ダイバーシティマネジメントとは、多様な属性や価値観などを持った人材あるいは人材の多様性を活かせる組織の構築を目指すことだ。その目的は、企業経営の活力や創造性を高めることである。
日本企業は、「日本人、男性、フルタイム勤務、残業可能、転勤可能」である人材を「適材」として、人材活用の仕組みがつくられている。そのため、「適材」に該当しない社員は能力開発や能力発揮の機会を与えられない。「適材」に該当する人が減少する今、女性や時間・勤務地の制約がある人材、多様なライフスタイルを選択している人材が活躍できる組織への改革が不可欠になっている。
2013年6月に閣議決定された成長戦略では、「女性の活躍推進」が打ち出された。「指導的地位(民間企業では課長相当職以上)に女性が占める割合を、2020年までに少なくとも30%とする」という政府目標と、企業の現状には、大きなかい離がある。目標達成のためには、企業総覧に管理職数が男女ともに記載された814社に絞っても、2020年までに2012年の約6倍の女性管理職を育成、登用しなければならない。しかし、女性管理職登用の現状は企業ごとに大きく異なるため、一律にすべての企業が上記の目標を達成することは厳しいだろう。そこで、自社の女性活躍の現状を踏まえ、女性の採用にくわえ、担当職、主任、課長などの各キャリア段階での女性の定着、育成を積極的に進めることが重要である。
企業が女性の活躍を推進する際、何よりも重要なのは、女性活躍の重要性を組織のメンバーで共有することである。トップがこの問題に強くコミットし、その姿勢を明確に発信することが不可欠だ。例えば、ダイバーシティ経営を進めている日産自動車では、カルロス・ゴーンCEOが、行動指針や人事評価、人材配置にもダイバーシティの概念を組み込み、その価値を組織に浸透させてきた。人事戦略に関わる取り組みは、トップの強力なリーダーシップのもと、トップダウンで進めることがカギである。
そのうえで、女性の就業意欲を向上させる取り組み(意欲向上策)と、就業継続が可能な働き方への変革を進めること(両立支援策)を「車の両輪」として同時に進めていかなければならない。
女性が管理職に登用されない背景には、女性が昇進を望まないという実態がある。それは、管理職になると「男性並みの働き方」が要求されるという現状があるからだ。現に、育児休業制度や短時間勤務制度の利用者には、責任のある仕事を任せにくい、異動をさせにくいということで、キャリア形成にマイナスの影響が及び、女性本人も仕事へのモチベーションが低下してしまうという例は多い。
女性の活躍推進のためには、男性正社員の働き方そのものを問い直すことが重要な課題となる。長時間労働を前提とした日本の働き方を変えないことには、育児や介護責任を担う従業員や、個人のライフスタイルを重視する外国人にとっても魅力ある職場にはなり得ない。また、長時間労働を評価または容認する風土があると、働く人のモチベーションや生産性は低くなる。さらには、非効率な業務遂行プロセスに対する課題認識が甘くなり、無駄なコストがかかってしまう。
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