知的幸福の技術

自由な人生のための40の物語
未読
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自由な人生のための40の物語
著者
未読
知的幸福の技術
著者
出版社
出版日
2009年10月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

サラリーマンの典型的な人生設計は、30代でマイホームを買って定年前にローンを返済、そして、退職金と年金でのんびりと余生を送る、というものだった。しかし、もはやこのモデルは通用しない。

大企業では終身雇用制が崩壊し、経営破綻に陥るところもある。年金制度にも不安が多く、私たちの未来はますます不透明になりつつある。一歩踏み外せば家族ともども食べていけなくなってしまうという不安が、私たちをすっぽりと覆っている。

著者は、こうした世の中で、ささやかな幸福を手にして自由に生きていくには、経済的な基盤というものはとても大事なのだと語る。その基盤をつくるためには、現状を正しく理解し、自分の選ぶべきものを選ばなければならない。

本書はそうした選択のための現状分析を提示している。生命保険や年金や医療の現状、教育や不動産への投資の先にあるもの、資産運用、市場経済といったテーマが切り口だ。どれも、この先生きてゆくため避けては通れないテーマである。こうすれば損する、得する、といった視点でなく、あくまで淡々と冷静に並べられた情報は、みなさま自身の選択に少なからず役に立つことだろう。

なお、本書は2003年の日本経済新聞日曜版での連載をまとめ、文庫化したものである。しかし、古びた内容であるとは微塵も感じられなかった。それはなんともやるせないことに、著者があとがきに記している言葉を借りれば、それだけ時間が経っても「この国の仕組みはほとんど何も変わっていない」ということなのである。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

橘玲(たちばな あきら)
1959年生まれ。作家。早稲田大学卒業。2002年、小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。同年『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』がベストセラーになる。06年、『永遠の旅行者』が第十九回山本周五郎賞候補作となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    生命保険は、分割払いで、損することに意味がある宝くじを購入しているようなものだ。必要な時期に最低限の保険料で加入するのが賢い方法だといえるだろう。
  • 要点
    2
    年金制度への不安につけこむ危険な投資やサービスに闇雲に手を出さず、自分のできることで災厄に備えていくべきだ。
  • 要点
    3
    持ち家購入は、価値が変動する不動産に、銀行などから借金してお金を払うということなので、不動産投資と同様である。投資リスクは大きい。賃貸と持ち家にはリスクの所在という点で違いがあるので、自分に合った選択をすることが大切だ。

要約

生命保険

損することに意味がある宝くじ
solitude72/iStock/Thinkstock

入るべきか、入らざるべきか。入るならどれに入るのがよいのか。生命保険には悩みがつきまとう。そうした読者のために、著者は生命保険を次のように分析する。

自分が突然死んだとき、残された家族が困らないようにと、保険に加入する人は多い。生命保険を売る側も、「ご家族への愛情を示すために」という言葉を使う。生命保険は、ただの金融商品とは違い、それ自体に愛情もこもっているという売り方をされる。だが、「積立貯蓄や株式投資でも愛情を表現できる」のだ、と著者は厳しく指摘する。

著者によれば、生命保険は宝くじといっしょだ。保険料は宝くじの料金の分割払いで、自分が死ねば保険料、すなわち当せん金が入ってくる。宝くじも保険も、加入者がお金を受け取れるかどうかは、神のみぞ知るところだ。ただ、ポイントは、くじが外れた場合、つまり保険加入者が保険金を受け取らないままで契約を終了することは、何事もなく過ごせたことを意味するという点だ。むしろそれはありがたいことでもあり、生命保険は損をすることに意味がある宝くじであるといえるだろう。

保険のメリットは、契約直後に万が一のことがあっても満額の保険金が支払われるところにある。このメリットを活かせる人は一部である。たとえば子どもが幼く貯蓄の乏しい家庭は、わずかな支払いで生活を守ることができるだろう。

けれど、日本のような豊かな社会では、遺族は、夫婦どちらかの実家や親族から、経済的な援助を受けられることがしばしばある。遺族年金や死亡退職金も含めれば、なんだかんだやっていける場合が多いのだ。豊かな社会では、生命保険への加入は必須というわけではない。

宝くじとはそもそも、恐ろしく割の合わないギャンブルである。生命保険には、必要な時期に最低限の保険料で加入し、浮いたお金は将来のための投資に充てる、というのが賢い方策ではなかろうか、と著者は述べる。

民間医療保険の商売
sudok1/iStock/Thinkstock

生命保険会社の主力商品の一つに、医療保険がある。国の医療保険である国民健康保険を利用すると、医療費から基本的には7割を自費負担せずに済む。民間の医療保険は、医療費そのものを保険の対象としているわけではない。入院が長引いた場合に一日五千円から一万円の給付金が支払われ、ある年齢になると契約が終了するというタイプのものが多い。こちらは、医療保険という名前ではなく、「差額ベッド保険」もしくは「入院時の所得保証保険」とでも呼ぶべきではないか、というのが著者の見解である。

このごろは、高齢化社会に伴い、長生きするリスクが注目されるようになってきたので、生命保険を解約して医療保険に乗り換える人も多いのだという。それに対応し、保険期間に制限のない終身医療保険といった商品も登場し、入院一日目から最大二年間の入院期間にお金を給付するというものもある。

しかし、これは不思議な話だと著者は言う。

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要約公開日 2015.03.20
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