マイケル・チャンは2014年に錦織圭のコーチに就任するやいなや、徹底的な練習と厳しい指導で錦織のテニスをレベルアップさせた。チャンの指導の最大の功績は、錦織の意識の変革だろう。考え方を変えれば、人は潜在能力を発揮できるようになり、短期間に大きく飛躍できる。それは一流のアスリートだけに限ったことではなく、私たちも実践できることなのだ。
チャンのトレーニングは非常に厳しく、練習場では徹底的に自分を追い込まねばならない。しかしこれは、メンタル面を強化するために非常に効果的なのだ。神経にギリギリまで負荷をかけ、その辛さを乗り越えると一段と逞しい精神力を手に入れられる。
接戦において勝敗を決めるのは技術や体力ではなく、結局はメンタルの差だ。重要な場面で粘り強く戦い、チャンスをものにできるかどうかはメンタルにかかってくる。そのために、覚醒レベルをコントロールする方法を身につけておくことは有効だ。もしイライラしてしまったら深呼吸をし、逆に、落ち込んでいる時は足の太ももやほっぺたを叩く。この方法を知っているだけで、自分を最適な覚醒レベルまでもっていくことができ、最高のパフォーマンスを発揮できる。
名指導者は選手を洗脳するスキルを持っているといえる。「ピグマリオン効果」という心理学の法則がある。強く願えばその願いが実現するという効果である。チャンは錦織に「お前は世界のトップになれる!」と繰り返しメッセージを送り続けた。そのことは錦織の大躍進につながっている。「自分はできない」という思い込みこそが、潜在能力を発揮する妨げになっているのだ。もしコーチがいなくても、自分で「私はもっと凄いことができる!」と繰り返し唱え続けよう。これが潜在能力を発揮させる方法だ。
また、成長するためには、自分のなかで当たり前のこと、常識になっていることを一度疑ってみる必要がある。錦織は、絶対の自信を持ち、周囲からの評価も高かった技術面を、チャンに指摘されてすべて見直すことになった。実際やってみて、直すべきところがないと思っていた技術面が大幅に改善されたことに驚いたという。
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