今時の若者の価値観、マインドとして、著者は5つを挙げている。「チョイスする価値観」「つながり願望」「ケチ美学」「ノット・ハングリー」「せつな主義」だ。
「チョイスする価値観」とは、「自分のものさし」で世の中にあるものをはかり、その中から自分のフィーリングに合うものを選び、「自分らしさ」を完成していこうとするマインドだ。「ノット・ハングリー」は、物の不足を感じず、異性との関係にもそれほど抑圧なく過ごしてきたからこその、何ごとにもガツガツしない姿勢を指している。
ここでは、残りの3つを少し詳しく紹介する。まず、「つながり願望」から見てみよう。
今時の若者にとっての「宅飲み」はイベント化される傾向にある。自宅でパーティーをするピープルの略で、「自宅パリピ」という言葉もあるそうだ。みんなでたこ焼きをつくる「たこパ」、かまぼこをつくる「かまぼこパ」というふうに、仲間と盛り上がって「つながり感」を味わえるイベントを若者たちは盛んに行っている。
このようなイベントは、SNS、フェイスブックなどに載せられることになる。だから、イベントが写真映えするかどうか、つまり「フォトジェニック」という要素も重要になってくる。
今時の若者は、共働き世帯が半数以上を占め、核家族化も進んだ時代に幼少期を過ごした。求めなければつながりを得にくいということを身にしみて感じていたために、つながりを求めることに積極的なのではないか、と著者は背景を分析する。
この「つながり願望」を刺激してマーケティングを成功させている事例に、キリンビールの「フローズン〈生〉」がある。ソフトクリームのような形の凍った泡のかたちが楽しい「フローズン〈生〉」は、SNSにアップしたくなるようなフォトジェニックな商品をつくるという発想から生まれた。「面白いものを見つけたよ」と仲間と共有し、盛り上がれるような要素が、商品をヒットに導いたのではないかと著者はいう。
「お金を使わない」ということがポジティブなことと捉えられ、美学にすらなっているのが今時の若者の価値観である。若者に「お金をかけたいものは何か」という調査を行うと、トップにくるのが貯金なのだという。
「レンタル高級品」がはやるのも、「イエナカ消費」が盛んになるのも、お金はできるだけ使わないという彼らの価値観を反映している。「カーシェアリング」や「シェアハウス」は「ケチ美学」+「つながり願望」のあらわれだといえるだろう。
こうした傾向が生まれたのは、消費意欲が芽生える中学生、高校生の時代にデフレ社会を経験し、贅沢は悪と感じて育った若者が多いためだ、とよく言われる。著者もその見方に賛同している。
「ケチ美学」を持つ若者たちに向けたマーケティング戦略としては、コストパフォーマンスがよい商品であることはもちろん、お金を使うだけの良い理由があると感じてもらうことが重要である。
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