物事が複雑に絡み合った問題や、現場で生じた急なトラブルに対し、素早く的確な解決策を提案できる「頭のいい人」は、頭の中でどのように考えているのだろうか。複雑な物事を複雑に考えているわけではない。むしろ物事を「シンプルに、最小限に」考えているのである。
私たちの頭の中には、合理的思考を妨げるさまざまなどうでもよいことや、考えても仕方がないことといった「ガラクタ」が存在する。これを捨てない限り、理論を学んだ人でも本質からずれた問題に固執し、効果のない対策を繰り返すことになる。これを「ジャンク思考」として認識し、取り払うよう意識していくことで、頭の中はすっきりと整理されていくはずである。
考え方のタイプを表すのに「論理型」「直感型」などと表現することがある。しかしロジックだけがあって、問題を解決するアイデアに到達できない人の考え方は「ジャンク思考」と言わざるを得ない。論理と直感を上手に使って、問題の本質を上手に解決できるのが「ミニマル思考」である。世の中には「論理的な人」と「直感的な人」がいるのではなく、「ロジックに囚われたジャンク思考の人」と「論理と直感が両立するミニマル思考の人」がいるのである。
しかし、ミニマル思考はロジカルシンキングを決して否定するものではない。むしろミニマル思考を身につけるとこにより、ロジカルシンキングをもっと上手に活用できるようになるのである。ロジカルシンキングの基本は、考えられる要素を全て列挙して検討することだが、これは労力が必要な上に、もれがないように完璧に列挙するのはなかなか難しい。
そこで、自分なりの視点から入っていったり、問題を解決するのに重要なファクターを考えてそこから思考をスタートさせたりと、積み上げ型の思考とはあえて逆から入ることで、ロジカルシンキングが活かせるのである。
ミニマル思考で問題解決をする際に重要なのが、「何を解決するか」つまり問題提起である。問題解決する価値のある問題とはなにか。世の中の問題には「誰かが実際に困っていること」と「実は誰も困っていないこと」が混在している。被害者がいないのに「解決」する手立てを考えるのは時間の無駄である。「実害のあること」「実害のないこと」を見極めるのがミニマル思考への第一歩となる。
「実害のある問題」を提起する時には、気分や主観を根拠にすると自己中心的で説得力に欠けるものになる。説得力のある問題提起とは、気分や主観ではなく事実や数字で語ることである。
例えば、「このデザインは野暮ったい」というのは気分や主観に過ぎないが、「このデザインに変更したら売上が15%落ちた」「アンケートの結果、このデザインに良い印象をもった人は100人中15人だった」とすると、客観的な事実として説得力を持つ問題提起となる。
解決するべき問題を見極めたら、次に考えるべきはその原因だ。問題は原因を突き止めることで解決できるからだ。問題の原因を考えるとき、「なぜ」をくり返し問う方法もあるが、そこにジャンク思考があるとかえって堂々巡りとなってしまい、解決策にたどりつけないこともある。たとえば、いまさら変えられないことに原因を求めてしまうと、身動きができなくなってしまう。問題解決ができる人たちはこのような変えられないことに原因を求めない。変えられることすなわち、問題が生まれる仕組みに原因をもとめるのだ。
変えられないものを巧みに排除して、変えられるものだけに目を向けるには3つのルールがある。
1つ目は「心がけより仕組みに原因を求める」ことである。
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