ヤフーとその仲間たちのすごい研修

リーダーをつくれ! 前代未聞の31人の冒険
未読
ヤフーとその仲間たちのすごい研修
ヤフーとその仲間たちのすごい研修
リーダーをつくれ! 前代未聞の31人の冒険
著者
未読
ヤフーとその仲間たちのすごい研修
著者
出版社
日経BP
出版日
2015年07月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ヤフー、インテリジェンス、日本郵便、アサヒビール、電通北海道、美瑛町役場――業態も社風も異なる6つの組織の社員と職員が集まり、半年にわたって北海道の美瑛町の課題解決に取り組むというプロジェクト兼研修が、2014年にスタートした。参加者はチームごとに、限られた期間の中で情報を集め、課題解決案を導き出す。そして、最終的に美瑛町町長と町民の前でプレゼンテーションをして、案を競い合う。本書は、その一部始終をつづったドキュメントである。

様々な意味で従来の研修の枠を超えたこの研修の発案者は、ヤフーの人事部長、本間浩輔である。彼は、既存の研修ベンダーによるパッケージ型の研修に限界を感じていた。人材開発を真剣に考えた末、東京大学准教授の中原淳に監修を依頼し、研修の企画をかたちにしていった。

読者は、本書の書きぶりの率直さに驚くことだろう。チームづくりの失敗、生煮えのプレゼンへの酷評、チームのなかで誰がどんなふうに貢献し、誰がどんなふうにブレーキをかけてしまったのか、すべてが赤裸々に語られる。「課題発見」、「ダイバーシティが加速化するなかでのリーダーシップ」など、一言で語られてしまう理論と、現実の中でがっぷり四つに組み合う生身の姿がそのまま描かれている。

今後の人材開発ではこういうことが必要、今後はこうしていくべき、ということが書かれているというよりは、本書は、「実際やってみたらこうだった」という記録なのである。人材開発の担当者の方にはとりわけ、意義深く感じられる一冊でないだろうか。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

篠原匡(しのはら ただし)
1975年、東京生まれ。1999年慶応大学商学部卒業、日経BP社入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て、2015年1月から日経ビジネスニューヨーク支局長。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや!』(日本経済新聞出版社)、『神山プロジェクト』(日経BP社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    異業種でコラボレーションすることでダイバーシティを体験してもらい、現代のスピーディーなビジネス環境のなかでも自ら課題を発見できるような人材を育てる、というのが研修の狙いだ。
  • 要点
    2
    チームビルディングには、どのチームも苦労した。意見を言いやすい場をつくることに成功したチームもあれば、コミュニケーションが停滞したチームもあった。ただ、適性に基づいて積極的に役割分担し、目的を共有してプロジェクトを楽しんでいたBチームの熱量は、終始高かった。

要約

前代未聞の研修がはじまる

手作りの研修
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

ヤフー、インテリジェンス、日本郵便、アサヒビール、電通北海道、美瑛町役場、6つの組織の人間が集まり、北海道の美瑛町の課題解決に取り組むという、前代未聞の研修を思いついたのは、ヤフーの人事部長、本間浩輔だ。彼は生粋の人事担当ではなく、コンサルタント、起業などの豊富なビジネス経験を経て、ヤフーで人材開発を担当するようになった。

現在のヤフーは、この10年ですっかり大企業になり、「ネット界のNHK」になってしまった、と本間は語っている。もう一度、ダイバーシティを取り戻し、イノベーションを起こせるような人材を育てなければならないという意識は強い。また、本間は、外部に委託する研修に限界を感じている。一人ひとりの気づきこそが真の学びだといえるが、外部委託ではそこまでのきめ細やかさは望めない。そこで、手作りの研修をしようと思い立ったという。

研修の監修を東京大学准教授の中原淳に依頼し、ヤフーの研修担当マネジャーでもある池田潤も加わり、最終的に研修の大枠が定まった。

異業種コラボレーションで地域課題に取り組む

この研修の特徴の一つは、「異業種コラボレーション」である。先に述べた6つの組織は、社風も業態も幅広く異なっている。参加メンバーの人数も、20代前半から40代前半までバラバラで、営業担当や技術者もいれば、研修へのやる気がある人もない人もいる。これには、加速していくダイバーシティを身をもって体験し、自分と合わない人間とも議論を重ねてアウトプットを出していくということを経験してもらうという意図がある。

また、研修は半年の期間限定であり、参加メンバーが美瑛町を訪れる日は12日しかない。この高いハードルにも、やはり意味があった。

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要約公開日 2016.01.04
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