通常、事業を失敗すると信用を失うと思われがちだが、中国では倒産や廃業の経験者はその未経験者よりも優遇されるという。また、華僑は最後には必ず成功するという強い意志があるため、「途中経過」の失敗を問題視しない。グローバル時代の現在、可能性にかけてスピードで制するほうが成功に近づきやすい。途中の計画修正をミスと捉えず、修正に気づくのは成長の証と前向きに受け取りたい。
そして「富と貴(=お金と地位)」が欲しいとはっきり認めること。親族に恥をかかせない商売をして、社会にお金を回すのが商人の価値と華僑は考える。彼らは時給の高い3Kの仕事で貯金して、粗利額の大きい「儲かる」ビジネスで基盤を作り、その後初めてやりたいビジネスに着手する。また、粗利益は知識による付加価値が源泉となるため、知らない分野をビジネスにしないことがセオリーだ。
このように華僑にとって「お金は自分の能力の証」である。その原動力となるハングリー精神はリアルな目標が支える。今後の人生に必要な金額を具体的に算出してイメージし、理想と現実のギャップを仕事で埋めるのである。「イメージできないことは永遠に実現しない」ため、自分で自分を「その気」にさせることが良い。
また、経営資源とされる「ヒト・モノ・カネ・情報」だが、起業当初は自分の頭と体しか持っていないもの。そんな時こそ外へ出て「人に使って」もらい、自分の価値を認めてもらうことでチャンスとお金を得るのが華僑流だ。また、起業当初は時間とお金の価値を等しく考え、ハイペースで長時間も厭わず「人がお金を使っている時にお金を稼ぐ」のも華僑らしさである。成功の鍵は最初のスピードアップ。事業基盤ができる2年間に勝負をかけることで軌道に乗せ、あとは慣性の法則で事業が回るという考えだ。
人付き合いに損得は関係なく「偶然ではなく、すべて必然」で、天が計算してくれるという考えも華僑らしさだ。例えば、合わない人は相手にしないのが一番だが、敵に回さないために争わず譲るのが華僑だ。目の前の小さなお金や地位はさっさと譲り、その代り、その人の美点を盗んで自分に活かす方法は、感情に流されず論理的に割り切る華僑の合理性だろう。
新たな人脈作りには、数名の人脈豊富な人とWinWinの関係を築くのが早道だ。相手が自分よりレベルが高い場合、最初から対等を目指さず貸し借りを行って「借り」を作って返す機会を得よう。借りの返し方は相手の欲しい情報や人の紹介など様々であり、少しの工夫で関係性は長続きする。日本人なら借金は抵抗を覚えるだろうが、人から借りられることもまた信頼力と割り切り、堂々と借りてそれ以上に返す気概を持とう。
また、華僑社会では会食の場でいきなり見知らぬ人を紹介されるサプライズがある。初対面での質問責めは日本では失礼だが、中国では逆だ。相手に興味を持って訊き、その家族や親族、友だちの職業まで詳しく覚える姿勢を見習いたい。相手の周囲の人脈にまで気を配り、縁を大事に情報のストックを心掛けるのだ。
チャンスを逃さないためにも、スケジュールは埋めず、社内ミーティングや友人との会合等は時間変更が可能な「ゆるアポ」を心掛けよう。いつでも「偉い人に呼ばれる」ための余地を残しておくのがベターだ。
華僑流ビジネスには欠かせない三大要素は「アイデアを出す人」「お金を出す人」「作業をする人」で、この「トライアングル経営」で「プロジェクトごとに人材を集めてチームを作る」ことが大前提だ。日本では「自分の考えたビジネスプランを自己資金で起業し、初期は実務作業も自分でやる」パターンを多く目にするが、華僑にいわせれば「間違いなく失敗する最悪のパターン」だという。
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