テロやデフォルトの多発、感染症の大流行など、多くのリスクに取り囲まれたヴォラティリティ(変動性)が高い時代を生き抜くためには、イノベーションが何よりも重要である。イノベーションとは、技術であれ仕事のやり方であれ、まったく新しい付加価値をもたらすフレームワーク(枠組み)を生み出すことを意味する。しかし、日本の研究開発の現場では、日本以外でつくられたフレームワークに従い、その細部を詰めるための技術開発に日本の技術者や科学者が携わっているにすぎない。
この状態を打破し、真のイノベーションを前進させるには、類推法という発想法をマスターすることが先決である。
イノベーションの実現の前提となるのは「気づき」である。どうすれば気づきを得られるのかという課題を考えたのは、古代ギリシアで活躍した哲学者アリストテレスだ。彼は、論理学において演繹法と帰納法を打ち出すという功績を残した。演繹法とは、前提となる正しい一般論を、個別の事象に適用して、正しい主張・答えを引き出す方法である。一方、帰納法とは、多くの個別の事象や主張を集めて、より一般的に通用する共通のメッセージを導き出す方法だ。
しかし、いずれの方法も、提示されたフレームワーク内で主張の正しさを詰めていくことしかできず、それを越えた世界について「気づき」を得ることはできないのだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる