ホメロス イリアスの表紙

ホメロス イリアス


本書の要点

  • 『イリアス』は、「イリオス(またはイリオン)の歌」という意味であり、そのボリュームは一万数千行にもなる。『オデュッセイア』と並ぶ、ヨーロッパ最古の大叙事詩。

  • アカイア連合軍の総大将アガメムノンは、神の怒りをなだめるために、妾として手に入れた娘をしぶしぶ手放す。だが、腹の虫がおさまらず、勇将アキレウスの愛妾を取り上げる。怒りに燃えるアキレウスは、盟友パトロクロスと屈強の配下とともに戦線を離脱する。

  • トロイエ軍は、神ゼウスの導きもあって勢いにのり、アカイアの船陣にまで迫る。見かねたパトロクロスは、アキレウスの代わりに出陣する。

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アキレウスの怒り

悪疫

©iStock/sybanto

アカイア軍とトロイエ軍が戦いを始めて10年目にもなる。戦争のそもそもの発端は、トロイエの王子パリスが、神に操られた運命によって、スパルタ王メネラオスの妃であるヘレネを寝取り、自国に連れ帰ってしまったことだった。メネラオスは、各国の王に呼びかけ、ヘレネ奪還のためにアカイア連合軍を起こした。連合軍総大将は、アカイアの国のなかでも広大なミュケネを統べる、メネラオスの兄、アガメムノン王である。アカイア軍は、トロイエの海岸に船陣を構えていた。そこへ、アポロンの祭司クリュセスが訪ねてきた。アガメムノン王が、先の戦いで手に入れた妾クリュセイスを手放すよう、懇願しにきたのだ。クリュセイスはクリュセスの娘なのであった。しかしアガメムノンは願いをはねつけた。クリュセスがアポロンに訴えると、怒りに燃えるアポロンは軍に悪疫をもたらす神の矢を射ちこんだ。そのために、アカイアの兵士たちはばたばたと死んでいった。プティエの王子、剛勇無双で名高いアキレウスは、集会を開くことを提案し、占い師に状況を尋ねる。すると、占い師は、この悪疫の原因は、クリュセイスをアポロンの祭司に返さなかったため神の怒りにふれたことだという。アガメムノンはしぶしぶクリュセイスを手放すことを承知したが、腹の虫がおさまらず、アキレウスの愛妾ブリセイスを代わりにといって取り上げる。

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要約公開日 2015.12.29
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