大前研一ビジネスジャーナル No.9

世界のリゾート&ツーリズム徹底研究
未読
大前研一ビジネスジャーナル No.9
大前研一ビジネスジャーナル No.9
世界のリゾート&ツーリズム徹底研究
未読
大前研一ビジネスジャーナル No.9
出版社
good.book
出版日
2016年02月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

選り抜きの、大前研一氏のコンテンツ集とも言える『大前研一ビジネスジャーナル』。第9弾となる本書のテーマは、「世界のリゾート&ツーリズム徹底研究」だ。

日本を訪れる外国人観光客は増加の一途をたどり、2020年には3000万人に達すると予測されている。日本においても、中国人観光客の「爆買い」現象や、世界に通用するスキーリゾートへと生まれ変わりつつある北海道のニセコなど、「インバウンドビジネス」は時代の趨勢といえよう。しかし、大前氏は「日本企業や地方に、長期的視点から観光産業を確立しようとするビジョンはあるのか?」と、核心に迫る問いを読者に突きつける。現に、和歌山県の南紀白浜のように、限られたスペースに自由に建築を進めた挙句、統一感に欠け、「幕の内弁当」化しつつあるリゾートも課題となっている。

大前氏は、日本の観光産業が取り組むべき課題と解決策を、世界各国の最前線の事例とともに鮮やかに提示していく。そして、日本がインバウンド時代を勝ち抜くためには、世界の富裕層をターゲットとする「スーパーラグジュアリーリゾート」の開発が不可欠だと断言する。

マッキンゼー時代から世界を股にかけ、各地のリゾートを知り尽くしている大前氏。日本のリゾート開発がめざすべき方向性についての提案には大いに説得力がある。本書は、観光産業やホスピタリティー業界にとどまらず、どの業界に属する人にとっても、ビジョンを描くための確固たる指針になってくれるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

大前 研一(おおまえ けんいち)
株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長/ビジネス・ブレークスルー大学学長
1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。以後も世界の大企業、国家レベルのアドバイザーとして活躍するかたわら、グローバルな視点と大胆な発想による活発な提言を続けている。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長及びビジネス・ブレークスルー大学大学院学長(2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラムとして開講)。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開校、学長に就任。日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本のホテルや旅館は、ラグジュアリーでもエコノミーでもない中途半端な立ち位置になっており、世界の富裕層を誘致できていない。
  • 要点
    2
    日本は、世界の人気リゾートのトレンドと強みを研究したうえで、観光産業の振興と地域活性化の打ち手として富裕層向けのリゾート開発に本腰を入れるべきだ。
  • 要点
    3
    細切れで散発的な日本のリゾート開発を見直し、欧米富裕層に一般的な、長期滞在のコンセプトに対応することが急務である。

要約

【必読ポイント!】 スーパーラグジュアリーリゾートの時代

観光産業の今

世界のリゾートは、1泊10万円という超一流ホテルに代表される「スーパーラグジュアリーリゾート」と、格安ホテルや海水浴場といった大衆向けの「エコノミーリゾート」に二極化している。この両者を柱とする観光産業は、今や6.8兆ドルもの巨大市場を形成し、世界の市場規模としては自動車産業を凌ぐという。

ところが、日本では国や地方が一丸となって観光産業の振興に取り組んでこなかった結果、2013年時点では、国際観光収支で160億ドルの大赤字を生んでしまっている。さらには、訪日外国人数は過去最高を記録しているにもかかわらず、国内旅館の市場規模はこの約20年の間に半分以下に縮小してしまった。日本のホテルや旅館は、ラグジュアリーでもエコノミーでもない中途半端な立ち位置になっており、かわりに外資系のホテルチェーンが加速度的に日本進出を図っているのが現状だ。

少子高齢化が進み、2040年には日本の市町村の50%が消滅するという試算もある中、地域活性化の打ち手として有力なのが、富裕層向けのリゾート開発である。日本も、世界の人気リゾートのトレンドと強みを研究し、インバウンド時代を勝ち抜く「仕掛け」を生み出すことが求められている。

世界の富裕層の心とサイフをつかめ

日本の観光地が抱える最大の課題は、世界の富裕層を獲得できていないという点である。とりわけ中国の富裕層は、東南アジアの高級リゾートには1泊あたり一人10万円以上の大金を落としていく。一方、

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要約公開日 2016.06.15
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