成毛氏にとって、フェイスブックはプロジェクト管理のツールであると同時に、思いついたことを投稿し、読者の反応を得るツールでもある。成毛氏のフェイスブックにはフォロワーが約2万人いる。彼の投稿に対する「いいね!」やシェア、コメントといった反応を、興味を引きそうなテーマを知るためのマーケティングの材料にしているのだ。
こうした活用をするには、反応してくれる母集団を集めることが必要だ。そこで成毛氏はフォロワーを増やすため、日頃から、読み手に関係のない私的な投稿は避け、面白いニュースに面白いコメントをつけて投稿している。
また、投稿内容とは大幅にずれたコメントをしてきた相手は、ブロック機能を使ってフェイスブックページ上に表示されないようにしているという。コメント欄は放っておくと、質が下がってしまうからだ。フェイスブックも、名刺の整理や革靴の手入れ同様、メンテナンスが欠かせない。
成毛氏は1カ月に30冊以上の本を読む、いわば本の虫だ。ただし、成毛氏は「目で見て楽しめること」を本選びのこだわりの一つとしているため、買う本の4分の1は図版が豊富な本や写真集である。例えば、将軍徳川家茂の上洛を描いた浮世絵集や、博物学の巨人による菌類のスケッチ集などだ。絵や写真を眺めながら、その背景を読み解き、共感を寄せるのだという。
もう一つの成毛氏のこだわりは、タイトルの巧みさや書体なども含めた、本の背表紙である。本棚に並べたときに目に飛び込んでくるからだ。背表紙の色が多様で、絶妙なバランスが保たれた本棚を理想としている。
日本の書店は、大まかに言って次の3タイプに分かれる。商店街などで新刊本や雑誌を並べる昔ながらの「町の本屋さん」、抜群の品揃えを誇る、紀伊國屋書店や丸善、ジュンク堂などの「大型店」、そして、アイデアで勝負する「個性派書店」だ。「個性派書店」は、新本・古本を問わず、コンセプトに沿った本を並べたり、ビールを出したり、読書会などで顧客との接点づくりを強化したりするなど、多種多様なコンセプトを打ち出している。
最近では、ネット書店が活況を呈する中、直接本にふれられる本屋が減っている。しかし、どんなにネット販売が普及しても、リアルな書店は求められている。現に、本屋がすべて廃業した市で、市民が大手書店チェーンを誘致するという事態も起きている。実際に本を手に取りたくなるような棚づくりが、本好きを引きつけるのに役立つと成毛氏は説く。
普段はお目にかかれない業界用語ばかりを集めた『隠語大辞典』や『集団語辞典』。成毛氏が辞書や事典を愛読する理由は、それらが未知の詰まった最高の読み物だからだ。成毛氏は小学生の頃から、毎晩のように『日本百科大事典』を、ひらがなの「あ」から順に読んでいたという。辞書や事典を開くと、自らは調べようとしない、あるいは調べようと思いつかない知識に出合うことができる。同様の意図から、先人たちの名言集も読んでいる。彼らの脈絡のなく、勝手気ままな言葉を一時的に吸収し、頭の中を混沌とさせるのが目的だ。
雑多な知識や情報を、整理せずに入手し続けていると、広く浅い土台ができる。その後「これぞ」と思うテーマが見つかったときに、その土台が集中的に専門性を高めるのに大いに役立つ。また、人間は年を取るにつれ経験に縛られるため、発想が凝り固まらないよう、雑多な知識の中に身を置く努力が大事になるのだ。
成毛氏は本もスマートフォンのアプリも、整理された状態を保つことを意識している。
まず、本棚を歴史やサイエンスなどと、ジャンルごとに区分することで、本探しを楽にしている。区画の大きさはジャンルごとに決まっているので、手狭になると本棚から退場させる本を決める、いわば棚卸しをするのが習慣だ。その際の基準は、
3,400冊以上の要約が楽しめる