「分かりやすい説明」の技術

最強のプレゼンテーション15のルール
未読
「分かりやすい説明」の技術
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最強のプレゼンテーション15のルール
未読
「分かりやすい説明」の技術
出版社
出版日
2002年10月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「あなたは分かりやすく説明することできるか」と聞かれ、自信をもってイエスと答えられる人はどれだけいるだろうか。「意図が正しくと伝わっているか」不安だったり、後から「ここは別の言い方にするべきだった」と後悔したり、という人のほうが多いのではないだろうか。本書は『「分かりやすい教え方」の技術』『「分かりやすい話し方」の技術』などで人気の藤沢晃治氏が、プレゼンやビジネスレターなどあらゆる「説明」のシーンにおいて知っておくべき15のルールをまとめたものだ。

中でも印象深いのは「団体旅行の添乗員や観光地のバスガイドになってグループを引率するような説明を」という箇所だ。一方的に言いたいことを、思いつくがまま話すことは「説明」したことにはならないのである。

本書で挙げられている事例は、電車のアナウンスやパソコンのエラー・メッセージ、マンションの理事会など実にさまざまで「分かりやすい」「分かりにくい」という説明に深みを持たせている。読み進めていくうちに「自分のプレゼンに足りない部分はここだ」「こういう裏付けをこれだけ準備しておけば、論理的かつ自分優位に話を進めていける」と腑に落ちるポイントがきっと見つかるはずだ。

「説明」はビジネスシーンに限らず、社会全般で普遍的に必要とされるスキルである。ぜひ、かけ算の九九と同じようなレベルで習得していただきたい。

ライター画像
下良果林

著者

藤沢 晃治(ふじさわ こうじ)
慶応義塾大学で管理工学を専攻。卒業後、大手メーカーでエンジニアとして勤務。元々は気が小さい性格だったが、たまたま担当した仕事でプレゼン術に目覚め、やがて、一部の社員から「プレゼンの神様」と呼ばれる。ブルーバックスの『「分かりやすい……」の技術』シリーズで評判となり、日本テレビ系の教育バラエティ番組『世界一受けたい授業』にも出演した。社会人になってから独学で英語を習得し、英検一級、通訳ガイド国家資格、TOEIC900点、工業英検一級などの資格も持つ。著書として他にも、『頭のいい段取りの技術』(日本実業出版社)、『理解する技術』(PHP新書)、『日本人が「英語をモノにする」一番確実な勉強法』(三笠書房)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「説明」とは「相手に分かるように説き明かす」ことであり「分かる」とは「話し手の意図を正しく理解すること」である。聞き手が脳内で情報をスムーズに処理できるよう、事前にその負担を減らすことが、話し手に求められる。
  • 要点
    2
    人は迷わされることを嫌う。博物館を案内する添乗員がまず館内の構成を伝え、後方を確認しながらゆっくり引率し、現在地の説明を交えながら誘導するように、説明者も概要から説明し、聞き手が話についてきているかを確認しながら、不安を与えないように配慮することが重要である。

要約

「分かる」とはどういうことか

「分かりにくい説明」の例
vladru/iStock/Thinkstock

「携帯電話の使用はご遠慮ください。」誰でも電車の中でこんなアナウンスを聞いたことがあるだろう。しかしこのアナウンスを聞いて、高齢者なら携帯電話での通話を禁ずる案内と思うかもしれない。高校生ならメールやゲームの使用をも意味するものだと受け止めるかもしれない。聞き手の年代によって解釈が違ってくるのである。

路線によっては「医療機器の誤作動を防ぐため」と理由を述べて病院同様に携帯電話の電源を切ることを求めるケースもあるようだが、曖昧なアナウンスは依然として多い。

また、あるとき著者がパソコンを使用していたところ、突如エラー・メッセージがあらわれた。そのメッセージの内容は「家庭での使用を目的とした環境外で、ローカル管理者が規定エージェントを回復しようとしています。このまま続行しますか?」という、極めてわかりにくいものだった。

元々の英語を直訳しただけで自然な日本語になっていないのか。またはユーザーの知識レベルを度外視して、専門家に説明するような文章になっているのか、原因は定かではない。

「説明」の説明

そもそも「説明」とは何を指すのか。日常生活にはさまざまな「説明」があふれている。二人以上で構成される社会には、必ず「説明」が発生する。テレビでアナウンサーが事件を伝えるのも、新規事業内容を記載した企画書も、電話料金の安さを伝えるコマーシャルも「説明」である。

一方で「明日の三時に会議がある」というのは「知らせる」と言うが「説明」とは言わない。国語辞典によれば「知らせる」とは「知るようにする」ことで「説明」とは「相手に分かるように説き明かす」ことだという。つまり「知らせる」と「説明する」の違いは、相手が「知る」のか「分かる」のかの違いそのものだ。この「分かる」にはさまざまな意味があるが、本書では「話し手の意図を正しく理解すること」と定義する。では、「話し手の意図を正しく理解しやすい」とはどのような説明か。著者は「脳の短期記憶領域を通過しやすい説明」と結論づけている。

脳内関所と脳内整理棚
urfinguss/iStock/Thinkstock

大脳生理学では、記憶を「短期記憶」と「長期記憶」の2つに分けて考える。短期記憶が処理される領域は、脳に入ってくる情報を一時保管し、その内容を吟味し、意味を確定するための「仕分け場」だ。ここで意味が確定された短期記憶はその後、長期記憶が保存される領域に伝達される。著者は、短期記憶の仕分け場を「脳内関所」、長期記憶が保管される場を「脳内整理棚」と自らの造語で表現している。

つまり「分かる」とは、脳内関所で仕分けられてから、脳内整理棚の一区画に格納されることであり、「分かりやすい」情報とは脳内関所での作業負担が軽く通過しやすい情報のことである。逆に、脳内関所で負荷がかかり、仕分けできないがために脳内整理棚に保管されない情報は「分からない」となる。

「分かりやすく」説明するとは、聞き手の脳内関所でおこなわれるはずの作業を事前に代行処理し、仕分けの作業負担を軽減する一種のサービスと言える。サービスである以上、説明する聞き手は「お客様」と考えるべきである。その認識が分かりやすい説明の第一歩となる。

「分かりやすい説明」の基礎

「概要」から先に話す

説明者の意図を確実に伝えるには、まず「概要」や「要点」から先に話すことが大切である。聞き手がこれから伝えられる情報がどのようなテーマか事前に分かっていれば、脳内整理棚の選定作業が容易になるからだ。

例文として、低インシュリン・ダイエットについての説明の冒頭文を挙げる。

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要約公開日 2016.10.30
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