入るべきか、入らざるべきか。入るならどれに入るのがよいのか。生命保険には悩みがつきまとう。そうした読者のために、著者は生命保険を次のように分析する。
自分が突然死んだとき、残された家族が困らないようにと、保険に加入する人は多い。生命保険を売る側も、「ご家族への愛情を示すために」という言葉を使う。生命保険は、ただの金融商品とは違い、それ自体に愛情もこもっているという売り方をされる。だが、「積立貯蓄や株式投資でも愛情を表現できる」のだ、と著者は厳しく指摘する。
著者によれば、生命保険は宝くじといっしょだ。保険料は宝くじの料金の分割払いで、自分が死ねば保険料、すなわち当せん金が入ってくる。宝くじも保険も、加入者がお金を受け取れるかどうかは、神のみぞ知るところだ。ただ、ポイントは、くじが外れた場合、つまり保険加入者が保険金を受け取らないままで契約を終了することは、何事もなく過ごせたことを意味するという点だ。むしろそれはありがたいことでもあり、生命保険は損をすることに意味がある宝くじであるといえるだろう。
保険のメリットは、契約直後に万が一のことがあっても満額の保険金が支払われるところにある。このメリットを活かせる人は一部である。たとえば子どもが幼く貯蓄の乏しい家庭は、わずかな支払いで生活を守ることができるだろう。
けれど、日本のような豊かな社会では、遺族は、夫婦どちらかの実家や親族から、経済的な援助を受けられることがしばしばある。遺族年金や死亡退職金も含めれば、なんだかんだやっていける場合が多いのだ。豊かな社会では、生命保険への加入は必須というわけではない。
宝くじとはそもそも、恐ろしく割の合わないギャンブルである。生命保険には、必要な時期に最低限の保険料で加入し、浮いたお金は将来のための投資に充てる、というのが賢い方策ではなかろうか、と著者は述べる。
生命保険会社の主力商品の一つに、医療保険がある。国の医療保険である国民健康保険を利用すると、医療費から基本的には7割を自費負担せずに済む。民間の医療保険は、医療費そのものを保険の対象としているわけではない。入院が長引いた場合に一日五千円から一万円の給付金が支払われ、ある年齢になると契約が終了するというタイプのものが多い。こちらは、医療保険という名前ではなく、「差額ベッド保険」もしくは「入院時の所得保証保険」とでも呼ぶべきではないか、というのが著者の見解である。
このごろは、高齢化社会に伴い、長生きするリスクが注目されるようになってきたので、生命保険を解約して医療保険に乗り換える人も多いのだという。それに対応し、保険期間に制限のない終身医療保険といった商品も登場し、入院一日目から最大二年間の入院期間にお金を給付するというものもある。
しかし、これは不思議な話だと著者は言う。
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