ビジネス思考実験

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ジャンル
出版社
出版日
2015年12月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ビジネス思考実験」というタイトル通り、本書ではビジネスで必要とされる経営学の理論やフレームワークが多数紹介されている。しかし、本書は「ビジネスを成功させるための書籍」の枠に留まらない。本書は、副タイトルにあるように『「何が起きるか?」を見通すため』に経営学を引き合いに出し、物事に対する考え方や認識の仕方を指南してくれる側面もあるのだ。

第1部では経営学や哲学なども含めた社会科学の方法論が紹介され、第2部では思考実験の手がかりとなる経営学の概念や傾向法則の理解を深められるよう、ファイブフォース理論などの競争戦略の定番理論やフレームワークについて、その限界や基本命題が述べられている。著者によると、これらの知識は、経営理論の適用範囲や正しい使い方を把握するための必須条件だという。さらに第3部では、これから新たな事業を考える人に向けて、ビジネスモデルのプロトタイピングにおいて考えるべきポイントが詳しく説明されており、非常に実践的な内容となっている。

このように幅広いテーマを網羅的に取り扱う本書は、成果を出したいと考えているビジネスパーソンだけでなく、社会科学の知見に興味がある人や、広い視野と分析思考を身に付けたいと考えている人にも有用な一冊である。本書には経営学の専門用語や理論が数多く登場するが、豊富な図表でわかりやすく解説されているので、「経営学は難しそう」と尻込みしていた人でも、しっかり内容を理解しながら楽しく読み進めることができるだろう。

ライター画像
和田有紀子

著者

根来 龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授
京都大学文学部卒業(哲学科社会学専攻)。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年から現職。現在、早稲田大学ビジネススクールのディレクター(統括責任者)、および早稲田大学IT戦略研究所所長を務める。経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、CRM協議会副理事長などを歴任。著書に、『事業創造のロジック』(日経BP社)、『MBAビジネスデザイン』(共著、日経BP社)、『プラットフォームビジネス最前線』(監修、翔泳社)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『ネットビジネスの経営戦略』(共著、日科技連出版社)、『製薬・医療産業の未来戦略』(共著、東洋経済新報社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    思考実験を行うことで現実を異なる視点で捉え、新しい概念やビジネスチャンスを見つけることができる。
  • 要点
    2
    経営学の理論は「過小」かつ「過剰」であるため、そのまま自社の状況にあてはめてもうまくいかない。成果を出している企業は、経営学の理論を参考にしつつも、自社の経験から得た持論も大切にしていることが多い。
  • 要点
    3
    ビジネスモデルを設計する際は、事業構造の全体を考え、「戦略モデル」「オペレーションモデル」「収益モデル」の3つを検討する必要がある。

要約

状況に合わせて柔軟に。経営学の理論の特性とは

なぜ経営学の理論を学ぶのか

事業を成功へ導くためには、うまくいくパターンを見つけて、それを繰り返し、資源を蓄積させて他の事業と差別化を図る必要がある。経営学の理論は自然科学の法則とは異なり、「Aをすれば必ずB」という結果を生み出すほどの万能性はない。しかし、ある事象について1回限りの特殊な要因を排し、要因の括り方の抽象度を上げ、ある部分の因果関係について見てみると、そこには何かしらの「繰り返し性」が見つかる。経営学のみならず社会科学の理論はこうした共通の要因を各々括り出すことで成り立っている。

そのため、一般解である経営学の理論やフレームワークを知っておくことは有用である。自分ですべての方法を試して成功するかを確かめるといった無駄な遠回りをせずに済むからだ。また経営学の理論は、経営者がビジネスにおいてチェックすべきポイントを提示してくれたり、多くの人に役立つ示唆を与えてくれたりもする。

経営学は常に「過小」かつ「過剰」

経営学の理論は「自社にピッタリ」にはできていないという点を忘れてはならない。自社の現状にそのまま理論をあてはめようとすると、説明できない部分が必ず出てくる。同時に、こんなことまで考えなくてもよいという要素が含まれてしまう。したがって、経営学の理論を利用する際は、どういった例外や限界があるのかを認識し、どういう条件を満たす場合にその理論が適応されるのかを押さえておくことが欠かせない。その上で自社にとって過小な部分と過剰な部分を調整することが肝要である。

理論と持論の両刀使い
Minerva Studio/iStock/Thinkstock

しかし、いざ実際のビジネスとなると、自社用に理論を調整したからといって必ずしも事業を成功させることができるわけではない。

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要約公開日 2016.05.12
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