裸でも生きる

25歳女性起業家の号泣戦記
未読
裸でも生きる
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25歳女性起業家の号泣戦記
未読
裸でも生きる
出版社
講談社
出版日
2015年09月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

バングラデシュと聞くと、その貧しさや不安定な政治情勢を思い浮かべる人は少なくないだろう。だがその貧しさがはたしてどれほどのものなのか、実態を見たことがある人はほとんどいないはずだ。

著者である山口絵理子氏がバングラデシュで見たのは、日本人が空港に降り立つなり「マネー! マネー!」と叫びながら群がる人たちや、悪臭漂うスラムでゴミを漁りながら暮らす人たち、きれいな水を手に入れるために何キロも歩く人たちだった。

政治家たちが豪邸に住んで高級車に乗り、子どもをアメリカの大学に留学させている一方で、社会の底辺にいる大勢の人には、先進国からの援助はまったく行き届かない。貧しさが多くの人を飲み込み、夢を諦めさせ、理性を失わせ、嘘をつかせたりする。しかし、それでも彼らは毎日を必死に生きている。その有り様は、日本人である我々に「なぜそんな幸せな環境にいながら、やりたいことをしないのか」と訴えかけるかのように、著者の目には映ったという。

バングラデシュの職人たちを対等なビジネスのパートナーとして選び、先進国でも通用するバッグブランド「マザーハウス」を立ち上げることを志した著者だが、その道のりは困難極まりないものだった。しかし、幾度も挫折を経験し涙を流しながらも、ひたすら理念のために突っ走り、なんとかして活路を見出そうとするその姿には、感嘆せざるをえない。自分自身を勇気づけたいとき、何度も読み返したい一冊である。

ライター画像
下良果林

著者

山口 絵理子(やまぐち えりこ)
1981年埼玉県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、バングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程修了。大学のインターン時代、ワシントン国際機関で途上国援助の矛盾を感じ、アジア最貧国バングラデシュに渡り日本人初の大学院生になる。「必要なのは施しではなく先進国との対等な経済活動」という考えで23歳で起業を決意。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げ、株式会社マザーハウスを設立。バングラデシュやネパールの自社工場・工房でジュート(麻)やレザーのバッグ、ストールなどのデザイン・生産を行い、2015年現在、日本、台湾、香港で22店舗を展開している。また、新たにインドネシアで生産したジュエリーの販売を開始。Young Global Leaders(YGL)2008年選出。ハーバード・ビジネス・スクールクラブ・オブ・ジャパン アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2012受賞。毎日放送『情熱大陸』などに出演。著書に『裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける』『自分思考』(ともに講談社)。

本書の要点

  • 要点
    1
    アジア最貧国のバングラデシュに訪れた著者は、これまでの途上国への援助のかたちでは、そこで暮らす人たちのためにならないと考えた。著者が必要だと感じたのは、途上国の人が自信を持って先進国と対等にビジネスができる、途上国発のブランドだった。
  • 要点
    2
    ビジネスとして販売するなら、途上国への同情に甘えるのではなく、純粋にその商品が欲しくて購入したいと思わせる商品でなければならない。工場スタッフにパスポートを盗まれたり、嘘をつかれて工場ごと失踪されたりしても諦めず、夢を実現させるべく、著者は今日も奮闘しつづけている。

要約

日本からアメリカ、そしてバングラデシュへ

最初はいじめられっ子だった
Jazz4ever/iStock/Thinkstock

著者の原体験は、小学1年生のころに受けたいじめだった。男の子たちにぶたれ、トイレに入ると女の子たちに上から水をかけられた著者は、次第に不登校になっていった。しかし、母親が自分のことで悩んでいると知り、「学校に行って1時間でも自分の席に座ってみよう」と決意。少しずつ学校にいる時間を増やし、いじめを克服した。このときから、「がんばれば無理なことなんてない」と考えるようになった。

中学に上がり不良グループの一員となるも、仲間が麻薬や覚醒剤に手を出し、人生の坂を転げ落ちていくのを見て我に返った。その後、ひょんなことから柔道と出会い、のめりこんでいった。

柔道で1番を獲ることを志した著者は、大宮工業高校の「男子柔道部」に入部することを決意した。当時の埼玉県の女子柔道部といえば、埼玉栄が最強と目されていた。しかし、指導環境が整っている高校では、「自分の力だけで優勝した」とはいえないと考えた著者は、あえて修羅の道を選んだ。

だが、スピード勝負の女子柔道と、力で圧倒する男子柔道とでは形が全く異なる。雑巾のように投げられ続け、一時は「もう柔道なんてやりたくない!」と部活を逃げ出したこともあった。

それでも練習を重ねていった著者は、全国大会へのチケットをかけた最後の大会で埼玉栄をついに破り、48キロ以下級の埼玉代表となった。全日本ジュニアオリンピックでも、7位という結果を残した。

社会を変える人間になるという信念

高校最後の試合を終えると、「自分の力は柔道以外でも発揮できるはずだ、社会を変えるようなことがしたい」という思いが沸いた。自分がいじめられたり、非行に走ったりしたのは、社会や環境の影響が大きかったと考えた著者は、社会を変える政治家になりたいと思い立ち、猛勉強をはじめた。

それまでほとんど勉強をしていなかったため、周囲の人たちは誰一人、著者が合格するとは思っていなかったが、「社会に必要とされるような人間になる」という信念だけが、著者を駆り立てた。結果、慶應義塾大学総合政策学部に無事合格。工業高校出身としては異例のことであった。

国際機関で生じた違和感
stevanovicigor/iStock/Thinkstock

政治家を目指して議員のインターンや選挙活動の手伝いをするうち、「政治には経済がつきものだ」と気づいた著者は、経済政策のゼミ「竹中平蔵研究会」に加入。そこで「開発学」という学問に出会った。

途上国を先進国のように豊かにするための学問があると知った著者は、のめりこむようにして開発学を学んでいった。しかし、先進国が開発した技術を模倣すれば、途上国も先進国のように発展するという理論があるにもかかわらず、現実にはますます格差が広がるばかり。その違和感は、ワシントンにある国際機関で学生職員として働いたときにピークに達した。

ふわふわの絨毯が敷かれ、大きな油絵が飾ってある会議室。同僚のアメリカ人たちは、途上国になど行ったことがないし、行きたいとも思わないと話していた。予算の集計をしていても、2ドル程度の不一致なら気にも止められない。途上国で暮らす人びとにとって大きな金額である2ドルが、彼らを援助・融資するはずの国際機関で雑に扱われている――理想と現実とのギャップに、頭を悩ませる日々だった。

「途上国でどんな問題が起きているのか、援助が本当に役立っているのか、自分の目で確かめてみたい」。

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要約公開日 2016.09.27
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