カナダのバンフ国立公園内にあるノーケイ山スキーリゾートでは、スキーヤーが1日に一定の滑走標高差をクリアするごとに、勲章のバッジが配られている。バッジの色は、達成の難易度に応じて銅・銀・金・プラチナに分類されている。このように、人をバッジで動機づけることは新しいことではないが、現在ではリアルなバッジは、バーチャルなものに変わりつつある。
もちろん、プレイヤーにバーチャルなバッジを提供することだけがゲーミフィケーションではない。ほかにもポイントやレベル、ランキング表といったゲームメカニクスを用い、あらゆる活動の場で人をやる気にさせ、動機づける力を持っている。
では、ゲーミフィケーションを成功させるにはどうしたらいいのだろうか。
まずは、ゲーミフィケーションの定義について説明したい。ガートナーでは、ゲーミフィケーションを「ゲームメカニクスおよび体験デザインを駆使し、人々が自身の目標を達成できるよう、デジタル技術を利用してやる気にさせ、動機づけること」と定義した。ゲームメカニクスとはポイントやバッジといったゲームに共通する主要な要素である。また、体験デザインとはプレイ空間やストーリーラインなどを含むプレイジャーニーを説明するものを指す。
とりわけ大切なのは、プレイヤーを動機づけて行動をおこさせ、各自の目標を達成させることで企業側も目標を達成することである。この目的を正しく理解していなければ、ゲーミフィケーションの濫用によってプレイヤーに「バッジ疲れ」をおこさせ、ソリューションそのものへの嫌悪感を抱かせてしまう。対象者と企業にとって共通の目標を見極めることや、対象者にとって価値のある目標を与えることが重要なのだ。
カナダ屈指の小児研究病院である通称シックキッズでは、がんの子どもに痛みのレベルを毎日忘れずに報告してもらうための方法を、紙の報告書から、「ペインスクワッド」というモバイルアプリに切り替えた。このアプリに登録した子どもは、特殊警察部隊ペインスクワッドの隊員として痛みと対峙し、日に2回痛みのレベルを報告するという司令を受ける。退屈な作業へのやる気を維持させるために、司令をクリアすれば、新米隊員から軍曹、最終的には隊長へと昇格できるようレベルを設定し、獲得した勲章のバッジも可視化した。
さらには、カナダで人気の警察ドラマの出演者たちに登場してもらうことで、子どもたちのやる気を鼓舞した。
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