ひとことの力

松下幸之助の言葉
未読
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松下幸之助の言葉
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ひとことの力
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2014年12月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

松下幸之助という人物が、一代でパナソニックを築き上げた経営の神様のごとき存在であることは、ほとんどの人がご存知だろう。本書は、側近として23年間仕えた著者が、二人の間で交わされた「話」や「言葉」をまとめたものである。いままで世に出ていなかった話も記されているため、大変貴重な資料であるともいえる。また、松下の大阪弁がそのまま書かれているため、″生の言葉″がそのまま力強く伝わる。経営者としての心構えや仕事の進め方などはもちろんのこと、松下の私生活や人柄に触れることができる内容だ。

松下の生涯は苦労と、感謝の思いで成り立っていた。苦労を知っているからこそ、諦めない心や周囲の人間を大切にすることの重要性を人一倍認識していたに違いない。そのような彼の人柄に惹かれたたくさんの社員が、松下のためなら、と本来持っている以上の力を発揮した。経営者とはこうあるべきだという姿が現実のエピソードとともに分かりやすくまとめられている一冊である。50の言葉が一つずつ解説されているため、それぞれの章で完結しており読み進めやすい。

著者は27歳から松下の側で仕事をした。若くて経験も少ない著者に、松下が一つひとつ丁寧に仕事を教えたことも記されている。仕事の進め方や心の持ち方など、経営者を目指す者のみならず、今がむしゃらに仕事に取り組んでいる20代や30代の人にも参考になる内容である。

著者

参議院議員。経済学博士。1940年(昭和15)年2月1日、名古屋生まれ。愛知県立瑞陵高等学校、慶応義塾大学法学部政治学科卒業。松下電器産業株式会社入社後、昭和42年PHP総合研究所へ異動。秘書室長、取締役、常務取締役を経て、昭和57年同研究所専務取締役、平成6年同研究所副社長、平成16年同研究所社長に就任。平成21年退任。その間、松下幸之助のもとで23年間、側近として過ごす。その後、執筆・講演を中心に活動していたが、平成22年7月の参議院議員選挙に「地域主権型道州制」の政策を掲げ、出馬、当選。松下幸之助に関する多数の著作がある。松下幸之助の継承者、伝承者と評されている。それゆえ、松下幸之助研究に関する講演依頼も多い。また、松下幸之助の主張した「廃県置州論」を発展させ、「地域主権型道州制」を提唱。国会では、超党派の「道州制懇話会」の協同代表などを歴任。各地で「地域主権型道州制」の講演、啓蒙も行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    経営者一人の力には限界がある。優秀な部下を育て、徳を持って接することが重要である。いかなる時も、懸命に働いている部下のことを思い、感謝の気持ちを忘れてはならない。
  • 要点
    2
    成功するためには努力を惜しんではならない。若いときに買ってでもした努力は、実力に結実し、人としての深みをももたらす。
  • 要点
    3
    10年後、20年後の先を見た仕事をすること。例え行き詰まったときも、決して諦めてはならない。必ず道はあると信じることにより、知恵が生まれてくるのである。

要約

松下幸之助の人柄

心の中で手を合わすように
DAJ/Thinkstock

松下幸之助は感謝するという気持ちを商売の原点としていた。

松下は20代の頃、当時は不治の病と言われていた肺結核の前兆である病にかかった。明日の命が分からない時を過ごした松下は、多くの人や物によって生かされている現実を知り、感謝の気持ちを人一倍感じていたに違いない。

松下は、常に自分の会社で働く部下や社員に、「みんなよう、やってくれる」と感謝の気持ちを持っていた。そして、社員のみならず、「道行く人全てがお客様」、つまり、この世のすべての人に「お客様」と思うほどの感謝を抱いていた。部下を叱るときも、日ごろの苦労に感謝をして心の中で手を合わせるように叱責すると言っていた。松下の94年の生涯は「感謝の気持ち」に貫かれていた。

あとは、わしにまかせておけ!

著者は松下の側で23年ほど仕事をした。27歳から36歳まではPHP総合研究所で秘書として、その後70歳までは実質的経営担当者として。秘書をやっていたときも注意を受けることはあったが、経営担当者になってからは叱責を受けるようになり、それは時に著者が卒倒するほど激しいものであった。松下は仕事を与える時に考え方や基本方針などを示したが、著者がこれに沿わずに失敗すると厳しく叱った。

しかし、方針に沿って失敗した時は「心配せんでいい、あとはわしにまかせておけ!」とよく言ってくれた。その言葉に著者は毎度感動し、方針に沿うことが知らず知らず身についたという。

自主自立の心持ちが、大事やね

松下が生まれたとき、家は資産家であった。しかし、父親が米相場に手を出して失敗してからは、全てを売却し一家は離散した。奉公に出された松下は一人で生きていかざるを得なかったため、常に孤独と戦い自主自立の精神を身につけていった。

経営を担う松下電器が発展途上のときも、彼は国や政府などの他者に助けを求めることはなかった。松下電器はただお客様と社会だけを見つめながら、大きく発展したのである。松下はよく、「自主自立が大事やね。誰とも仲良くするけど、誰にも頼らんという、そういう心持ちが大切や」と言っていたという。

PHP研究所はずっと松下電器におんぶに抱っこの経営を続けてきたが、著者が経営担当者になってから4年ほどで、一切の援助を断った。周囲は反対する者ばかりであったが、自立することを唯一松下だけが喜んでくれたという。

仕事は熱心に取り組み、努力を欠かさない

汗の中から知恵を出せ
FlairImages/iStock/Thinkstock

著者は松下といるときふと、ある雑誌の経営者インタビュー記事の写真を思い出した。経営者の後ろの壁に、大きな字で「知恵を出せ。それができない者は汗をかけ。それが出来ぬ者は去れ」と書かれており、なるほどと感心したと松下に話した。すると松下は「その会社は、きっと潰れるで」と予言し、実際に役に立つ知恵は、動いて汗を流して、そうして生まれてくるものだと述べた。

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要約公開日 2015.04.21
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