モノ同士が通信し合い、ネットとリアルが融合するIoTを実現させるうえで不可欠なのは、消費電力が少なくて済む無線通信である。その一種であり、これまでヘッドフォンやキーボードくらいにしか使われていなかったブルートゥースが、最近「BLE(Bluetooth Low Energy)」へ進化を遂げ、新しい可能性を生んでいる。
BLEは従来のブルートゥースと比べて桁違いに消費電力が低い。機器同士を一対一で接続していた従来のタイプと違って、無数の機器が発信するデータをスマートフォンやパソコンで受信する前提に立っている。BLEは機器自体が備えている機能と、アプリによる「振る舞い」を完全に分離しているため、今後開発されるアプセサリ(アプリと連携するハードウェア周辺機器)にも対応することが可能なのだ。例えば、温度センサーを備えた機器があれば、アプリの設計次第で、医療用の体温計としても天候観測用の気温計としても利用できる。
アップルは、自社製品の基盤技術として、このBLEを戦略的に推進している。iPhoneがBLEに対応したことで、数千万台規模のBLEアプセサリ市場が誕生した。BLEアプセサリを開発しやすい環境を用意し、エコシステムを構築して、魅力的なBLEアプセサリが登場することで、それらと連携するiPhoneやiPadの魅力も増すというわけだ。
BLEは、データの取得、機器の操作、存在の認識の3つを可能にした。中でも、アップルが開発した「iBeacon(以下、iビーコン)は、ネットからリアルの位置を確認する「存在の認識」を利用した、近距離での位置情報検出技術である。
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