Orderという言葉は、「秩序」という名詞であるのと同時に、「命令」を指す動詞でもある。このことからも察せられるように、古くから「命令があるから秩序ができる」と考えられてきた。しかし17世紀以降、ヨーロッパでは市民革命により、それまでの封建制度は瓦解した。それは秩序の源を、市民が自らの手で絶ったことを意味した。
その後、新たな秩序として生まれたのが「功利主義」と呼ばれるものである。功利主義とは、幸福の中身を誰からも強制されず各自で決めてよいとするもので、当時の市民には拍手喝采で迎えられたが、そこには大きな落とし穴もあった。というのも、功利主義は「幸福の分配」に触れず、多数派の満足が増すのであれば少数派の不利益は考えなくてもよいとしたからだ。
功利主義を是正するべく生まれたのが、少数派の自由や利益まで考慮し、所得や富の配分について明確に示した「自由至上主義」である。自由至上主義では、あらゆる取引は「政府」でなく、財やサービスの交換の場である「市場」にゆだねればよいとされた。また、自由至上主義では、一人ひとりを努力に応じて評価することで、結果として社会の中に「正しい配分」が実現すると考えられた。
また、自由至上主義も功利主義と同様に、なにか特定の価値を「よきもの」として提唱することを避けた。
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