マインドフルネスとは、「今この瞬間に完全な注意を向けた状態」のことだ。「過去や未来に気を散らさず、今、あるがままの感情や思考、場の雰囲気などに十二分に注意を払っている状態」とも言える。マインドフルネスのための瞑想トレーニングをいち早く社員教育に取り入れたのは、グーグルだ。前例のないビジネスをリードし、多様な仲間との摩擦を共創の力に変えていくためには、それぞれの今に「注意を向ける」ことが不可欠である。また、社の掲げる「ウェルビーイング」というビジョンにも沿う効果を、マインドフルネスから得ることもできる。
マインドフルネスを重視し、ジムで身体を鍛えるように集中力を鍛えようとする動きは、今や業界を越え、国を越え、世界中に広がっている。日本でも、マインドフルネスのための瞑想は、客観性の高い具体的な方法として、既に一部に受け入れられつつある。
マインドフルネスの実践によって何を得られるのか。本書では9つの「結果を出す力」を解説しているが、そのうちのいくつかをここでは紹介したい。
現代の状況を表す、「VUCAワールド」という言葉がある。この語は、米国陸軍が世界情勢を捉えて表現したものであり、グローバル企業のエグゼクティブにも浸透しつつある。「変動の幅が大きく(Volatility)、不確実で(Uncertainty)、複雑で(Complexity)、問題の所在がどこなのかさえ曖昧な(Ambiguity)」世の中という意味である。
例えば、電化製品の機能を増やせば単純に売れ行きが伸びるかというと、そうではない。新興国で事業拡大のために投資すれば、政情不安のリスクがつきまとう。といったように、企業のリーダーは日々、「VUCAワールド」の不安定な状況のなかでの決断を迫られている。
質の高い意思決定を行うには、コントロールできない世界を前向きに受け入れ、疲弊してもすぐに立ち直れる力が必要だ。この復元力を「レジリエンス」というが、マインドフルネスはその基礎を養うことができる。
リーダーシップには、自己認識、つまり、自分の考えや感情が他者に与えている影響や価値観に十分に気づいていることが、欠かせない。リーダーが意識を業績や顧客といった外のことにばかり集中し、部下にもそれを強いていると、組織は短期的にはうまくいくかもしれない。しかし、中長期的には、楽しく働く人がいなくなり、組織は病んでしまう。
マインドフルネスを鍛えると、
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