人口動態はある程度確実に未来の予測ができる指標であり、すべての予測の基礎となるものである。2050年には、世界人口は90億人を超えることが見込まれる。その中でもナイジェリアとタンザニアの人口は驚くべきペースで増大していくことが予想される。
また、世界的趨勢として高齢化が進み、世界の平均年齢は2010年から2050年までに9歳上がって38歳となる。富裕国では100歳まで生きることが普通になる。一方で、出生率は世界的に低下し、2050年には2・1になると予測される。その結果、世界の人口増のスピードは減速し、やがて人口増加はとまる。
出生率の低下は、ある世代のみが突出して多いという現象を生み出す。その世代が年齢層のどこにいるかで、その国の経済が変わってくる。このでっぱりの世代が労働年齢に達した時、その国は急成長する。これを「人口の配当」という。さらにその世代がリタイヤし、被扶養世代になると、その配当は負へと変化する。
これから人口の配当を受ける地域は、インドとアフリカと中東である。これらの国々は2050年には中位数年齢が40歳を下回り、大量の安い労働力を利用することができる。しかし、労働者人口の増加は成長の向上につながる場合もあるが、彼らが仕事にあぶれれば、社会の不安定性が進むことになる。特にアフリカと中東ではそのリスクが高まるだろう。
インドの場合は、成長は継続され、被扶養者率は向上し続けるだろう。今後40年間でインドの人口構成は中国より有利になると予想される。要するに、インドにおける低賃金の製造とサービスは中国よりも長続きするわけだ。
これから人口の負の配当を受けるのは、日本と欧州、そして中国である。
特に日本の高齢者比率は長いあいだ世界最高を維持しており、今なおその比率は高まっている。2050年までに、被扶養者数と労働年齢の成人数が肩を並べるだろう。過去を振り返っても、このような状況に直面した国は存在しない。
日本がこの高齢化の重荷をどう背負うかは定かではない。たとえ出生率が大幅かつ持続的に回復したとしても、高齢化トレンドを逆転させるまでには最低でも20年という膨大な時間が必要となる。
きわめて大規模な移民流入は、年金生活者を支える若年労働者の供給と、暫時の出生率の上昇を通じて、状況の改善に一役買うこととなるだろう。移民を受け入れるためには、痛みを覚悟したうえで、社会的姿勢を一変させなければならないが、受け入れ国の高い所得水準を考えれば、何らかの対策を打つ余地は残っているはずだ。
世界は今、前代未聞の集団的実験の真っただ中にある。ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)であるフェイスブックの会員数は本書執筆時点で約8億人と言われている。
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