ドイツが官民一体となってインダストリー4.0を推進する最も大きな理由は、「ドイツが経済成長をしなければならない」からである。
ドイツで経済成長がなぜそれほどまでに望まれているかというと、主に下記のような理由による。
1.東西統一後、「欧州の病人」とまで言われた景気低迷期から、現在の繁栄に至るまで、国民は必死の努力をした。だからこそ二度と苦しい時代には戻りたくない。
2.ドイツ国内では、ドイツ人と同じ賃金や福祉の待遇を受けている移民が多く存在する。景気が悪化すると移民排斥の動きが強まる。
3.ドイツ人の感情にかかわらず、ユーロ経済圏の安定はドイツ経済の強さに大きく頼っている。
また、最近競争力の強まっているアジア新興国や米国の製造業より一歩先をゆかねばならないという危機感も、インダストリー4.0推進の理由のひとつだ。
ドイツが強い国際競争力を持っているのは製造業、なかでも「自動車」、「電機」、「機械」、「化学」の分野であるため、インダストリー4.0を通して得意分野のさらなる発展をめざしたいのである。
インダストリー4.0プロジェクトは、ドイツで2012年3月に決定された、「ハイテク戦略2020行動計画」のなかの「未来プロジェクト10」と呼ばれる省庁横断型プロジェクトの1つとして発表された。ドイツは、製造業現場に押し寄せるデジタル化の波を飛躍のチャンスととらえ、積極的に打って出たのだ。2013年に発表された、「戦略的イニシアティブ インダストリー4.0実施のための提言」というレポートには、ボッシュ、シーメンス、サップといったドイツを代表する企業の名前が並び、民間企業との強い連携がうかがえる。情報技術・通信・ニューメディア連盟、ドイツ機械工業連盟、ドイツ電気電子工業連盟による、「インダストリー4.0プラットフォーム」も、2013年に立ち上げられた。また、政府が支援する
3,400冊以上の要約が楽しめる