親世代が就活をした時代と比べて、産業構造や就活の形が変化している。「IT」「ベンチャー」という響きに親世代は警戒心を抱いている。インターネットやスマートフォンの普及により、就活の方法も様変わりしている。そのズレに親世代は困惑し、子どもの就活にやきもきする。親が子どもの就活に口を出すなど過干渉になっているのは、こうした構造的な変化が影響している。
新卒採用を語るうえで外せないのがリクルートという会社である。創業者の江副浩正氏は、大学卒業後すぐに、アメリカの就職情報ガイドブックを見て感銘を受け、同様の情報誌は日本でも受け入れられると考え、情報誌「企業への招待」を創刊した。企業から求人広告を出稿してもらい、学生に無料で配布するという、当時は斬新なビジネスモデルだった。「同誌は、1969年に「リクルートブック」と誌名が変更され、日本の就活自体に新しい風を吹かす存在となった。
それまでの日本では、「人づて」で働き口を探す学生が多かった。学校やゼミごとに企業への独自のルートを持っており、企業の要求する人材像や学生の適性に合わせて推薦を行っていた。学生側が企業を選択するという感覚は、現在よりも希薄だった。
企業への自由応募が急速に拡大したのは、1960年代後半である。高度成長を支える人材を大量に欲していた企業は、自由応募の浸透により多くの学生を確保できるようになった。学生側も豊かな生活を実現するために、より条件のよい企業に就職しようと躍起になった。「リクルートブック」は、こうした時代の要請と合致して、学生、企業どちらにも受け入れられていった。これが「就職情報産業」の誕生である。
「リクナビ」などの就職ナビと呼ばれるサービスの登場によって、就活の利便性が飛躍的に向上した。学生は、オンライン上で簡単に企業の求人をチェックでき、インターシップや企業説明会の申し込み、選考のエントリーなどが可能になった。本格的なインターネット時代が始まる前夜、「リクナビ」は新しい時代のニーズに合った採用サービスとして登場したのである。
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