多くの女性は仕事上の駆け引きを避けようとする。しかし、ビジネスは勝者と敗者のいる試合なのだ。ルールを理解して、自分の望む方向にことが運ぶように考え、行動しなくてはいけない。そして、そのルールは組織や部署によって違うため、場所が変われば新しいルールをつかんで仕事に臨む必要がある。「上司に逆らわない」、「主張の正しさより礼儀正しさのほうが重要」といった、その職場で期待される暗黙のルールを一覧にし、自分の普段の言動と比較してみるとよい。
一方、つねにルールを厳守し、安全な試合ばかりしていると、卓越した仕事はできない。リスクを負ってでも主導権を発揮して、求められている以上の仕事に挑戦することもときには大事である。たとえ注意されてもすぐに安全策に後戻りせずに、「これは大胆なプレーの仕方を学ぶチャンス」だととらえよう。
「女性は男性の二倍働いて、ようやく男性の半分の価値を認められる」という言葉があるせいか、女性はアリのように働く傾向がある。しかし、必死に働いただけで昇進する人はいない。好感を持たれ、戦略的な考え方ができ、情報網を持ち、うまく共同作業ができるといった要素がそろって初めて、実り多いキャリアを築けるのだ。例えば、女性が浪費と見なしがちな雑談の時間に、男性たちが仕事に役立つ人間関係を築き、ビジネスのチャンスを手に入れていることも多い。成功の秘訣は、雇用や昇進の意思決定者に、仕事の能力だけでなく、人となりやコミュニケーション能力も認めてもらうようにすることだ。少しの時間を「浪費」する余裕を持ち、一日の就業時間の5%を人間関係づくりに充ててみよう。
また、女性は「私がやらないと誰もやらないから」と考えて下働きまで引き受けてしまうケースが多い。しかし、昇進は、成し遂げられた仕事の結果に対する報酬であり、やみくもに働いても評価されることはまずない。目立たない、さほど重要でない仕事まで買って出るのをやめることを心がけよう。あなたに仕事を押しつけようとする人に対しては、はっきり断る練習をすることだ。
「油は軋む車輪にさされる」という諺があるように、自分から求めなければ、ほしいものは手に入らない。ところが、女性は得てして要求が大きすぎると思われるのを恐れて黙りがちだ。アメリカの平均的な女性は、同じ地位の男性より28%も収入が少ない。女性差別の側面もあるが、女性が権利を主張しないのも原因の一つだと著者は考えている。
ある女性は、部署内で自分だけが特別賞与をもらえなかったのは、自分が評価されていないからではと気をもんでいた。彼女は「自分に特別賞与を受ける権利があるか」を尋ねようとしたが、著者は「賞与を受ける権利を前提として、いつ受け取れるのかを訊くべきだ」と助言した。助言にしたがって尋ねたところ、特別賞与の未支給は人事担当者の過失のせいだったことが発覚する。この実例は、自分に否定的な説明をでっちあげるよりも事実をつきとめることと、与えられて当然のものは自ら要求することの重要性を教えてくれる。
社内政治はどんな組織にもつきものであり、参加を避けていると職場で孤立してしまう。
社内政治で重要なのは、人間関係と見返りの構造を理解することである。
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