現代は、新興ベンチャーにとっては黄金時代である。創業する起業家の数は全世界で3億8000万に上り、その数は飛躍的に増え続けている。この動向に拍車をかけたのは、企業の立ち上げにかかる費用が劇的に安くなったことだ。
一方、すでに守るべき市場がある大企業は、破壊的イノベーションから持続的イノベーションへと焦点が移り、成長のペースが落ちていく。最大の問題点は、サプライヤーや投資家、顧客といった社外勢力が企業の存続を左右するということだ。これにより、大きなチャンスを前に「我が社のブランドに合うだろうか?」と自問せざるを得ず、それがイノベーションの深刻な障壁となっている。
大企業の経営者たちは、イノベーションを重視する企業文化を育てようとして、優秀な社員を社内起業家に抜てきする。しかし、それが往々にして失敗に終わる三つの原因が存在する。
一つは、社内起業家に、高収益の望めるチャンスに飛びつく自由がないため、イノベーションが進まず、成長性も低いことだ。二つ目は、社内起業家が給与所得者であるために、ハイリスク・ハイリターンという強力なインセンティブが働かないことである。そして三つ目は、社内起業家が、プロジェクトを開花させるのに必要な財政基盤を持っていないことである。
本来、社内起業家は、保守的な思考から抜け出せるよう、企業の外にオフィスを構え、何でも自主性を発揮でき、社内での予算獲得競争から独立した存在でなくてはならない。
成功しているスタートアップは、顧客の望みに対応しながら進路を変更し、顧客がお金を支払う気になる商品にたどり着いたのだ。著者たちが開発した「リーン・スタートアップ」方式は、ベンチャーが少ない経費で素早く成長するうえで効果的なテクニックである。市場で生き残れるだけの必要最小限の機能を持った製品を繰り返しつくり、実際に顧客に使ってもらって検証して、ピボット(方向転換)するか、今の戦略を維持するかを決めるというものだ。大企業もこの方式を取り入れることで、変化を起こすことができる。
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