MBAバリュエーション

日経BP実戦MBA2
未読
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著者
未読
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ジャンル
著者
出版社
出版日
2001年10月13日
評点
総合
4.0
明瞭性
5.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ニュースで企業買収が取り上げられるたびに、「なぜこの会社は〇〇億円という評価がついたのか?」と疑問に思うことはないだろうか。はたまた、株式投資に興味を覚える人であれば、「A社の株価がB社よりも高い理由は何か?」と思うこともあるだろう。本書はM&Aや株取引で値付けの根拠となる「企業価値」を評価する仕組みや方法について述べた一冊である。

本書の特徴は、とにかく企業価値評価の本質を分かりやすく解説してくれているところだ。私は外資系投資銀行に勤めていた経験から、本テーマについて述べた書籍を手に取る機会は多かったが、多くの専門書は数理ファイナンスの複雑な数式や会社法・金商法の条文が並んでいて初心者にはハードルが高いものが多い。一方、本書は初心者でも理解しやすいよう、文章や図表に工夫がみられ、財務戦略について議論するうえで必要十分な知識を授けてくれる。また、企業価値評価は理論だけでは語るに足らず、実は多分にアートな世界でもあり、それゆえに理論書を読んだだけでは実務に耐えられないことがある。本書は実務的視点からの補足も優れており、実用性も高い。

いまや財務戦略は限られた人だけのものではない。極論すれば、株式会社の経営者の存在価値はその会社の株式価値を向上させることにあると言えるし、いまや日本においてM&Aは企業を成長させるための有力な手段の一つだ。そういった意味で、企業価値の基礎を手軽に学ぶことができる本書は万人におすすめしたい貴重なものである。

ライター画像
苅田明史

著者

森生 明
1959年大阪府生まれ。1983年京都大学法学部卒。1986年ハーバード・ロースクール卒(法学修士)。日本興業銀行、米国投資銀行ゴールドマン・サックスにてM&A(企業買収)アドバイザー業務に従事。その後米国上場メーカーのアジア事業開発担当副社長、日系企業の経営企画・IR担当を経て1999年独立。現在は、上手国際法律事務所である西村総合法律事務所の経営顧問を始め、ベンチャー企業数社の経営顧問、M&Aアドバイスを担当。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業価値算定における、最低限知っておかなくてはならないツールとして「現在価値」「ディスカウントレート」「永久還元の定義式」の3つが挙げられる。
  • 要点
    2
    企業価値と会社価値(時価総額)は次の式で表すことができる。
  • 要点
    3
    企業価値(EV)=時価総額(MV)+ネット・デット
  • 要点
    4
    市場での評価を分析する場合、類似上場会社の財務データを用いた「倍率」という指標が用いられる。
  • 要点
    5
    企業を買収する場合、①類似会社比準方式、②類似取引比準方式、③ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)方式、という手法が用いられる。

要約

企業価値算定とは何か

企業価値算定のツール

企業価値とは一体どんな価値なのだろうか。さまざまな答えが考えられるが、経営や財務の用語としての企業価値とは、株主にとっての「投資価値」のことを指す。投資価値としての会社の値段は、それが生み出す利益または現金(キャッシュ)の多寡によって決まる。

企業価値算定において、最低限知っておかなくてはならないツールは3つある。「現在価値(Present Value、PV)」と「ディスカウントレート(Discount Rate、割引率)」、さらにその2つを使った「永久還元(または永続価値)の定義式(Present Value of Perpetuity)」だ。この3つの用語をしっかりと押さえておけば、経営財務上の諸問題の多くはその発展型として理解できるといっても言い過ぎではない。

現在価値とディスカウントレート
oksix/iStock/Thinkstock

10年後の100万円より今の100万円のほうが価値がある。金融資産には時間的価値があり、銀行口座に預金したり金融商品に投資したりすることでカネを産み出す、カネはそれ自体が金の卵を産むガチョウだからだ。

では、10年後の100万円と今の100万円はどれほど価値に差があるのか。これを計算するのが「現在価値」という考え方である。あなたが今持っている100万円の資金は、他の確実な投資に回すことによって向こう10年間確実に利益を出すと考えられる。もしあなたが100万円を何かの事業に投資するとすれば、最低でもそれと同額に増えてもらわねば割があわない。あなたは他の投資先とこの事業とを比較して投資を考えることになる。

もっとも支払いが確実な金融商品として通常引き合いに出されるのは、国が元利払を保証している国債である。仮に10年国債の利率が10%/年で変わらないとすると、あなたの100万円という資金は10年後に259.4万円になる。裏返せば、「10年後の259.4万円を年率10%で割り引く(ディスカウントする)と現在の100万円になる」と言い換えることができる。同様に、10年後の100万円をディスカウントレート(割引率)10%で割り引くと現在価値は38.6万円となる。

現在価値を計算する上で不可欠なディスカウントレートはリスクの程度を勘案して決まる。投資する側から見ると、このディスカウントレートとはリスクの程度に応じて期待すべき投資利回りであり、「期待収益率」という用語と同じ意味を持つ。

永久還元の定義式
『MBA バリュエーション ( 日経BP 実戦MBA2) 』よりflier 作成

もし国があなたに「子孫末裔まで、永久に毎年100万円を支払い続けるから、それと引き換えにいま税金として2000万円納めて欲しい」という提案をしてきたら、あなたは受けるだろうか。

一見お得な話のように聞こえるかもしれないが、これを現在価値の考え方を使って計算してみよう。(図表1参照)

すると、国の提案の現在価値はディスカウントレート10%で計算した場合、1000万円にしかならない。

一般型としての永久還元(永続価値)の定義式は、次のようなものになる。

PV(現在価値)=C(毎年のキャッシュフロー)÷r(ディスカウントレート)

この考えを元にすれば、企業価値算定の考え方を理解したも同然だ。国を会社に置き換え、毎年会社が一定のキャッシュフローを生み出すと考えれば良い。

また応用編として、もしCが毎年一定の割合で成長しつづけるとしたら(成長率をgとする)、永久還元の定義式は

PV=C÷(r-g)

となることも合わせて覚えておきたい。

企業価値と会社価値の違い
『MBA バリュエーション ( 日経BP 実戦MBA2) 』よりflier 作成

株価と会社の値段の関係を整理しておこう。株式とは会社の所有権を小口に細分化したものである。

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要約公開日 2015.04.10
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