つくし世代

「新しい若者」の価値観を読む
未読
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出版社
出版日
2015年03月15日
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おすすめポイント

広告やマーケティングで、「若者」の心を捉えるにはどんな提案をしたらいいのかと考えている方は、ぜひ読んでみてほしい。

かつてと違って、若者の流行や文化がマスコミ発信で作られるものではなくなった今、若者向けの広告やマーケティングはとても難しい分野になってしまった。広告代理店で長くマーケティングを担当していた著者は、マーケッターとして若者研究を進めるうちに「上から」の調査に限界を感じ、若者たちといっしょに彼らの世界について調査分析をすることにしたという。本書は、その組織、ADK若者スタジオ――通称ワカスタでの研究成果に基づくものである。

「センベロ酒場」(千円でべろべろになるまで酔える居酒屋)、「ウィル彼」(まだ彼氏でないけれど、その気になればつきあえそうなくらい仲良しの男子)といった新語を、みなさまはご存じだろうか。著者は、とりわけ30代以下の現代の若者に特徴的な事象を解説しつつ、彼らに共通する価値観を探り、効果的なマーケティングアプローチを提案する。そして、「ゆとり」「さとり」というくくり方の先にある、今まさに若者たちのあいだに芽生えつつある傾向を浮かび上がらせる。

本書で得られる知識は、直接的にビジネスそのものに活かせるだけでなく、職場で若い世代と接するときにもおおいに参考になるだろう。彼らを理解することで、彼らと向き合うときどんなスタンスをとればいいのか、きっと見えてくるはずだ。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

藤本耕平
1980年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業。2002年、株式会社アサツー・ディ・ケイ(ADK)に入社。入社時からマーケティング業務に従事。トイレタリー、化粧品、スポーツ、金融、飲料業界などジャンルを問わず様々な企業のコミュニケーション戦略、商品開発などに携わってきた。2010年から若者研究を開始。ADK若者プロジェクトリーダー。2012年、情報感度の高い学生メンバーで構成する若者マーケッター集団「ワカスタ(若者スタジオ)」を創設。学生と共同で若者向けの商品開発やキャンペーン開発などを行う。外部セミナーの講演や新聞・雑誌記事連載、大学客員講師などの活動も行っている。【受賞歴】カンヌ国際広告際2010、スパイクスアジア広告祭2011ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    今時の若者たちのマインドには、積極的につながりを求める「つながり願望」、お金を使わないことに意義を見出す「ケチ美学」、不確かな将来より今の充実を重視する「せつな願望」などがある。
  • 要点
    2
    そうしたマインドを持った若者たちは、面白いネタやお得な情報は積極的にシェアし、みんなで楽しめる行動を積極的にとる。そして、そこから得られる感謝のレスポンスを喜びとしている。こうした彼らの奉仕の精神に着目し、著者は「つくし世代」と彼らを呼ぶ。

要約

今時のマインド

つながり願望――支え合いが当たり前じゃないからつながりたい
John Howard/Digital Vision/Thinkstock

今時の若者の価値観、マインドとして、著者は5つを挙げている。「チョイスする価値観」「つながり願望」「ケチ美学」「ノット・ハングリー」「せつな主義」だ。

「チョイスする価値観」とは、「自分のものさし」で世の中にあるものをはかり、その中から自分のフィーリングに合うものを選び、「自分らしさ」を完成していこうとするマインドだ。「ノット・ハングリー」は、物の不足を感じず、異性との関係にもそれほど抑圧なく過ごしてきたからこその、何ごとにもガツガツしない姿勢を指している。

ここでは、残りの3つを少し詳しく紹介する。まず、「つながり願望」から見てみよう。

今時の若者にとっての「宅飲み」はイベント化される傾向にある。自宅でパーティーをするピープルの略で、「自宅パリピ」という言葉もあるそうだ。みんなでたこ焼きをつくる「たこパ」、かまぼこをつくる「かまぼこパ」というふうに、仲間と盛り上がって「つながり感」を味わえるイベントを若者たちは盛んに行っている。

このようなイベントは、SNS、フェイスブックなどに載せられることになる。だから、イベントが写真映えするかどうか、つまり「フォトジェニック」という要素も重要になってくる。

今時の若者は、共働き世帯が半数以上を占め、核家族化も進んだ時代に幼少期を過ごした。求めなければつながりを得にくいということを身にしみて感じていたために、つながりを求めることに積極的なのではないか、と著者は背景を分析する。

この「つながり願望」を刺激してマーケティングを成功させている事例に、キリンビールの「フローズン〈生〉」がある。ソフトクリームのような形の凍った泡のかたちが楽しい「フローズン〈生〉」は、SNSにアップしたくなるようなフォトジェニックな商品をつくるという発想から生まれた。「面白いものを見つけたよ」と仲間と共有し、盛り上がれるような要素が、商品をヒットに導いたのではないかと著者はいう。

ケチ美学――「消費しない」ことで高まる満足感
VladislavStarozhilov/iStock/Thinkstock

「お金を使わない」ということがポジティブなことと捉えられ、美学にすらなっているのが今時の若者の価値観である。若者に「お金をかけたいものは何か」という調査を行うと、トップにくるのが貯金なのだという。

「レンタル高級品」がはやるのも、「イエナカ消費」が盛んになるのも、お金はできるだけ使わないという彼らの価値観を反映している。「カーシェアリング」や「シェアハウス」は「ケチ美学」+「つながり願望」のあらわれだといえるだろう。

こうした傾向が生まれたのは、消費意欲が芽生える中学生、高校生の時代にデフレ社会を経験し、贅沢は悪と感じて育った若者が多いためだ、とよく言われる。著者もその見方に賛同している。

「ケチ美学」を持つ若者たちに向けたマーケティング戦略としては、コストパフォーマンスがよい商品であることはもちろん、お金を使うだけの良い理由があると感じてもらうことが重要である。

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要約公開日 2015.08.12
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