オリジナルな人とはどんな人だろうか。世の中には、物事を達成するのに2つの方法がある。1つは、多数派や従来の方法に従い、現状を維持する「コンフォーミティ(同調性)」によってである。もう1つは、これまでの価値観に逆らってアイデアを生み出し、それを率先して実現する「オリジナリティ」によってだ。重要なのは、斬新かつ実用的なアイデアを発想するだけでなく、実際に行動を起こし、より良い状況をつくり出しているという点である。
オリジナリティを発揮するうえで、特別な才能は必要ではない。重要なのは、「好奇心」を原動力に、既存のものに疑問を持ち、より良い選択肢を探すことである。この好奇心とは、既知のものを従来とは違った視点で見つめ、新たな洞察を得る、「ブ・ジャ・デ」を体験することで生まれる。これは、初めて見たのに以前も見たかのように錯覚する「デ・ジャ・ブ」と真逆の状態だ。
幼い頃から突出した才能を発揮する早熟な天才児たちが、大人になって世界を変革することはまれである。その理由は、彼らが独創的なことを行う術を身につけておらず、周囲から評価されたいがために、既存のルールに従うようになるからだ。つまり、「成果を出したい」という意欲が足かせとなり、オリジナリティが二の次になってしまうというわけだ。
私たちは、オリジナルな人たちを、生まれながらにリスクや不安に強く、我が道を行く存在だと考えてしまう。そして、オリジナリティを発揮するには、リスクを冒すことが必要だと思いがちだ。しかし、こうした通説を見事に覆してくれる事実が明らかになった。
経営管理学研究者のジョセフ・ラフィーたちは、起業に専念した人と、本業を続けたまま起業した人の追跡調査を行った。前者は、自信に満ちたリスク・テイカーであり、一方、後者は自信の程度が低く、リスクを嫌う傾向にあった。さて、いずれが起業を成功させるのに有利なのか。蓋を開けると、本業を続けた起業家のほうが失敗の確率は、33%低かった。つまり、大胆なギャンブラーが興した会社のほうが脆いのである。
成功を収める人は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、他の部分では慎重になることでリスクを分散し、バランスをとっている。リスク軽減の恩恵を享受し、成功を収めた企業の最たる例は、ワービー・パーカーである。起業当時、学生だった共同起業家の四人は、ネットでメガネを注文するという新奇な発想を受け入れてもらえるように奔走した。その一方で、事業の代替案を考え、ビジネスプランを磨くための授業を受けるなどして、事業の不確実さを軽減した。こうした努力の甲斐あって、2015年には、ビジネス誌『ファストカンパニー』の「世界でもっとも革新的な企業ランキング」で一位に選ばれるという快挙を成し遂げた。
このように、起業家は進んでリスクをとろうとしているわけではない。むしろ、一般の人たちよりもリスク回避型であることが他の研究からも明らかになっている。つまりオリジナルな人たちは、一般に思われているよりも、ずっとふつうの人たちなのだ。唯一違いがあるとすれば、それは彼らが不安や恐怖を抱きながらも「行動を起こす」という点である。失敗するよりも、挑戦しないほうが後悔すると、身をもって感じているからだろう。
オリジナリティの最大の障害は、アイデアの「創出」ではなく、「選定」であるという。斬新なアイデアは世の中にあふれているが、その中から適切なものをうまく選び出せる人は限られている。
さらには、人は自分のアイデアを評価する際、えてして自信過剰になる傾向にある。長所にばかり目を向け、欠点を過小評価してしまう「確証バイアス」に陥りやすいからだ。
では、創作者が自らのアイデアを正しく評価できないとすれば、傑作を生み出す可能性を高めるにはどうしたらいいのか。
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