ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

未読
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ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
出版社
三笠書房
出版日
2016年07月05日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「世界の見方だけでなく、生き方さえも変わってしまう」。フェイスブックCOOシェリル・サンドバーグが本書をこのように絶賛する理由は、読み進めるうちにわかるだろう。

著者のアダム・グラントは、10年以上にわたり様々な企業の「オリジナリティの研究」を行ってきた気鋭の組織心理学者であり、不変な人間と社会の本質を、次々と浮き彫りにしてくれる。ここでのオリジナルな人とは、斬新なアイデアを思いつくクリエイティブな人という意味ではない。率先してアイデアを実行し、実現していく人を指す。

この本には、真に斬新なアイデアを見分ける方法や、アイデアを的確に発信し、支持を得る方法など、オリジナルな目標を現実のものにするためのヒントが宝箱のように詰まっている。それを裏づける事例も実に多彩だ。15年以上の歳月をかけて制作するという究極の先延ばしによって「モナ・リザ」を最高傑作へと昇華させたレオナルド・ダ・ヴィンチや、「うちの会社に投資すべきではない理由」をプレゼンしたことで、巨額の出資を得た起業家。こうした一見突拍子もない事例とともに、驚きと納得に満ちた事実が次々と浮き彫りになっていき、爽快な読後感が待っている。個人のオリジナリティを磨くだけでなく、組織のマネジメントや子育てにも活かせる知見が得られるはずだ。

創造的破壊をめざす人は、必ずといっていいほど逆風に遭う。しかし、世界をより良いものに変えていくエネルギーと、その秘訣を本書から体得しておけば、どんな荒波もしなやかに乗りこなせるのではないだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

アダム・グラント(Adam Grant)
ペンシルベニア大学ウォートン校教授。組織心理学者。1981年生まれ。同大学史上最年少の終身教授。『フォーチュン』誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」、世界でもっとも重要なビジネス思想家50人(「THINKERS 50」)のうち一人に選ばれるなど、受賞歴多数。「グーグル」「ディズニー・ピクサー」「ゴールドマンサックス」「国際連合」などの一流企業や組織で、コンサルティングおよび講演活動も精力的に行なう。デビュー作『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)は31カ国語で翻訳され、全世界で大ベストセラーに。続く本作も『ニューヨーク・タイムズ』紙でビジネス書の売上第1位、アマゾンUSでも第1位(企業文化)を獲得している。

本書の要点

  • 要点
    1
    オリジナルな人とは、既存の価値観に逆らい、斬新なアイデアを発想するだけでなく、実際の行動によって、アイデアを実現していく人を指す。
  • 要点
    2
    オリジナリティを発揮するうえで、特別な才能もリスクを冒すことも必要ない。成功者は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、他の部分では慎重になることでリスクを分散している。
  • 要点
    3
    傑作を生み出す秘訣は、多くのバリエーションを試して、正しいものに突き当たる確率を高めることである。
  • 要点
    4
    発言を通しやすくするには、「気むずかしい上司」に意見を伝え、味方につけることが効果的だ。

要約

【必読ポイント!】 変化を生み出す「創造的破壊」

オリジナルな人とは?

オリジナルな人とはどんな人だろうか。世の中には、物事を達成するのに2つの方法がある。1つは、多数派や従来の方法に従い、現状を維持する「コンフォーミティ(同調性)」によってである。もう1つは、これまでの価値観に逆らってアイデアを生み出し、それを率先して実現する「オリジナリティ」によってだ。重要なのは、斬新かつ実用的なアイデアを発想するだけでなく、実際に行動を起こし、より良い状況をつくり出しているという点である。

オリジナリティを発揮するうえで、特別な才能は必要ではない。重要なのは、「好奇心」を原動力に、既存のものに疑問を持ち、より良い選択肢を探すことである。この好奇心とは、既知のものを従来とは違った視点で見つめ、新たな洞察を得る、「ブ・ジャ・デ」を体験することで生まれる。これは、初めて見たのに以前も見たかのように錯覚する「デ・ジャ・ブ」と真逆の状態だ。

幼い頃から突出した才能を発揮する早熟な天才児たちが、大人になって世界を変革することはまれである。その理由は、彼らが独創的なことを行う術を身につけておらず、周囲から評価されたいがために、既存のルールに従うようになるからだ。つまり、「成果を出したい」という意欲が足かせとなり、オリジナリティが二の次になってしまうというわけだ。

成功する起業家はリスク・テイカー?

私たちは、オリジナルな人たちを、生まれながらにリスクや不安に強く、我が道を行く存在だと考えてしまう。そして、オリジナリティを発揮するには、リスクを冒すことが必要だと思いがちだ。しかし、こうした通説を見事に覆してくれる事実が明らかになった。

経営管理学研究者のジョセフ・ラフィーたちは、起業に専念した人と、本業を続けたまま起業した人の追跡調査を行った。前者は、自信に満ちたリスク・テイカーであり、一方、後者は自信の程度が低く、リスクを嫌う傾向にあった。さて、いずれが起業を成功させるのに有利なのか。蓋を開けると、本業を続けた起業家のほうが失敗の確率は、33%低かった。つまり、大胆なギャンブラーが興した会社のほうが脆いのである。

成功を収める人は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、他の部分では慎重になることでリスクを分散し、バランスをとっている。リスク軽減の恩恵を享受し、成功を収めた企業の最たる例は、ワービー・パーカーである。起業当時、学生だった共同起業家の四人は、ネットでメガネを注文するという新奇な発想を受け入れてもらえるように奔走した。その一方で、事業の代替案を考え、ビジネスプランを磨くための授業を受けるなどして、事業の不確実さを軽減した。こうした努力の甲斐あって、2015年には、ビジネス誌『ファストカンパニー』の「世界でもっとも革新的な企業ランキング」で一位に選ばれるという快挙を成し遂げた。

このように、起業家は進んでリスクをとろうとしているわけではない。むしろ、一般の人たちよりもリスク回避型であることが他の研究からも明らかになっている。つまりオリジナルな人たちは、一般に思われているよりも、ずっとふつうの人たちなのだ。唯一違いがあるとすれば、それは彼らが不安や恐怖を抱きながらも「行動を起こす」という点である。失敗するよりも、挑戦しないほうが後悔すると、身をもって感じているからだろう。

大胆に発想し、緻密に進める

キラリと光るアイデアとは?

オリジナリティの最大の障害は、アイデアの「創出」ではなく、「選定」であるという。斬新なアイデアは世の中にあふれているが、その中から適切なものをうまく選び出せる人は限られている。

さらには、人は自分のアイデアを評価する際、えてして自信過剰になる傾向にある。長所にばかり目を向け、欠点を過小評価してしまう「確証バイアス」に陥りやすいからだ。

では、創作者が自らのアイデアを正しく評価できないとすれば、傑作を生み出す可能性を高めるにはどうしたらいいのか。

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要約公開日 2016.09.08
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