シャイな人やガードがかたい人、ボソボソとしか答えてくれない人。そんな人の重い口を開かせ、本音を引き出すにはどうしたらいいだろうか。
著者が意識しているのは「話を聞く場所」選びだ。「相手がリラックスできる慣れ親しんだ場所」、つまり「相手のホームグラウンド」で聞くことが重要だ。
たとえば大相撲では、千秋楽を終えた優勝力士がスタジオに生出演し、アナウンサーの質問に答えることがある。「しっかりした答えを言わねば」と気負う力士の周りには、かっちりとした雰囲気が漂う。
一方、力士にとってのホームは「相撲部屋」である。特に、稽古を終えて風呂から上がり、浴衣に着替えてちゃんこを食べているときはリラックスしている。著者はこのタイミングを狙って相手の「ホームグラウンド」に入って、話を聞く体制をつくっていた。
これを職場に置き換えると、上の立場の人が、部下を自分のデスクに呼び出すと部下は緊張してしまう。会議室などのかしこまった場所も然りだ。そんなときは、上司が自ら部下の席に出向いたり、自販機の前で立ち話をしたりと、相手がリラックスできる環境を選ぶといい。きっと相手は自然体で、本音を話してくれるようになるはずだ。
「顧客とちゃんと握れているのか」「握れていないのに提案するな」。
著者は営業マン時代、上司に何度となく「握る」という言葉を言われた。握るとは、相手が求めているものを「がっちり握ること」である。これができるか否かが、信頼関係の分かれ目である。
著者は新人の頃、「握る」の意味が分からず、必要な情報のみをヒアリングし、顧客の「想い」の部分までは聞けていなかった。しかし次第に、顧客の目標やチャレンジしたいこと、解決したい課題などを引き出せるようになり、それを一緒に「握る」存在となった。すると「田中さんに任せておけば安心」と信用してもらえるようになったという。
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