人と組織の問題を劇的に解決する

U理論入門

未読
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出版社
出版日
2014年02月03日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「自身の創造性を高め、チームや組織に一過性の変化ではなく真のイノベーションをもたらしたい」。この究極の願いに対し、本質的な道筋を照らし出してくれるのが「U理論」である。

U理論が産声を上げたのは、MITのC・オットー・シャーマー博士が、世界中のトップクラスのリーダー約130人にインタビューを行っているときだった。彼は次の結論に達した。「イノベーションの源泉は、何を(What)どうやるのか(How)ではなく、誰(Who)にある」。そして、「行動を生み出す源(ソース)」を探求し、本書で紹介される7つのステップを経る(=U字型の谷をくぐり抜ける)ことで、あらゆる複雑な問題に対して、対症療法ではなく根本的な解決をもたらすことができるという。

本書では、U理論の伝道師である著者の中土井氏が、自身の経験やファシリテーションの現場で起きたエピソードをまじえて、7つのステップを丁寧に綴っている。そのため、じっくりと読み進めるにつれ、U理論の本質と実践方法が頭と心に刻み込まれていく。また、U理論の実践ワークが、個人編、ペア・チーム編、組織・コミュニティ編という形で掲載されているのも、本書をより実用度の高いものにしている。

自己理解や他者との関係性を深めるうえでも、U理論は心強いパートナーとなってくれるだろう。既存のイノベーション理論とは一線を画した英知の書を、十二分に味わっていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

中土井 僚(なかどい りょう)
オーセンティックワークス株式会社 代表取締役
社団法人プレゼンシングインスティチュートコミュニティジャパン理事
特定非営利活動法人 日本紛争予防センター理事
フリュー株式会社 社外取締役
一般社団法人関係性開発協会顧問

広島県呉市出身。同志社大学法学部政治学科卒
リーダーシップ・プロデューサー。「自分らしさとリーダーシップの統合と、共創造(コ・クリエイション)の実現」をテーマに、U理論をベースとしたマインドセット転換によるその人にあったあり方(Being)のシフトと影響力の飛躍的な拡大の支援を行う。コーチング、グループファシリテーション、ワークショップリードなどの個人・チーム・組織の変容の手法を組み合わせることにより、クライアントのリーダーとしての拡大を支援するのはもちろんのこと、そのリーダーが実際に携わっているチーム・コミュニティ・組織の変容や進化も共に手掛けている。リーダーとの協働作業による共創造(コ・クリエイション)を実現しながら、場にターニングポイントをもたらし、人と組織の永続的な行動変容を生み出し続けている過去に手掛けた組織変革プロジェクトは、業績低迷と風土悪化の悪循環が続いていた化粧品メーカーのV字回復や、製造と販売が対立していた衣類メーカーの納期短縮など100社以上に及ぶ。

大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)に入社し、コンサルタントとして、ITを活用した業務プロセス改革や顧客戦略プロジェクトなどの組織・人材設計を行なう。情報システムによる業務効率化だけでは解決しえない人と組織の課題に取り組むべく、組織・人材開発業界に転身。当時日本ではまだ黎明期であったコーチングと出会い、パーソナルライフコーチとしての活動を開始、2005年に独立。エグゼクティブコーチとして一部上場企業の経営者を中心に意思決定支援を行う。株式会社野村総合研究所の社内ベンチャーであるIDELEA(経営者の意思決定支援事業であるエグゼクティブコーチングと組織開発事業)の立ち上げに協力する。
2007年より、U理論をベースにした個人向けのリーダーシップ開発プログラムの提供を行い、U理論実践者であるチェンジ・オリジネーターの育成と支援活動も手掛けている。

◎オーセンティックワークス株式会社
ホームページ:http://www.authentic-a.com/
お問合せ:aw-office@authentic-a.com
LINE@:@ucn6882s
ツイッターID:@roadryo

本書の要点

  • 要点
    1
    イノベーションやリーダーシップの源泉は、「何を(What)どうやるのか(How)ではなく、誰(Who:どのような存在として、その場にいるか)」にある。
  • 要点
    2
    U理論は「出現する未来からの学習」、「行動の『源』への着目」、「ソーシャル・フィールドに着目した3つのプロセス」という新しい観点を提示する。
  • 要点
    3
    U理論は、ダウンローディング→「観る」→「感じ取る」→プレゼンシング→結晶化→プロトタイピング→実践という7つのステップを伴う。

要約

人と組織が頭を抱える問題を解決する

イノベーションの源泉は「誰(Who)」にあり

U理論の始祖、オットー博士によると、超一流の人たちのイノベーションやリーダーシップの源泉は、「何を(What)どうやるのか(How)ではなく、誰(Who:どのような存在として、その場にいるか)」にあるという。つまり、「自分は何者なのか、行動を生み出す源(ソース)は何か」を探ることが必要となる。

U理論は、解決困難な組織や社会の問題に対して、根本的な解決の糸口を示してくれる。特に、望ましい状態は明確なのに、そのために良かれと思って取った打ち手が前進に結び付かないどころか、時にマイナスの影響を及ぼすという、ルービックキューブ型の問題に出くわしたとき、U理論は新しい観点とアプローチを提示し、イノベーションの実現を後押しする。

U理論の3つの新しい観点
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

U理論は従来の枠組みの転換を促すために、「(A)出現する未来からの学習」、「(B)行動の『源』への着目」、「(C)ソーシャル・フィールドに着目した3つのプロセス」という新しい観点を提示する。

(A)は、過去に起きたことの振り返りから学ぶ「過去からの学習」とは対極にある概念だ。これまで遭遇したことのない問題に対しては、過去からの学習では対応しきれない。そこで、自分の内面を掘り下げ、内側から湧き上がってくるものに形を与え、そこから肉づけしていくという(A)の方法が重要となる。

(B)は、「何を」「どうやるか」というノウハウや成功事例ではなく、「その行動をとっている自分は何者か」という、行動の「源」に着眼することである。この第三者にはうかがい知れない「Who」の領域が、パフォーマンスの違いを生み出す。例えば、本番に強い人は「最高のプレーで観客に感動を与えている人」として本番に臨んでいる。一方、本番に弱い人は「ここぞというときにいつも失敗してしまう人」という意識で本番を迎えている。このように、同レベルの能力であっても、当人の内面の状況がプレーの結果を大きく左右するのだ。

そして(C)の「ソーシャル・フィールド」とは、時間や議論の「社会的な土壌の質」を意味する。その瞬間ごとの個々人の内面の質といったミクロな意味でも、チームや組織全体としての意識状態や文化、風土といったマクロな意味でもとらえられ、まさにU理論の根幹を成す概念だ。

このソーシャル・フィールドを耕し、変革を促すには、次の3つのプロセスを経ることになる。それは1:センシング(ただ、ひたすら観察する)、2:プレゼンシング(一歩下がって、内省する。内なる「知(ノウイング)」が現れるに任せる)、3:クリエイティング(素早く、即興的に行動に移す)である。

大事なことは、U理論がテクニックというより、どんな方向に舵を切れば変革が生まれやすくなるかという「原理・ガイドライン」だという点だ。とにかく試しては即興的にデザインを変えていくことが求められる。

【必読ポイント!】 本質的な変容を起こすU理論の7つのステップ

ダウンローディング(Downloading)
Photodjo/iStock/Thinkstock

ここからは先述したU理論の3つのプロセスを、さらに細かく7つのステップに分けて、その意味と実践のポイントを解説していく。センシングはステップ1から3に、プレゼンシングはステップ4に、そしてクリエイティングはステップ5~7に対応する。

最初のステップは、過去の経験によって培われた枠組みを再現している状態であり、これを「ダウンローディング」と呼ぶ。この典型例は、恋愛や結婚のマンネリ状態である。相手とのやり取りがパターン処理され、次第に相手のことが退屈に思えてくる。

ダウンローディングは、個人の内側だけの問題ではなく、組織レベルでも生じる現象だ。

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要約公開日 2016.11.16
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