シリコンバレーのハリウッド化が進んでいるという。斬新なアイデアを実現させてきたIT業界は、いつしか消費者を楽しませ、単純なアプリや広告を垂れ流す方向に変わってしまった。そんな中、シリコンバレー本来の精神を受け継ぎ、巨大マシンの改良に注力し、真のブレイクスルーを目指す男がいる。イーロン・マスクである。
大学卒業後に初めて起業したZip2で大金を手にしたマスクは、ほぼ全額をX.com(後のペイパル)につぎこみ、イーベイの買収によって巨額の富を手にした。マスクはこれをスペースX、テスラモーターズ、太陽光発電のソーラーシティの事業に投じるという一か八かの賭けに出た。
マスクが掲げるのは「火星に人類を送り込み、人類を救う」というミッションだ。型破りなアイデアから製品をつくり出す発明家であり、カリスマ経営者であり、実業家でもあるマスク。彼には、社会的への使命感に満ちた確たる世界観があるのだ。
マスクは1971年、南アフリカの首都プレトリアに生まれた。彼は子どもの頃からSF的な世界への憧れを持ち、10歳からコンピュータに没頭して、12歳ですでにビデオゲームを開発していた。とにかく好奇心旺盛で、1日10時間も本にかじりつくくらいの読書好きな子どもだった。爆弾やロケットをつくろうとしたこともあれば、弟のキンバルとともにプレトリアとヨハネスブルグを往復する、危険と隣り合わせの旅に出るなど、冒険好きな一面もあった。ところがマスクは、中学でも高校でもクラスでは浮いた存在で、深刻ないじめにより何度か転校を経験していたという。
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