使える脳の鍛え方

成功する学習の科学
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使える脳の鍛え方
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おすすめポイント

突然だが、みなさんは普段どうやって学習しているだろうか。「テキストに線を引き、頭に入るまで何度も読む」、「答えを覚えるまで短期集中で反復練習をする」、「できるだけ楽に学べるよう工夫する」。こうした学習法が実は誤っていると聞いたら驚くにちがいない。

本書では、学びに関する常識が次々と覆されていく。著者たちによると、最も効果的な学習法は、人間の直感に反するという。例えば、「テキストの再読と集中練習はきわめて非効率」、「学習はつらいほうが深く定着しやすい」といったものだ。

本書の魅力は、認知心理学の実験結果に基づいた鮮やかな分析もさることながら、知見を下支えする事例の豊富さにある。また、IQ(知能指数)は伸ばせるのか、脳は鍛えられるのか、といったテーマも取り上げられており、読めば読むほど知的好奇心が刺激されるだろう。『海馬』などの著書で有名な脳研究者、池谷裕二氏が「本当の勉強法を知りたいのなら、この本は宝の山だ」と太鼓判を押すのだから、効果は推して知るべし。

認知心理学の知見を教育に活かすという著者たちの信念が、本書の随所ににじみ出ている。これまでの学習法や指導法に行き詰まりを感じていた方や、教育・人材育成に携わる方はもちろん、日々の学びを血肉にしたいと考えるすべての方に、学びのパラダイムシフトを体験していただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

ピーター・ブラウン
1959年生まれ。ノンフィクション作家・小説家。著書にJumping the Job Track, The Fugitive Wifeなどがある。

ヘンリー・ローディガー
1947年生まれ。ワシントン大学心理学部教授。イェール大学にて心理学博士号取得。認知心理学と教育現場をつなぐことをめざし、学習と記憶の専門家として200本以上の研究論文を発表。想起練習がいかに記憶を強化するか、なぜ人は誤った記憶を構築するのか、特別な記憶能力を持つ人の記憶術などがおもな研究テーマ。

マーク・マクダニエル
1952年生まれ。コロラド大学にて心理学博士号取得。ワシントン大学心理学部教授。同大学「認知・学習・教育・統合研究センター(CIRCLE)」所長。学習と記憶を専門とし、展望的記憶、認知的加齢、認知心理学の教育への応用がおもな研究テーマ。Memory Fitness: A Guide for Successful Aging, Prospective Memory: Cognitive, Neuroscience, Developmental, and Applied Perspectivesなどがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    積極的な想起練習は記憶を強化してくれる。思い出すのが難しい練習ほど効果も高まる。
  • 要点
    2
    学んだ内容を定着させるには、時間の間隔をあけて何度も思い出すことが効果的だ。
  • 要点
    3
    交互練習や多様練習を積めば、解決すべき課題がどういう種類のものかを見極め、適切な解決策を選ぶ方法を学べる。
  • 要点
    4
    錯覚や記憶の歪曲を最小限にするには、自分の思考を客観的に観察する「メタ認知」の力が欠かせない。

要約

学びは誤解されている

最も効果的な学習法は直感に反する

そもそも学習とは、いつでも知識が使える状態をつくる後天的な技術であり、人は生涯、学び続けて記憶し続けなければならない。学習においては、基礎となる知識を身につけることと、創造力を強化することの両方を追求することが重要だ。すぐに使える知識と、その活かし方がそろってはじめて、習熟が可能となる。そして、最も効率のよい学習法のほとんどが直感に反している。

本書では、結果が客観的かつ普遍的であると科学的に実証された研究をもとに、真に効果的な学習法を提示していく。

【必読ポイント!】 学ぶために思い出す

テスト効果とは
SIphotography/iStock/Thinkstock

一般的に、テストは習熟度を測る手段だと考えられている。しかし、テストを「学んだことを記憶から引き出す学習ツール」ととらえれば、新たな可能性が生まれる。

これまでの実証研究によると、積極的な想起練習(テスト)は記憶を強化してくれるうえに、とりわけ、思い出すのが難しい練習ほど効果も高まるという。想起練習には、2つのメリットがある。一方は、自分の知らないところや、補強すべきところが理解できる点である。そして、もう一方は、学んだ内容を思い出すことで脳が記憶を再編集するため、既知の情報とのつながりが強化され、次回思い出すのが楽になる点だ。また、学習教材を見直すよりも、過去に学んだことを記憶から呼び出す想起練習をするほうが、定着度が断然高いことがわかっている。こうした想起の効果は、認知心理学では「テスト効果」と呼ばれる。

テスト効果を最大化するためのポイントは、時間の間隔をあけて何度も思い出すことだ。くり返し想起することで、知識を呼び出すときの神経経路が増強され、いずれは反射的に呼び出せるようにまでなる。

テスト効果のさまざまな側面

テスト効果に関する興味深い発見は、テストで間違った点に対するフィードバックを、少し時間が経ってから与えると、記憶がいっそう長続きするということである。失敗してすぐさまフィードバックを受けるよりも、試行錯誤を経た後のほうが、長期記憶を形成しやすいのだ。さらに、想起練習は、知識を新しいコンテクストに当てはめるのを容易にし、テストに出題されていない関連事項の記憶も維持しやすくするという結果が出ている。

このように、思い出そうと努力する想起練習によって、学習や記憶が強化されるだけでなく、さまざまな状況で知識を引き出し、より幅広い問題に対処できるようになる。テスト効果を体感するには、学習内容のクイズを自分で出すことを習慣にすればよい。すると、教材を再読しただけのときよりも、自らの習熟度を正確に把握し、現実とのギャップを埋めやすくなるのだ。

集中学習は学習の持続には向かない?
Sergey Nivens/iStock/Thinkstock

多くの人は、何かを効果的に習得する秘訣は、1つのことを完璧にできるようになるまで、集中して行う「集中練習」だと信じている。なぜなら、集中した分だけ、効果が目に見えて表れるからだ。ところが、集中練習には、覚えたことをすぐに忘れてしまうという欠点がある。

集中練習のかわりに有効だとされている練習方法は、次の3つである。

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要約公開日 2016.11.01
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