める段階:血圧、血糖・HbA1c、LDLコレステロール、尿酸

(3)血管が変化する段階:腎機能(尿たんぱく、クレアチニン、eGFR)、心電図(虚血性変化)、眼底検査(血管変化)

(4)健康障害

(5)要介護状態・障害

血管の傷みが深刻化して「健康障害」の段階になると、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞、狭心症、糖尿病合併症、慢性腎不全になる危険性が高まる。さらに進むと、認知症や寝たきり状態、失明、心不全といった「要介護状態」に陥ってしまう。

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要約公開日 2025.01.29
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