ユダヤ式Why思考法

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ユダヤ式Why思考法
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2015年05月17日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

Googleの創立者ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Dellのマイケル・デル、Microsoftのスティーブ・バルマー、Intelのアンディー・グローブ。金融、証券、ハリウッド、IT業界における、世界の名だたる企業の創立者は、その半分以上がユダヤ人である。そして、アインシュタインをはじめ、ノーベル賞受賞者の3~4割はユダヤ人が占めている。ユダヤ人がこれほど卓越した知的生産力を持ち、偉業を成し遂げられるのはなぜなのか? それは、ユダヤ人が議論好きで、「なぜ?」を徹底的に考えつくす民族だからである。

本書では、ユダヤ人が議論によってどのように思考力を鍛えてきたのかが、「34のトレーニング」とともに紹介されている。そして、ユダヤ人が幼い頃から親しんできた、ヘブライ聖書の論点集である「タルムード」をもとに、ユダヤ人が普段行っている議論の一部を再現している。本書を読み進めるうちに、ユダヤ人の論点の見つけ方や、思考の枠の外し方、冷静に問題を見据える方法、発想の逆転、本質のつかみ方などについて、その勘所が自然とつかめるはずだ。

難関の試験を経てユダヤ教に改宗した著者は、場の空気を読もうとするあまり、革新的なアイデアを生み出す機会を失っている日本人に警鐘を鳴らし、「まずはあらゆることに疑問を持ち、質問しよう」と提案する。ユダヤ式の「思考トレーニング」を実践して、世界水準の思考力を目指してみてはいかがだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

石角 完爾
1947年京都府生まれ。京都大学在学中に国家公務員上級試験、司法試験に合格。同大学を主席で卒業後、通商産業省(現・経済産業省)を経て弁護士に。ハーバード大学ロースクール修士号取得、ペンシルバニア大学ロースクール証券法修了。1978年ハーバード大学法学校博士課程合格。ニューヨーク、ウォールストリートの法律事務所シャーマン・アンド・スターリングを経て、現在、東京の千代田国際経営法律事務所所長、代表弁護士。ベルリンのレイドン・イシズミ法律事務所代表。国際弁護士としてアメリカ、ヨーロッパを中心にM&Aのサポートなどで数多くの実績がある。2007年、難関の試験を経てユダヤ教に改宗し、ユダヤ人となる。米国認定教育コンサルタント。スウェーデン在住。著書に、『ファイナル・クラッシュ』(朝日新聞出版)、『お金とユダヤ人』(SBクリエイティブ)、『日本人の知らないユダヤ人』(小学館)、『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』(集英社)等多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    画期的なアイデアを実現してビジネスで成功する人がユダヤから多く輩出されるのは、何事にも疑問を抱き問いかける姿勢と、それによって生まれる議論好きの態度にある。
  • 要点
    2
    ユダヤ人は論点を見つけ出すのがうまい。さまざまな角度からの疑問を投げかけながら、ヘブライ聖書と「タルムード」をじっくりと読み進める習慣があるからだ。
  • 要点
    3
    ユダヤ人は、宗教戒律などの制約があったために、必然的に効率を追求し、最も頭を使うスタートアップや企画立案や経営戦略に特化するようになったといえる。

要約

【必読ポイント!】 思考停止状態から脱出せよ!

すべては「なぜ?」から始まる

ユダヤ教の最も重要な教義は「質問」することである。天才物理学者ミチオ・カクは6歳の時から先生の教えや聖書の記述ひとつに「それってどういうこと?」と疑問を持ち、質問を投げかけていたという。「なぜ?」という疑問がすべての思考の着火点である。

しかし、日本の学校や家庭は、子どもの疑問を引き出すような環境とはいえない。子どものどんなに突拍子もない質問にも「それは面白い質問だね」と耳を傾け、一緒に考えられるかどうかが、子どもの思考力の育成のカギを握っている。

思考停止に陥っていないか
ferlistockphoto/iStock/Thinkstock

「水はなぜ透明なのか?」と尋ねられたときに、「水とはそういうものだ」と議論をシャットアウトするのは、まさに思考停止である。思考停止は組織の硬直化や停滞を招く。

思考停止を脱却する方法は、自分を取り巻くあらゆる事柄、特に社会的に対立する問題点を議論の対象にすることだ。例えば、「イスラム教はそもそも平和な宗教か」、「ノーベル賞が少ないから中国人は日本人より劣る民族か」といったテーマである。社会的に公に議論しづらいことを議論する理由は、多数意見と少数意見が明確に分離し、議論が白熱しやすく、思考が働くからである。

Googleの創業者ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンやFacebookのマーク・ザッカーバーグのように、画期的なアイデアを実現してビジネスで成功する人がユダヤから多く輩出されるのは、何事にも疑問を抱き問いかける姿勢と、それによって生まれる議論好きの態度にある。

また、常識や世論、業界の慣例、権威による発言など、疑いなく受け入れたり同調したりしがちな事柄にこそ疑いの目を向けるべきだ。鵜呑みにすれば、新たな気づきや発見が得られないばかりか、認識や解釈の間違いにも気づけなくなってしまう。マスコミでの報道や世の中の多数意見に対しては、自分で調べ、検証するのを怠らないようにしよう。

論点主義の起源
MSHaughwout/iStock/Thinkstock

ユダヤ人は、論点を見つけ出すのがうまい。話すときも単刀直入で、主旨が明確である。この論点主義は、子どもの頃からの教育や習慣によるところが大きい。ユダヤ人は、常に論点を意識しながらヘブライ聖書を読む習慣がしみついている。15歳になると宗教学校でヘブライ聖書と、その注釈論点集である「タルムード」を勉強する。

例えば、聖書の冒頭にある「At the first God made the heaven and the earth.」の「At the first」が意味する「始めに」とは何の最初なのかという問いについて、生徒が1対1で1日議論することも珍しくない。「At the first」が意味するところをさまざまな角度から議論することで、自分が誕生した意味に迫ろうとしているのだ。聖書の読み方で特筆すべきなのは、さまざまな角度からの疑問を投げかけながら、一言一句に時間をかけて読み進めている点だ。

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要約公開日 2015.06.23
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