日経ビジネス2014年1月20日号の特集「シリコンバレー4・0―変貌する革新の聖地―」では、いきなりショッキングなデータが紹介されている。総合起業活動指数と呼ばれるもので、成人人口100人に対して起業準備中の人と起業後3年半未満の人が合計何人いるかを表す数値だ。
この指数は米国が12・8で、中国もほぼ同等の数値を示している一方で、日本はわずか4・0と、紹介されている国のなかで最下位になっている。
日本の指数が低いのは、既存企業への就職を当てにできるからとも言える。しかし、人間と同じように企業にも寿命があるとすれば、新たな企業が生まれなければその国の経済は衰退に向かうことは明白である。人間だけでなく、企業も「少子化」の危機に直面している日本は、起業の停滞という課題を克服できないままだ。
一方、起業の中心地「シリコンバレー」を擁する米国は10人に1人以上が起業家だ。先進国で最も高い総合起業活動指数を誇り、今も多くの異才を生み出している。世界をリードする企業や起業家はどんな環境から生まれるのか。イノベーションを生み出すエンジニアは何を目指しているのか。
本特集はそんな進化を続けるシリコンバレーの仔細に迫り、日本が学ぶべき示唆を与えてくれる。日本の起業を憂う序章から始まり、1~3章ではシリコンバレーではどんな変化が起こっているのかを鮮やかに描いている。4章ではシリコンバレーに再挑戦する日本企業の取り組みを紹介し、最終章である5章では日本がシリコンバレーから学ぶべきポイントについて指摘している。各国がシリコンバレーを参考にしたエコシステムを構築しようとしているなか、日本企業や政府は何が出来るのか。ハイライトではその一部を紹介したい。
これまでシリコンバレーの本家本元は、広大な土地や閑静な住宅街が広がるパロアルトやマウンテンビューといった地域だった。これらのエリアは今もフェイスブックやグーグルの城下町として栄えている。
しかし、次代を担う新世代のエンジニアが目指しているのは都市部のサンフランシスコだ。昨年末に上場して注目を集めたツイッター、日本にも上陸して決済サービスを展開するスクエア、さらに今後の成長が有望視されるスタートアップの多くがサンフランシスコに集積を続けている。イノベーションの聖地であるシリコンバレーが、北に向かって拡大しているのである。
今ではグーグルやアップルは毎日サンフランシスコとの間に通勤用バスを走らせているという。急成長する写真共有サイトを運営するピンタレストも本社をパロアルトからサンフランシスコに移転した「移住組」だ。その狙いは「優秀なエンジニアを獲得できるから」。さらなる成長を目指す企業はこうしてサンフランシスコに集まってきている。
ヒューレット・パッカードやアップル、グーグルなど、シリコンバレーの歴史をひもとくと、創業の地として語り継がれる「自宅ガレージ」が必ず登場する。しかし、今の成功物語にガレージは登場しない。
いま注目を集めているのが「コワーキングスペース」だ。
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