TEDトークの主な使命は、聴衆にこの世界をより良くする行動を起こしてもらうことだ。広める価値のあるアイデアをうまく表現するには、聴衆がなんらかの行動を起こしたくなるように、「○○になるように(何らかの結果をもたらすように)△△をする(行動を起こす)」というフォーマットを使うとよい。例えば、経営理論家のカリスマ、サイモン・シネックは「リーダーが部下をインスパイアできるように、WHYから始めることの意義を知ってもらおう」と語った。提案する小さな行動は、ほとんど費用をかけずに素早く楽に実行できるものでないといけない。
トピックを選ぶには、スピーチ終了時に聴衆にどうなってほしいかという「目的地」を明確に描き、自分の心の中をじっくり観察することが必要である。そして、聴衆に伝えたいメッセージを一つ選び、そのメッセージに情緒的な深みを添える経験はないかと頭の中を捜しまわるのだ。重要なのは、核となるアイデアをはっきりと認識し、一つに絞ることである。一度のトークに一生分のうんちくを詰め込んではいけない。アイデアの寄せ集めはスピーチ全体のインパクトをかえって弱めてしまうからだ。あなたが情熱を注げるトピックをワクワクしながら語ることができれば、聴衆にインスピレーションの種を一粒蒔くことができる。トークの目的が「聴衆に何かを与えるため」であることを肝に銘じよう。
トークの構成には「ストーリー主導型」と「前提主導型」の二種類がある。前者は、プレゼンターが一つのストーリーに沿ってトークを進め、通常、自らの体験談を一人称で語るというタイプである。一方、後者は、プレゼンターが自身の主張をいくつかの構成要素に分けて順に明らかにしていくタイプである。TEDは極上のストーリーテリングが聞ける場として高い評判を得ているが、実際にはほとんどのプレゼンターが「前提主導型」のトークを繰り広げている。
TEDトークに許された時間(18分)をフルに使うには、最初に伝えたいアイデアを明かすことをお勧めする。自分のアイデアが広める価値のあるものであることを立証するには、論理のスムーズな流れを作らなくてはいけない。重要なのは、まず聴衆の心に疑問の種を植え付け、聴衆が答えを知りたがっている疑問にただちに答えることだ。
説得力に優れた名プレゼンターの多くは、導入部、3部構成の本論部、締めくくりの5つの要素から成るスピーチに、証明材料と前提を何層にも組み込み、うまく溶け込ませている。良いスピーチは、アイデア・前提・証明の3つがそろっている必要がある。人の心を動かす証明材料を提示するには、ストーリーだけでなく、統計(数値)や引用、実例、仮定の状況といった形態を使うことができる。
広める価値のあるアイデアは、語る価値のあるストーリーの中で伝えたいものだ。では、どんなストーリーを語ればよいのだろうか?
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