なんらかの知的生産を行うとき、何から手をつけるべきかというと、それは「知的生産の戦略策定」である。知的生産によって付加価値を生み出すためには、自分の知的生産物を他の知的生産物とどのように差別化するか、特に「顧客がすでに持っている知識との差別化」が最も重要になる。
顧客の知らない「新しさ」を出すには「広さ」と「深さ」の2つの方向性がある。具体的には、顧客がまだ気づいていない問題を指摘し、問題意識を外に広げるのが「広さ」であり、顧客が抱えている不満について、今まで分からなかった原因を明確化することができればそれは「深さ」である。その方向性によって集めるべき情報が変わるため、情報収集に入る前に、どちらで勝負するのかを最初に整理することが重要である。
情報収集に入る前に明確化すべきポイントは3つあり、「ターゲットとなる顧客は誰か」「求められている知的生産物のクオリティ」「使えるリソース(時間・お金・人手)」である。顧客があいまいなままターゲットを広げて作られたメッセージは切れ味を失ってしまうし、顧客が知りたがっていることのクオリティと、使用できるリソースから得られるもののバランスが取れていなければ、まず顧客との調整が必要になる。
知的生産における成功・失敗は、その知的生産物のクオリティで決まるのではなく、顧客の期待値と実際の成果物とのギャップで決まるため、初期段階においてこれらを明確化しておくことが重要なのである。
ホワイトカラーが知的生産を行うに当たって活用できる情報ソースは大きく分けると「社内資料」「公開資料」「社内の関係者インタビュー」「社外の関係者インタビュー」であり、必要な情報に合わせてこれらを使い分けることが必要となる。市場規模や他社の業績などの定量的・統計的な情報については公開資料で手に入ることが多く、自社の強みと弱みや業界特有のリスクなどの定性的な情報については複数の関係者の声をまとめるしか解が得られないケースが多い。この中で「社外の関係者インタビュー」は必要な時間も長く、欲しい情報が聞き出せないリスクもあるため、最も注意する必要がある。情報収集においては他者が絡むところから早め早めに動くのがよい。
インタビューを行う時は、まず初めに「これだけははっきりさせたい」という問いを明確化し、それを聞き出すためにはどんな質問をすればいいかをリストアップする。その際にはより具体的な言葉を用いるようにし、質問の受け手が戸惑わないようにすることで期待している答えが得られやすくすることができる。つまり、よい質問は、よいインプットに直結するということである。
また、実際のインタビュー時には、分かったふりをしないということに注意する。なぜなら、分からないまま進んでしまうとその後の質問力が低下するからである。
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