本書の要点

  • 突出して多い世代が労働年齢に達した時、その国は急成長する。これを「人口の配当」という。さらにその世代がリタイヤし、被扶養世代になると、その配当は負へと変化する。今後人口の配当を受ける地域はインドとアフリカと中東、負の配当を受けるのは日本と欧州、そして中国である。

  • ソーシャル・ネットワーク・サービスのこれまでの成功は、物理的世界における友情の概念を仮想世界へ移行させられることを示してきた。利用者が描く“ソーシャル・グラフ”は人間関係のネットワークと興味対象のネットワークを明らかにし、あらゆる分野に大きな影響をもたらすだろう。

  • 2050年には世界の半分がアジア経済となる。しかし、日本は急速にプレゼンスを失っていく。2010年には世界経済の5.8パーセントを占めていた日本のGDPは、2050年には1.9パーセントになるだろう。

1 / 4

人口の配当を受ける成長地域はここだ

人口の配当とはなにか

人口動態はある程度確実に未来の予測ができる指標であり、すべての予測の基礎となるものである。2050年には、世界人口は90億人を超えることが見込まれる。その中でもナイジェリアとタンザニアの人口は驚くべきペースで増大していくことが予想される。また、世界的趨勢として高齢化が進み、世界の平均年齢は2010年から2050年までに9歳上がって38歳となる。富裕国では100歳まで生きることが普通になる。一方で、出生率は世界的に低下し、2050年には2・1になると予測される。その結果、世界の人口増のスピードは減速し、やがて人口増加はとまる。出生率の低下は、ある世代のみが突出して多いという現象を生み出す。その世代が年齢層のどこにいるかで、その国の経済が変わってくる。このでっぱりの世代が労働年齢に達した時、その国は急成長する。これを「人口の配当」という。さらにその世代がリタイヤし、被扶養世代になると、その配当は負へと変化する。

人口の配当を受けるアフリカはアジアに続く経済成長地域になるか

iStock/Thinkstock

これから人口の配当を受ける地域は、インドとアフリカと中東である。これらの国々は2050年には中位数年齢が40歳を下回り、大量の安い労働力を利用することができる。しかし、労働者人口の増加は成長の向上につながる場合もあるが、彼らが仕事にあぶれれば、社会の不安定性が進むことになる。特にアフリカと中東ではそのリスクが高まるだろう。インドの場合は、成長は継続され、被扶養者率は向上し続けるだろう。今後40年間でインドの人口構成は中国より有利になると予想される。要するに、インドにおける低賃金の製造とサービスは中国よりも長続きするわけだ。

日本は世界史上最も高齢化の進んだ社会になる

これから人口の負の配当を受けるのは、日本と欧州、そして中国である。特に日本の高齢者比率は長いあいだ世界最高を維持しており、今なおその比率は高まっている。2050年までに、被扶養者数と労働年齢の成人数が肩を並べるだろう。過去を振り返っても、このような状況に直面した国は存在しない。日本がこの高齢化の重荷をどう背負うかは定かではない。たとえ出生率が大幅かつ持続的に回復したとしても、高齢化トレンドを逆転させるまでには最低でも20年という膨大な時間が必要となる。きわめて大規模な移民流入は、年金生活者を支える若年労働者の供給と、暫時の出生率の上昇を通じて、状況の改善に一役買うこととなるだろう。移民を受け入れるためには、痛みを覚悟したうえで、社会的姿勢を一変させなければならないが、受け入れ国の高い所得水準を考えれば、何らかの対策を打つ余地は残っているはずだ。

2 / 4

ソーシャル・ネットワークの可能性

ソーシャル・グラフ

iStock/Thinkstock

世界は今、前代未聞の集団的実験の真っただ中にある。ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)であるフェイスブックの会員数は本書執筆時点で約8億人と言われている。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3238/4473文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2014.01.18
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

100年予測
100年予測
ジョージ・フリードマン櫻井祐子(訳)
MITメディアラボ
MITメディアラボ
千葉敏生(訳)フランク・モス
脱ニッポン富国論
脱ニッポン富国論
山田順
スタンフォードの未来を創造する授業
スタンフォードの未来を創造する授業
清川忠康
アップル帝国の正体
アップル帝国の正体
後藤直義森川潤
「感情」の地政学
「感情」の地政学
櫻井祐子(訳)ドミニク・モイジ
アップルvs.グーグル
アップルvs.グーグル
フレッド・ボーゲルスタイン依田卓巳(訳)
ソーシャル・ビジネス革命
ソーシャル・ビジネス革命
千葉敏生(訳)ムハマド・ユヌス岡田昌治(監修)

同じカテゴリーの要約

経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
サピエンス全史(上)
サピエンス全史(上)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ・グラットンアンドリュー・スコット池村千秋(訳)
無料
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
河原千賀
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
針貝有佳
サピエンス全史(下)
サピエンス全史(下)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
となりの陰謀論
となりの陰謀論
烏谷昌幸
2050年の世界
2050年の世界
ヘイミシュ・マクレイ遠藤真美(訳)