経営者のためのリベラルアーツ入門

未読
経営者のためのリベラルアーツ入門
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経営者のためのリベラルアーツ入門
出版社
かんき出版
出版日
2016年03月03日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

ここ数年、日本でも「リベラルアーツ」という言葉が広く使われるようになってきた。リベラルアーツは日本語で「教養」と訳されるが、その起源は古代ギリシャ時代にさかのぼり、「人を自由にする学問」として長い歴史を持つものである。リベラルアーツを修めることが自由人として生きていくために必要だったという。

ではなぜ、今の時代にリベラルアーツが再び重要視されているのか。リベラルアーツの分野は多岐にわたるが、とりわけギリシャ哲学の教えを土台とする哲学から学ぶことができるのは、単なる知識ではなく、時代や国を超えた普遍的な真理である。それらを理解し、自分のものにできれば、難しい局面に直面しても、物事の本質を見抜き、正しい意思決定を下せるようになるという。

哲学者の教えを現代の生活に照らし合わせてみると、腑に落ちることも少なくない。例えば、カントは「日々の行動がルーティンになったほうが楽」と主張している。これは、時間管理の専門家が「毎日、同じ時間に同じことをするとスケジュール管理がうまくいく」とアドバイスしていることとも一致する。

哲学、文学と聞くと敷居が高く感じるかもしれないが、本書を読んでみると、それらは意外に自分の身近な出来事と関連していると同時に、経営者やリーダーが持つべき素養であることがわかるだろう。先人の遺した偉大な教えから、「いかに生きるべきか」を考えてみてはいかがだろうか。

ライター画像
原ユキミ

著者

高橋 幸輝(たかはし こうき)
南カリフォルニア大学(USC)卒業。在学中シェイクスピアを中心とする英国文学、文芸批評理論、国際政治経済学、哲学などを修める。哲学ではプラトンを始めとする西洋哲学から現代思想まで幅広く学ぶ。2001年6月より「黎明の会」を主宰。毎月、政治・外交・経済・金融・経営・文化・医療など時節に合致したテーマについて、その分野の第一線で活躍されている方を講師に招き、膝詰めのディスカッションを行っている。09年より世界の名作を読む「文学サロン」を開催。現在、企業のM&A戦略・ブランド構築・経営戦略立案などをアドバイスする(株)インシィンク代表取締役。(社)大分県産業創造機構アドバイザーとして地域活性化政策への助言、香港生産力促進局(HKPC)で香港の経営者向けにブランディング研修を行うほか、10社近くの企業の役員や顧問を務めるなど精力的に活動している。著書に『モチベーション:ビジョンと時間の管理術』『できる人の人脈力のつくり方』(いずれも同友館)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    教養とは、人がよりよく生きるためのもの、「いかに生きるか」を問うものである。
  • 要点
    2
    教養には「書物や言葉による教養」と「立ち居振る舞いによる教養」の2種類がある。教養の豊かさは、知識の絶対量ではなく、その場に即した立ち居振る舞いができるかどうかで評価される。
  • 要点
    3
    哲学は、長い歴史の中でしっかりと培われた人類の英知である。哲学から「もののありかた」や「ものの定義」といった本質を学ぶ必要がある。

要約

【必読ポイント!】 経営者にとってのリベラルアーツとは何か

教養とは何かを考える

変化の激しい時代において、人生の座標軸を与えてくれるのが教養である。教養は、物事の本質を見抜き、時代を先取りする大局観を養ううえでも欠かせない。「教養人」は、単なる知識量ではなく、それに伴う人間性の高さが前提となっている。

教養人かどうかの基準として、読書をしているかどうかが挙げられる。読書家で知られた東京電力社長・会長だった平岩外四氏は、本の存在を「自分の知識や経験の限界をとり払ってくれるもの」と位置付けていた。また、資生堂の名誉会長である福原義春氏は、哲学や文学、芸術、文化に造詣が深く、本について語り合う「書友」を持つことを薦めている。

教養は英語で「culture(粗野な状態から耕された)」という意味を持つ。この言葉には、教育などを施して人為的、人工的に仕上げていくという、学びの大切さが込められている。

最近、リベラルアーツという言葉が広まっている。リベラルアーツの起源は古代ギリシャにまでさかのぼる。修辞学・論理学・文法学という、言葉にかかわる三学と、数学・幾何学・天文学・音楽の四科から成る、実に幅広い内容であった。そしてリベラルアーツは「人を自由にする学問」という意味を持ち、自由人と奴隷とを選別する道具として機能していたのだ。

教養の役割を再考する
Ximagination/iStock/Thinkstock

教養とは、人がよりよく生きるためのもの、「いかに生きるか」を問うものといえる。一橋大学元学長の阿部謹也氏によると、教養とは「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のために何ができるかを知っている状態、あるいは知ろうと努力している状態」であるという。よって、教養は社会的地位の高さにかかわらず、その人の役割に応じて存在する。例えば、農民にとっての教養とは、農業の重要性を理解したうえで、米をどう育てるかといった、仕事に対する努力を続けることを指す。こうした自分の役割認識に加えて、他の専門知識をうまく取り入れながら、他者と協働していくことがますます重要になる。

阿部氏は、教養には大きく分けて「書物や言葉による教養」と「立ち居振る舞いによる教養」があるという。欧州ではエリートとしての教養は前者の位置づけであり、教養は世間から隔絶された大学で純粋培養されると考えていた。これが理性中心の「合理主義」の誕生につながる。つまり、思索に没頭できる自由な時間と、世間との距離感が、教養を深めるために肝要だと考えられていた。

社会と世間について考える

一方、阿部氏は「書物や言葉による教養」よりも「立ち居振る舞いによる教養」を重視した。そして、後者の教養は「世間」で磨かれるという。日本では昔から、儀式での振る舞いや話し方など、その場に応じた非言語によるコミュニケーション能力が重要視されてきた。そして、教養は、ありのままの生き方や人間性を見せることでもあり、世間や人生の中で磨かれていくとされた。ただし、グローバル化した社会を生きる私たちは、ビジネスシーンでは、その人の立場、肩書、力関係などに応じた振る舞い方が規定されている。つまり、より広い社会においては、ルールの共有が求められ、普遍的な価値観の合意や共通のスタンダードの構築などが求められる。

これからは、真の教養人の条件は、共通性を求められる「社会」における教養と、固有性や個別性が重視され、「世間」で磨かれていく教養の両方を持つことなのである。

哲学を学ぶ意義
kieferpix/iStock/Thinkstock

正義や幸福の定義があいまいな現在こそ、長い歴史の中でしっかりと培われた人類の英知である哲学が威力を発揮する。哲学の目的は、「もののありかた」や「ものの定義」といった根本や本質に迫ることである。つまり、

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要約公開日 2016.12.06
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