日本でいちばん大切にしたい会社4

未読
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日本でいちばん大切にしたい会社4
出版社
出版日
2013年11月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズも第4作目となった。「本の要約サイトflier」では一刻も早く本書「日本でいちばん大切にしたい会社 4」を取り上げるべく旧3作を立て続けに紹介をしてきたため、既視感を抱く方もいるかもしれないが、本作も期待を裏切ることなく読んでいて感涙必至の一冊となっている。

自己啓発やスキルアップ、経営者の半生を綴った自伝など、ビジネス書にはさまざまなジャンルが存在するが、そのなかでも極めて特異な内容と言えるのがこのシリーズである。これまでスポットが当たってこなかった地方の中小企業を取り上げ、従業員やその家族を大事にする経営方針こそが顧客からの信用を獲得し、結果的に好業績をもたらすという、正しい経営を目指す経営者にとって勇気を与えてくれる事例が満載だ。

また本書の冒頭には韓国のサムスン電子のスタッフがわざわざ著者である坂本氏を訪ねたり、中国を代表する経営者に対して行われる講演の依頼があったり、というエピソードが紹介されている。これは本書で紹介されている企業が実践しているような「人間本位の経営」に注目すべきなのは、決して中小企業だけではなく、むしろ大企業こそこのノンフィクションから学ぶところが多いということの表れではないか。株主から「成長せよ」という突き上げも厳しいのだろうが、従業員に対する制度の充実や障がい者雇用の進捗などについて、振り返る機会になれば幸いである。

旧3作と同様、本書は中小企業の経営者の方、そして若いビジネスパーソンにぜひ読んでいただきたい一冊だ。単純に楽しめるだけでなく、自社を見直すための素晴らしい教材となるはずである。

ライター画像
苅田明史

著者

坂本 光司
浜松大学教授、静岡文化芸術大学教授を経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)イノベーションマネジメント研究科(MBA)兼担教授法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長。全国7000社以上の企業訪問をし、「現場で中小企業研究をし、頑張る会社の応援をする」ことをモットーにしている。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズ、『経営者の手帳』、共著に『どう生きる』『どう働く』(坂本光司・青木仁志 著)他、多数がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業の経営者が何よりも、誰よりも幸せづくりに力を注がなければならない人は「社員とその家族」だ。坂本氏が全国7000社以上の企業を訪問調査するなかで、好不況にほとんど関わりなく好業績を持続している企業に共通していることが「社員第一主義経営」であり、「大家族経営」であった。
  • 要点
    2
    社員満足度を高めるためには、従業員が自分の会社に誇りをもてること、そして自分が生み出す製品やサービス、仕事を通じて確実に成長しているという喜びが感じられることが必要である。

要約

はじめに

社員第一主義経営
Photodisc/Thinkstock

著者の坂本氏は本シリーズにおいて、企業の経営者が何よりも、誰よりも幸せづくりに力を注がなければならない対象は「社員とその家族」だと唱えてきた。

その理由の1つは、景気にぶれない企業の変わらない特長がそこにあるからだ。坂本氏が過去40年以上にわたって、全国7000社以上の企業を訪問調査するなかで、好不況にほとんど関わりなく好業績を持続している企業が10%程度存在していることがわかった。

その企業に共通していることが「社員第一主義経営」であり、「大家族経営」だったのだ。このことを貫いている企業でおかしくなった企業は、大げさに言えば歴史上存在しなかったのである。

また、組織や上司に感謝の念、尊敬の念をもって仕事に取り組んでいる社員は心が満たされているから、顧客満足度を高めることによって日頃の恩返しをしようと考える。そのことからも、「社員第一主義経営」が正しいことは容易に想像できるはずだ。

株式会社坂東太郎

笑顔の花咲くレストラン

茨城県を中心に北関東一円に和食ファミリーレストランを70店舗近く展開している「坂東太郎」は、「親孝行」を経営の柱に据え、日本一人が幸せを実感できる企業をめざす温かさあふれる会社だ。

単に業績が伸びているとか成長しているだけなら、ほかにもたくさん外食企業があるが、坂本氏がこの「坂東太郎」が日本でいちばん大切にしたい会社の1つに挙げた理由は、現社長の青谷氏の「親孝行・人間大好き」にかける熱い想いに共感したからだという。

従業員の交通事故をきっかけに業態を一新
iStock/Thinkstock

青谷氏は修行先からのれん分けをしてもらう形でそば屋「すぎのや境店」をオープンして独立した。売上の8割は出前で、遠方からの注文でもざるそば一枚でも断らず配達し、順調に売上が伸びていったという。しかしこのビジネスモデルは大きな転換を迫られる。

それは、バイクで出前に出た従業員が交通事故にあい、生死をさまよう大怪我を負ったことがきっかけだった。これまで店は「親孝行」を標榜してきたにもかかわらず、従業員を危険な目にあわせてしまった。自分は人を殺すために商売をしているのか。

青谷氏は怪我を負った従業員を前に「これからは出前はいっさいやめる。君たちを危険にさらすようなことはしない。だからどうか助かってくれ」と祈り、幸いその従業員は一命をとりとめた。

出前をやめて少なくなった売上は、店舗面積を広げたり、店舗数を増やしたりすることで補ったそうだ。さまざまな業態のレストランを展開する「坂東太郎」の原型は、このときにスタートしたのである。

日本一の規模ではなく、日本一の幸せをめざす

店舗数が5店舗に増え、さらに拡大しようとしている矢先、青谷氏はもう一つの壁にぶつかる。バブル景気で人手不足が深刻になり、中核になって働いてくれていた従業員たちが次々と辞めていったのだ。離職者は全体の3分の1にも達したという。

少しでも従業員の負担を軽くしようと、青谷氏と奥さんは夜を徹して店舗の掃除や翌日の仕込みを行ったが、出口が見えない重労働に二人とも心が折れそうになっていた。

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要約公開日 2013.12.30
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