年中働きづめの社長は「職人型ビジネス」を作ってしまう。「職人型ビジネス」とは、ビジネスが働くのではなく、社長自身が毎日現場で働くことによって成り立つビジネスのことだ。そうした社長の多くは、現場での仕事に満足し、自分しかできない仕事に誇りを持っており、今の仕事でそこそこ稼げている、という感覚を持っている。著者自身、かつては自分が現場の第一線で働くことに美徳を感じていたという。
しかしこうしたビジネスは、キャパシティーの限界、体力の衰え、気力の衰え、本人のケガ、病気、あるいは社員のクーデターなどによってトラブルが発生し、最終的には破綻してしまうことが多い。破綻しないまでも「個人事業主から抜け出せない」といった低成長にかかる問題の多くは「職人型ビジネス」に起因するものである。
これに対して3ヶ月休める社長は「起業型のビジネス」を作る。「起業型のビジネス」とは、社長が働くのではなく、ビジネス自体がどんどん働いてくれるビジネスのことだ。
もちろん、「社員に働かせて社長が楽をする」というわけではない。「社長本来の仕事とは、社員の志や人の幸せのためにビジネスを働かせる仕組みを作ることだ」ということを指している。
マイケル・E・ガーバーによれば、「ビジネスを始める人の大半が、真の意味での『起業家』ではなく、起業したいという熱に浮かされた『職人』として働いているに過ぎない」のだ。
社長の中には、「職人」「マネジャー」「起業家」という3つの人格が存在する。
「職人」の人格とは、自らが手を動かして現場で働き、顧客に喜ばれることを好む人格。「マネジャー」の人格とは、資金や人の管理などを好む実務家として、仕事がスケジュール通りに進行していることを確認することなどに喜びを感じる人格。「起業家」の人格とは、将来のビジョンを描き、戦略や新しいアイデアの創出、未知の分野への挑戦に喜びを感じる人格のことを言う。
スモールビジネスでは、この3つの人格のバランスを社長が常に意識して運営していかなければならない。
ここまで読んで、「自分のために働いてくれるビジネスを創るという考え方は素晴らしいと思う。だけどそれが本当にできるとは思わない」というのであれば、この本をこれ以上読む意味は無いと、本書では述べている。
9割の中小企業経営者が、「成功する人は、持って生まれた特別な才覚にあふれ、特別に運が良く、自分とは違う次元で生きている人だ」と思っているという。独立したとは言え、生計を立てるための仕事に明け暮れ、現状を維持するだけでも必死な状況では、ワールドクラスのビジネスを作るという考えは、遠い世界のことだと思うのも無理からぬことだ。
しかし、決してそうではない、と著者(およびガーバー氏)は力説する。
3,400冊以上の要約が楽しめる