雑誌「プレジデント」編集部が年収1000万円以上のビジネスパーソン679人に調査したところ、43.8%という約半数が「落語が好き」と回答している。なぜ落語をよく聴く人の中に成功者が多いのか? ビジネスエリートは「笑い」を大切なスキルとして捉え、落語を聴くことで養ったユーモアのセンスをビジネスにおけるコミュニケーションに活かしているからだ。落語の笑いは「人間を肯定する、上質な笑い」だからこそ、コミュニケーションの武器として応用できるのである。
落語は意外な力を磨いてくれる。例えば、落語を聴いていると、「起承転結」や「序破急」といった文章構成の型が身につき、自然と論理的な文章力が養われる。また、落語には脳を活性化する効果もある。落語家の言葉という聴覚情報から、花見や花火見物と言った江戸の情景や、夫婦のやり取りなどを「想像」することで、自然と脳が鍛えられていくというわけだ。さらに、落語は「スマートさ=粋」を教えてくれる。落語では、困っている家に「ちょっとつくりすぎたから食べて」と食事を差し入れるような「粋なはからい」ができる人が大勢登場するからだ。こうしたスマートさを持った人が信頼され、頭角を現していくのは当たり前だといえよう。
学校では学べない「生きる知恵」を落語から得ることで、人間としての幅を広げることができる。立川談志師匠は著書のなかで「落語は業(理性によって制御できない心の働き)の肯定」だと述べている。虚栄心や怠け心、意地っ張りなどに突き動かされた登場人物から、「人間とはそんなもんだ」と軽やかに笑い飛ばせるところに、他の芸能にない落語の真髄があるといえる。こうして、ありのままの自分を肯定し、信頼できるようになる。さらには、自分を肯定できるがゆえに、異なる考えの人や要領の悪い人といった多様性を包み込む「懐の深さ」が養われていき、それがビジネスシーンでの成功確率をも高めてくれるのだ。
落語家修行 は理不尽の連続である。しかし、師匠はどれだけ理不尽な態度をとっても、弟子を一人前にするために力を尽くしてくれる。
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