なぜ酔っ払うと酒がうまいのか
なぜ酔っ払うと酒がうまいのか
なぜ酔っ払うと酒がうまいのか
出版社
出版日
2025年03月17日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

お酒が健康に良くないのは分かってる。でもやめられない……。

そんなジレンマを抱えている酒の愛飲家は多いだろう。近年は、飲酒リスクを指摘する研究結果も発表されているため、余計に慎重にならざるを得ない。

しかし、お酒は本当に健康に良くないのか。体に毒なのに、なぜ“本能”は拒否しないのか。末永くお酒を楽しむには、どう付き合っていけばいいのだろうか――。

そんな疑問に応えるのが本書『なぜ酔っ払うと酒がうまいのか』である。累計21万部を越える人気シリーズの最新刊で、酒と体の関係性について、医師・研究者など専門家22名の知見をまとめた一冊だ。著者で酒ジャーナリストの葉石かおり氏は大の酒愛好家であるが、コロナ禍に「アルコール依存症」になりかけたり、逆流性食道炎を患って家飲みをやめたりと、飲酒に対する不安も抱えている。

本書ではそんな不安を解消すべく、お酒が体に与えるリスクやその対策を多方面から探っていく。たとえば、健康診断で肝臓の数値が悪かった場合。もちろんお酒の飲み過ぎも影響しているが、カロリーの高いおつまみやサプリメントも、数値を悪くしている可能性があるという。

本書を読むことで、これまでのように無邪気に飲めなくなるかもしれない。しかし、本書はただ警鐘を鳴らすだけの内容ではない。リスクを理解したうえで、お酒を楽しむ方法も紹介されている。お酒を愛する著者の言葉だからこそ、読者の心に素直に響いてくるはずである。

ライター画像
中山寒稀

著者

葉石かおり(はいし かおり)
1966年生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経てエッセイスト・酒ジャーナリストに。「酒と心身の健康」「酒と料理のペアリング」を核に執筆。2024年、京都橘大学健康科学部心理学科(通信)を卒業し、認定心理士の資格を取得。「一生健康で飲む」「酒育」をテーマに、各自治体や企業において社内研修や講演活動を行う。2025年より国税審議会委員に就任。主な著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』『名医が教える飲酒の科学』『生涯お酒を楽しむ操酒のすすめ』など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    「酒がうまい」と感じる理由は、味覚による情報のほか、生理的・精神的・習慣的な条件が影響している。
  • 要点
    2
    健康診断における「肝臓の数値」が悪いのは、酒の飲み過ぎが関係している。そのほかにも高カロリーのおつまみや“肝臓に良い”サプリメントも、肝臓の負担になっている可能性がある。
  • 要点
    3
    飲み過ぎは肌の老化を早めてしまう。1週間飲酒を控えたり、「特別な日」にだけ高いお酒を飲んだりして、減酒を心がけよう。

要約

【必読ポイント!】酒が飲みたくなる理由

酒はなぜうまいのか?

酒を「おいしい」と感じるのはなぜだろうか。

飲み始めたころは苦かったはずのビールも、「本当にうまい」と感じるようになる。健康に悪いと知りつつも、うまいから飲んでしまう。

著者は、食品の味を分析しているユーロフィンQKENの肥田崇氏に、酒のうまさの正体を聞いた。肥田氏によると、人間がおいしいと感じる味覚には五味(甘味、酸味、塩味、うま味、苦味)や渋味・辛味が関わっていて、これらのバランスによって食品の味が決まるのだという。

しかし、同じ酒でもおいしいと感じるときもあれば、イマイチなときもある。その理由は、食品を味わうときの生理的・精神的・習慣的な条件が味に影響するためだという。たとえば、空腹時は糖分が欲しくなるため、マンゴーサワーのような甘いお酒を飲みたくなる。一方、体が疲れているときはレモンサワーのような酸味が欲しくなる。

精神的な条件も関係する。人はストレスがたまると、苦味を欲する傾向があるそうだ。ビールのような苦みのある酒をおいしく感じるのは、そのようなときかもしれない。

飲み慣れている酒がおいしいのは、習慣的な条件に相当する。人は行動するとき「冒険して失敗したくない」というバイアスが働く。そのため定番の酒を選びがちで、それをおいしいと感じるのである。

酒は脳を解放する
JohnnyGreig/gettyimages

飲み始めは理性があるものの、酔ってくると歯止めが利かなくなり、飲みすぎてしまう。さらには、普段はやらないような奇行をしたり、暴言を吐いてしまったりすることもある。

このようなことが起きるのは、酔っ払うと脳の機能が低下してしまうからだ。普段は脳が言動の抑制をしているが、酒が入るとコントロールが利かなくなる。

自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介名誉教授によると、「脳とアルコールは、非常に相性が良い」のだという。これは一体どういうことだろうか?

脳には血液脳関門という“脳の門番”があり、有害物質をブロックしている。しかしアルコールは、血液脳関門をいとも簡単に通過してしまう。胃と腸で吸収された後、あっという間に脳に到達するのである。まるで脳はアルコールを歓迎しているかのようである。

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要約公開日 2025.04.27
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