そもそも学習とは、いつでも知識が使える状態をつくる後天的な技術であり、人は生涯、学び続けて記憶し続けなければならない。学習においては、基礎となる知識を身につけることと、創造力を強化することの両方を追求することが重要だ。すぐに使える知識と、その活かし方がそろってはじめて、習熟が可能となる。そして、最も効率のよい学習法のほとんどが直感に反している。
本書では、結果が客観的かつ普遍的であると科学的に実証された研究をもとに、真に効果的な学習法を提示していく。
一般的に、テストは習熟度を測る手段だと考えられている。しかし、テストを「学んだことを記憶から引き出す学習ツール」ととらえれば、新たな可能性が生まれる。
これまでの実証研究によると、積極的な想起練習(テスト)は記憶を強化してくれるうえに、とりわけ、思い出すのが難しい練習ほど効果も高まるという。想起練習には、2つのメリットがある。一方は、自分の知らないところや、補強すべきところが理解できる点である。そして、もう一方は、学んだ内容を思い出すことで脳が記憶を再編集するため、既知の情報とのつながりが強化され、次回思い出すのが楽になる点だ。また、学習教材を見直すよりも、過去に学んだことを記憶から呼び出す想起練習をするほうが、定着度が断然高いことがわかっている。こうした想起の効果は、認知心理学では「テスト効果」と呼ばれる。
テスト効果を最大化するためのポイントは、時間の間隔をあけて何度も思い出すことだ。くり返し想起することで、知識を呼び出すときの神経経路が増強され、いずれは反射的に呼び出せるようにまでなる。
テスト効果に関する興味深い発見は、テストで間違った点に対するフィードバックを、少し時間が経ってから与えると、記憶がいっそう長続きするということである。失敗してすぐさまフィードバックを受けるよりも、試行錯誤を経た後のほうが、長期記憶を形成しやすいのだ。さらに、想起練習は、知識を新しいコンテクストに当てはめるのを容易にし、テストに出題されていない関連事項の記憶も維持しやすくするという結果が出ている。
このように、思い出そうと努力する想起練習によって、学習や記憶が強化されるだけでなく、さまざまな状況で知識を引き出し、より幅広い問題に対処できるようになる。テスト効果を体感するには、学習内容のクイズを自分で出すことを習慣にすればよい。すると、教材を再読しただけのときよりも、自らの習熟度を正確に把握し、現実とのギャップを埋めやすくなるのだ。
多くの人は、何かを効果的に習得する秘訣は、1つのことを完璧にできるようになるまで、集中して行う「集中練習」だと信じている。なぜなら、集中した分だけ、効果が目に見えて表れるからだ。ところが、集中練習には、覚えたことをすぐに忘れてしまうという欠点がある。
集中練習のかわりに有効だとされている練習方法は、次の3つである。
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