現在30代、40代の会社員は、極めて変動性の高い環境で、絶えざる変化への適応を余儀なくされている。マーケティングの第一人者コトラーによると、「5年先に今のビジネスモデルは通用しない」という。
もはや高度な専門知識や経験値は成功の必要条件にすぎず、実際のビジネスに適用・活用できるかどうかが勝敗を分ける時代となった。こうした状況下でイノベーションを引き起こせるミドルだけが生き残ることができる。まさに「Change or Die(変わるか死ぬか)」である。
ミドル層がビジネスにおいて「かかりやすい代表的な症例」と処方箋をいくつか紹介しよう。
一つ目は「思考習慣病」である。「わが社は何とかなるだろう」という正常性バイアスが働きがちだが、「本当にそうなのか」と自問し、最悪のシナリオを考えなくてはならない。リスクを直視し、立ち向かう覚悟を決めて、リスク回避策を練っておけば、迷いなく仕事に注力することができる。
二つ目は、仕事術に関する本に次々と手を出す「方法論依存症」である。即効性のある手軽な方法論は、抱えている課題の根本解決にはつながらない。凝り固まった考え方を解きほぐし、思考の糸口を与えてくれる本に立ち向かう必要がある。
有事のリーダーに求められる役割は、「あるべき姿、ビジョン」を構築し、そこから現状とのギャップを埋めるために、有限な資源をどう配分するかという戦略を立案すること、そして変革マネジメントを行うことである。ミドルこそ、この「ビジョナリー・リーダー」として、自ら全社ビジョンを考え、経営陣に提言し、予算を奪い取ってくるような気概を持つ必要がある。
一方、会社を離れれば、誰もが自分の人生に対してリーダーシップを発揮しなくてはならない。自立した精神を持ってビジョンを描き、実現していく「ビジョナリー・プロフェッショナル」を目指すことで、前向きな人生を送ることができると著者は読者にエールを送る。
既存の経営戦略論やビジネススキルは、課題解決のツールに過ぎず、急速な大衆化に見舞われている。もちろん、MBAの1年目のカリキュラムで習う内容は知っておくべきだが、それらは差別化したビジョンを構想するための武器にはならない。そこで、大衆化する「知」を効率的に学習し、差別化できる分野に重点投資することをおすすめする。
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